旅行体験アプリHeadoutがオミクロン株流行を乗り切り約34億円の追加資金を獲得

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、旅行予約スタートアップのHeadout(ヘッドアウト)のビジネスはほぼ壊滅状態に陥ったものの、ここ数カ月の国内旅行の回復にともない、同社は成長を取り戻している。消費者が世界中の都市でのツアーやイベント、その他の体験やアクティビティを予約できるこのサービスは、海外旅行ではなく国内旅行や地元の需要に応えることで、2021年1月以降800%の成長を実現した。7月までに同社はEBITDAで黒字化を達成した。2021年秋には1200万ドル(約14億円)のシリーズBラウンドを完了し、そして今、既存投資家たちはHeadoutの最新ラウンドにさらなる資本を追加するために戻ってきた。

Headoutの3000万ドル(約34億円)の新ラウンドは、Airbnb、Uber、Instacartといった他のマーケットプレイスを支援してきた先行投資家のGlade Brook Capitalがリードした。既存投資家であるNexus Venture Partners、FJ Labs、500 Startupsなども参加している。

Headoutの共同創業者でCEOのVarun Khona(ヴァルン・コナ)氏は「我々は積極的に資金調達をしていませんでした」と語る。「9月からの投資家であるGlade Brookは、当社の継続的な成長を見て、当社への投資を倍増させたかったのです」。その結果、Headoutはさらに数件のインバウンドリクエストも受け、追加資金を調達することを決めた。「提供された条件と、長期的なビジョンに対する彼らとの整合性が非常に良かったので、断るのは非常に難しかったのです」とコナ氏は付け加えた。

同社は、本来なら倒産しかねないような難局を乗り越えてきた。

シリーズBの最初のクローズ時にコナ氏が言ったように、パンデミックの初期にHeadoutの「事業は2億5000万ドル(約285億円)超からものの数週間で取るに足りない規模」になった。しかし、同社は店を閉める代わりに、国内旅行により重点を置き、自分の住む都市やその近辺を探索したい人々に対応する方針へと転換した。現在では、国内旅行が同社のビジネスの80%近くを占めており、パンデミック以前とは打って変わっている。

そして今、Headoutはオミクロン流行を見事に乗り切った。

画像クレジット:Headoutのユーザー

2021年11月までに、年初と比較して約10倍の成長を遂げたとコナ氏はTechCrunchに語った。しかし、オミクロン感染拡大にともない、12月と1月はその成長が鈍化した。しかし、この数週間、最新新型コロナウイルス変異種の感染がピークを迎え始めたことで、Headoutのビジネスはまたもや成長した。

おそらく直感に反しているが、パンデミックはもはや旅行体験の需要を完全に抑えないと、コナ氏は指摘する。時には、需要を刺激しさえする。

「人々は追加資金を手にしています。そして外国へ旅行することはできません。しかし、旅行したい、さまざまなものを見たい、いろいろなことをやってみたいという欲求は、これまでと同じように高いのです」と同氏は話す。「実際、ある意味では、お金や時間を使いたい、経験したいという消費者心理や欲求は、新型コロナ後さらに高まっています。私たちは今、大好きなものが奪われたらどんな生活になるのか、時間的にもアクセス的にも限界を感じているのです」。

Headoutは月間アクティブユーザー数、収益ランレート、評価額の詳細を明らかにしておらず、コナ氏は「数億」としか言わない。しかし、これまでに190カ国超から1000万人が同社のプラットフォームで体験を予約したと明らかにした。

現在、Headoutのマーケットプレイスは、世界50都市で旅行体験予約を提供している。提供する商品のデジタル化で現地のサービスプロバイダーと直接連携し、直前の予約にも対応し、ダイナミックに価格を設定することで収益を上げている。Headoutは、予約手数料を取るが、現在試験的にサブスクリプションにも挑戦している。

同社の顧客は、若いカップルや家族連れが多く、平均予約人数は2〜3人だ。また、都会に住んでいて、教養があり、そしてもちろん旅行好きの人が多い。

今回の追加資金で、同社は事業の急拡大を目指している。今後24カ月で500都市にサービスを拡大する予定だ。そして短期的にはすべての職務で採用し、今後数カ月で150人のチームをさらに200〜250人増やす計画だ。

コナ氏はまた、買収でチームを成長させる機会もあると考えており、パンデミックを生き残るための資本を持たないが、優れた才能を持つ旅行やエンターテインメントのスタートアップがたくさんあると指摘した。

「当社はそのような企業にも目を向けたいと考えており、すでに話を進めています」と同氏は仄めかした。

製品面では、パートナーと消費者の両方の経験を向上させるのに資金の一部を投入する予定だ。例えば、パートナー向けには、駆け込みサービスの一覧や、ツアーに遅れて参加したいという人のために、ガイドの現在のライブロケーションを表示できるツールなどを提供する方法に取り組んでいる。また、Headoutユーザー向けとしては、まだ詳細は詰まっていないが、ディスカバリーの改良に取り組んでいる。

今後数カ月間の成長が予定されているにもかかわらず、コナ氏は新資本があまり失われることはないと考えている。

「Headoutの取引はすべて利益になるので、取引が増えるたびに収益が改善されます。規模が大きくなればなるほど、収益も利益も大きくなります。火傷の心配はあまりしていません」と同氏は述べた。

画像クレジット:headout

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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