日本のVC・エンジェル投資家が予想する2019年のスタートアップ・トレンド(前編)

熱狂的とも言える仮想通貨ブームが起こったのはもう1年前のこと。仮想通貨の価格は下落したが、そのベースとなったブロックチェーンの活用が議論されるようになってきた。また、PayPayの大がかりなキャンペーンもあって、QRコード決済も盛り上がりを見せている。テック業界は毎年話題が尽きないが、2019年はどんな年になるのだろうか。

本企画では、ベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家にアンケートを実施。その結果をとりまとめた。

アンケートの内容は「2018年に最も盛り上がったと感じる分野およびプロダクトについて(150文字以内、自由回答)」「2019年に盛り上がりが予想される分野やプロダクトについて(600文字以内、自由回答)」の2つ。回答順にご紹介する(敬称略)。なおキャピタリストは通常カバー範囲が決まっている。各回答が必ずしもそのVCを代表する意見ではないことはご了承頂きたい。また今回は昨年回答頂いた投資家を中心にアンケートを実施した(後編は明日掲載の予定。昨年の記事はこちら

起業家・エンジェル投資家 有安伸宏

2018年の振り返り:「マーケットプレースやバーチカルSaaSなど、ネットワークエフェクトが効く事業中心にシード出資した1年でした。スタートアップ目線で言えば、今年も非常に資金調達しやすい環境だったと思います。出資先企業のVC行脚に同行してみて、5年前、10年前とは隔世の感がありました。

2019年のトレンド:1つは、「Blockchain」 × 「hogehoge」。Blockchainを何に活用して、どんな信用創造をするのか。ハイプ・サイクルの幻滅期真っ只中ですが、冬の時代の今だからこそ事業の仕込み時期だぜ!という気概でありたい。日本固有の「ガラパゴス規制」によって産業成長が阻害されないこと、有力な起業家が海外へ逃げるようなことがないことを祈ってます。

2つめに、日本について言えば、Software is eating the world的な文脈での、既存産業の構造転換、SaaSへの置き換えです。先日10億円調達がリリースされた、製造業の受発注プラットフォーム「キャディ」はその典型例。その他の業界もジリジリとソフトウェアに「食われていく」と考えてます。「手書き・FAX・対面営業」が残る非効率な産業のうち、生き残りをかけたコスト構造転換が必要なところから、改革が進むと考えています。

最後に、FinTech領域の拡張。既存金融が十分に提供できない残りの巨大な領域、オルタナティブ・ファイナンスは全般的に面白い。小口の融資全般、ファクタリング(請求書の売却)、ABL(動産担保ローン)など、与信モデルの発明や既存ユーザベース活用によって参入余地が多く生まれるモデル。まだまだやりようがあるな、と思っています。

来年も、TwitterのDM経由で1人でも多くの起業家と出会うのを楽しみにしてます!

YJキャピタル 代表取締役 堀 新一郎

2018年の振り返り:(1)調達の大型化、IPO/Exit長期化、大型上場(メルカリ、ソフトバンク)
(2)SaaSの盛り上がり継続
(3)Vtuber市場の立ち上がり
(4)ブロックチェーン狂想曲の終わりと再出発
(5)モバイルペイメント合戦開幕
(6)ビジョンファンド旋風
(7)ヤフー、新経営体制スタート

2019年のトレンド:ありとあらゆるところにインターネットが浸透してきました。
オフィス、家、車、町。この不可逆的な流れは今後も続くでしょう。引き続きメディア、EC、決済をはじめとするインターネットサービスは積極的に投資していきます!

インターネット万歳!

