施工管理アプリで建設現場のIT化を加速するオクトが資金調達、元ミクシィ朝倉氏が顧問に

オクト代表取締役社長の稲田武夫氏

オクト代表取締役社長の稲田武夫氏

リフォーム・新築・建設業界は、政府の投資額48兆円の大きな市場だ。しかし、建設現場の実態はファックスや電話、コピーした要件書を紙で管理するアナログな業界。案件数が増えても、煩雑な管理に業者の担当は手が回らず、ミスが多発する原因にもなる。さらに労働者人口も減っており、課題は深刻になる一方だ。そんなアナログな市場の課題を、ITで解決するためにサービスを開発する会社がある。それが建設現場の施工管理アプリ「ANDPAD(アンドパッド)」を運営する「オクト」だ。

ローンチから1年が経ち、導入企業数が350社を突破したANDPADのさらなる加速を目指し、2016年11月28日、同社は元スポットライト代表取締役柴田陽氏をはじめとする個人投資家数名から資金調達(金額非公開だが関係者によると数千万円程度)を完了していたことを明らかにした。また、2016年9月以前より元ミクシィ代表取締役社長朝倉祐介氏が、戦略顧問として就任しているという。

リアルタイムで施工情報を共有

オクトは2012年9月の創業。代表取締役社長である稲田武夫氏が前職のリクルート在席時に立ち上げた。稲田氏は当時、新規事業室で多くのサービス立ち上げに携わっていた。しかしその一方で「IT化の促進されていない、大きな市場で勝負したい」(稲田氏)という思いがあったという。

「リフォーム会社を選ぶときにどこがいいのかわからない。もっと業界を透明化する必要を感じていた」——最初はそんな課題を解決するために、リフォーム会社の業者検索サイト「みんなのリフォーム」を立ち上げた。現在は600社を超えるリフォーム会社が掲載されている。

同サービスを運営している中で、ユーザー企業から「現場の工程管理をすることができるサービスがほしい」という声が多く寄せられたことから開発したのが施工管理アプリのANDPADだった。

ANDPADは、スマートフォンアプリ上で利用することができる施工管理アプリ。施工工事情報、図面資料管理、工程表、現場の写真情報などをクラウド上で一括管理することができる。「建設現場の就労者は高齢化が進んでいます。その中でも無理なく利用することができるように、アプリベースでの展開をしています」(稲田氏)

プロジェクトごとに施工現場のスタッフでグループを開設することができ、チャットや日報報告など、リアルタイムのやり取りができる。

建設市場の労働生産性課題をITで解決する

稲田氏はオクトの今後の方針、目標についてこのように語る。

「僕らの事業は、労働問題の解決だと思っています。建設産業は労働者がすごく減っている。さらに他業種と比較すると50歳以上の人口が30%を超えていて、逆に30歳以下は12%しかいない。就職人気の無さや高齢化が問題ですが、建設業界は市場規模、GDP率を見てもインパクトの大きな産業なので、労働人口の減少に伴う生産性の低下は大きな課題だと思っています」

「労働人口の減少は抑えられないので、国交省も言っているように“ITを活用して生産性を上げる”ことをしたい。我々はここに寄与できると考えています。なので、ANDPADは建設現場の課題を解決し、インフラになることを目指します。当たり前に現場の方や職人さんが使っていただけるっていうことを愚直に目指したい。まずはそこが当面の目標です」(稲田氏)

市場の課題を解決するために、愚直な事業展開を行っているオクト。2015年11月にはリノべるとのOEM提携を、2016年11月にはTOTOとのサービス提携なども行っている。

投稿者:

TechCrunch Japan

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