グリーベンチャーズ 代表パートナー 堤達生

2018年の振り返り:ビジネスモデルという観点では新鮮味はないものの、良くも悪くもSaaS関連の会社が脚光を浴びてましたね。かつバーティカルSaaSが多かったです。投資家的な観点だと、実態以上に高いValuationの企業が多かったので、来年以降、真価が問われるのではないかと思います。

2019年のトレンド:3つのポイントを注目しております。1つには、インターネット産業自体が、生まれてから20年以上経っており、それ自体がレガシーになっているので、古いタイプのインターネットビジネスをリプレイスするというのも大きなテーマになると思います。最近だと、投資先ではありますが、コスメのコマースメディアを展開するnoin社は急成長していますね。

2つ目は、エンターテイメントテックですね。来年以降、おそらく経済全体の調整局面になると思います。不況期こそ人々は身近で安価なエンタメを欲しがります。ゆえに、Vtuberを筆頭にスポーツ等も含めた気軽に楽しめるエンタメコンテンツは益々需要があると思います。

3つ目は、これは来年というよりは少し中期的ではあるのですが、「トランスヒューマン」というワードで言われる人間の能力を強化・拡張するような技術に注目しています。バイオテックとITがより結びついていく世界ですね。この領域は今後の10年間で大きく発展すると思うので、かなり注目していますね。

Spiral Ventures アソシエイト 立石美帆

2018年の振り返り:B2B SaaSは大きく成長したと思います。業界で標準化されたKPIのみを追うのではなく、クライアントの売上、利益率向上に貢献する価値提供を始め、盤石な企業への進化が始まったと捉えています。昨年の予想に挙げたB2B/B2B2Cでの「VR」のサービス化はエンタメ、ライフスタイル領域の其々で進みました。

2019年のトレンド:(1)ユーザーの購買体験そのものが単なる簡便性追求ではなくなり、時間やお金の使い方が変化しつつある中で、ユーザーニーズを捉えたプロダクトを販売できる「D2C」に期待をしています。高利益率でマーケティングチャネルを確立しつつあるプレイヤーも出てきているので、よりユーザーのロイヤリティを高めるコミュニティ及びプラットフォームにまで昇華し、商品ラインナップを拡げ、クロスセルできるようなサービスに期待をしたいです(来年というか来年以降でしょうか…)。

(2)FinTechと一言にいうともう数年前からのトレンドで、最近はSMB向けのファイナンス領域が盛り上がり始めていますが、特定領域にフォーカスしたバーティカルなプレイヤーも出てくるのではと考えています。ファクタリング/融資のスキームを用いて、より実態に即した与信や事業展開を期待しています。建設、農業などの領域では十分市場規模は大きく、一方でこれまでの事業に脈略のないプレイヤーの参入障壁は高いと思います。

(3)また、昨年に引き続きですがサービスとしての「AI」は非常に注目しています。POCレベルで進んでいるものはいくつもあるので、本格的に既存産業のビジネスの効率化に導入され、ビジネスを期待しています。

BEENEXT Managing Partner 前田ヒロ

2018年の振り返り:2018年は「産業SaaS革命」が大きく進んだ年。様々な古い産業に向けたSaaSスタートアップが目立ちました。例えば、建設業界のANDPAD、食品工場向けのKAMINASHI、保険はHokan、カスタマーサポートはKarakuri、歯科医はDentalight、薬局はKakehashiなど。

2019年のトレンド:2019年はAIによる人類の様々な価値のシフトが始まる年になるのではないかと思います。もしAIが長年経験を持つ医者より病気の診断に優れているのであれば、医者の価値をどうシフトするのか。もしAIが人間より正確に顔認識ができるのであれば、セキュリティーの価値をどうシフトするのか。もしAIが人間よりデータ入力が優れているのであれば、BPOの価値をどうシフトするのか? IQよりもEQ、正確さよりも共感度など、ポストAIの世界で、人がどう働き、どんな価値が求められるのかを考え始める時期に入ります。 SaaSが様々の産業を変えているなかで、2019年はAIがもっと深い形で変化を起こし始める。

Draper Nexus Ventures Managing Director 倉林陽

2018年の振り返り:SaaS/Cloud推しで8年目。2018年はチームスピリットの上場やSansanの大型調達等、エンタープライズSaaSベンチャーのリーダーシップ確立が目立った。産業クラウド分野では昨年言及したカケハシ、オクト、サークルイン、atama+等、急成長や大型調達が実現され、VCの注目も高まっている

2019年のトレンド:2019年もSaaS/Cloud分野での投資を加速させる。エンタープライズ分野では引き続きDigital Marketing(フロムスクラッチサイカtoBeマーケティング)、Sales Tech(UPWARDマツリカ)、HR Tech(チームスピリットRefcome)を中心に、カスタマーサクセスを実現するSaaSベンチャーへの投資を増やしたい。

Industry Cloud分野は伝統的業界の先端ITによる課題解決ニーズの高い日本では、益々注目すべき領域。スタートアップが競合優位性を確立しやすいため、業界のペインを見極めPSF/PMFを構築できるチームかどうかがポイント。カケハシオクト同様、業界の変革に熱意とアイデアのある経営者の方との出会いに期待したい。製造業、物流、飲食等、労働人口の減少に伴う人手不足や人件費高騰が課題となる業界においては、ハードウェアを伴うIoT SaaSやロボティクス、AIによる自動化、効率化が進む。フレクト(車両管理)やコネクテッドロボティクス(調理ロボット)のような、技術力のあるベンチャー企業の課題解決を支援したい。

Samurai Incubate 共同経営パートナー Chief Strategy Officer 長野英章

2018年の振り返り:着実且つ持続性の高い明確な顧客価値の軸を持って産業やライフスタイルに浸透し始めている印象を持ったのはVertical SaaS、HR Tech、Fintech、Online SPAです。素晴らしい経営チームが完成度の高いプロダクト/サービスを日々改善し続けており、市場へ浸透していっている印象です。

2019年のトレンド:個人的に注目しているのは「第1次、第2次産業の分野でテクノロジーを活用して、産業の”いちプレーヤー”として参入し、顧客価値を高める事業」です。その中でも注目しているアプローチは

(1)テクノロジーを活用し垂直統合して参入するモデル(例:米国の建設業Katerra等)
(2)初期投資等のBSの重さをテクノロジーで極力保有しない形で参入するモデル(例:UberAirbnb等)
(3)人の労働占有率の高いバリューチェーンをテクノロジーで自動化/分散調達し参入するモデル(例:SalesHubInstacart等)

第1次、第2次産業は歴史も古く、テクノロジーの導入を決定する意思決定者が高年齢化している事に加え、サプライチェーンやバリューチェーンにおいて様々なステークホルダーが入り交ざっており、外部からツールを活用して産業を変革する難易度が高い産業が多く存在すると感じています。また、産業革命時代に必要だった初期投資の重さや業界のスタンダードになっているバリューチェーン上の労働力の必要性は、顧客視点での価値創造を考えるとTrade Offになる事があります。個人的に信じているテクノロジーで高められる揺るぎない顧客価値(安さ、早さ、簡単さ、選択肢の多さ、質(正確性等)の高さ)の原点に立ち戻った時に事業としての可能性や参入の機会があると考えており、注目をしております。

KLab Venture Partners 代表取締役社長/パートナー 長野泰和

2018年の振り返り:去年のこの企画でD2C注目と書いて2018年は結果的にD2Cにたくさん投資することになりました。今回も2019年の投資方針はここでの宣言に則って進めます!
2018年はなんといってもSaaSトレンド凄かったですね。ロジカルな構築できるこの領域は確実なニーズあるし、引き続きアツいと思われます。

2019年のトレンド:■次世代サービス
2018年で印象的だったのは“新世代のコンシューマーニーズ”でした。スマホシフトが済んでコンシューマーサービスは一旦掘り尽くしたとおっさん世代は思っていた気がします。しかし、ここにきてTikTok、Vtuber、ライブ系、インフルエンサー系などなど新基軸のコンシューマーサービスでZ世代の支持を得てヒットしたのが結構ありました。このトレンドを読めなかったのは痛恨の反省です。2019年も文化を創るようなコンシューマーサービスは引き続き続くと思いますし、投資対象として注目していきたいです。

■ダウントレンドにおける戦略変更
分野の話とはややズレますが、2019年はマクロのダウントレンドの真っ只中でスタートしそうです。

スタートアップエコシステムがこのダウントレンドをどうサバイブしていくかは大きなテーマでもあります。投資環境がより保守的になる可能性もあるので、それに備えて早期黒字化であったり、アーリーステージであれば確実に調達するためPMFの証明を必要以上に整理するであったり、レイターステージであれば相場回復までIPOのスピード感をコントロールするであったり、いくつかの戦略変更が求められると思います。

THE SEED General Partner 廣澤太紀

2018年の振り返り:漫画関連のサービス(漫画村、漫画アプリなど)、トラベル領域、D2C、後払い◯◯

2019年のトレンド: 業界経験を持った「インサイダー」が立ち上げる事業に注目しています。
特にスモール事業者を対象にしたマーケットプレイスの台頭には関心があります。
・ B向けマーケットプレイス
・卸、今まで専門商社が介在した領域
・中小事業者の在庫管理システム
・EC、クリニック、引越し業者など
・EC、販売者支援ツール
・OEM業者のオンライン化、共同購入サービス:販売者の仕入れを容易にするサービス。韓国「BUYON」、「sitateru
・タブレットPOSシステム:すでに広く普及しているが一層注目される

グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーCOO 今野穣

2018年の振り返り:(1)Vertical SaaS:資本市場からも高評価。KPI標準化、垂直統合による拡張可能性。
(2)Fintech:上半期は仮想通貨、下半期はキャッシュレス。加えて、広義の金融の民主化・流動化。
(3)AI実装サービス:依然として期待値先行部分はあるものの、徐々にサービスへの実装が進む。

2019年のトレンド:年末に大きな経済環境の変化があり、2019年に入っても残念ながら重たいモメンタムは続く可能性あり。リーマンショックからの学びとして、即座に総悲観的に考える必要はないが、むしろ自社として、こういう機会に経営や製品や顧客、投資や支出などを見直して筋肉質な体制にできた会社がその後力強く成長した。

他方、当然ながら経済下降トレンドの影響を受けやすい対面市場(主にB向け)と相関性が低かった対面市場があったのも事実。 前者は4K(広告費、交際費、交通費、研修費)+人材採用市場、個人向け高額娯楽(宿泊費、飲食費)。後者はクラウドなどのB向けコストダウン(生産性向上)、ゲームなどの家庭内少額個人課金、自己啓発への投資。 加えて、2019年秋に予定されている消費増税は、より消費者にダイレクトに影響が出る可能性があるので注意が必要。

上記を踏まえての注目分野は以下の5つ。(1)明確なバリュープロポジションのあるクラウドサービス、(2)D2Cによる低供給コストかつ高付加価値プロダクト、(3)シェアリング/レンタルエコノミーによるマイクロペイメント 、(4)個人対個人による少額かつ「個人が稼げる」課金サービス、(5)景気の浮沈に関わらず、深刻な課題である社会保障制度改革文脈

最後に、個人的には、今回の下降トレンドによって、逆に大企業のオープンイノベーション(R&Dの外部化)が推進されることを願う。

D4V General Partner 伊藤健吾

2018年の振り返り:今年はVtuber盛り上がりましたね。
個人的にはその盛り上がりよりもサブスクリプションモデルに注目が集まり、結果としてSaaSが本格的に日本でも盛り上がってきたと感じられる1年でした。
同じ文脈と思ってるのですが出前のようなリアルのサービスがオンライン化して来たのも今年の傾向だったと思います。

2019年のトレンド:かれこれ3年くらい同じこと書いてる気がするのですが、スマホ・クラウド・IoTなどの普及により今までIT化されていない領域にこれらを活用した新しいサービスが生まれ浸透していくのだと思います。

2018年にも建設業界・保険業界・物流業界といったところに変革を起こすであろうスタートアップが数多く生まれ、そして資金調達に成功しています。 昨年の予想ではここにもっとBlockchainを組み合わせたアイデアが出てくると思っていたのですが、「一気に来る」という感じではなかったですね。

2019年は2018年末から兆候が現れている景気循環の後退期に入ることが予想されるので、スタートアップにとってはできるだけ早く潤沢な資金を手当しておくこととコスト面においては不要不急なものにお金を使わない引き締めを見据えることが大事な局面になりそうです。 一方で投資家にとってはこういったタイミングは好景気に支えられていたValuationが下落する傾向になるでしょうから、良いスタートアップへの投資の仕込み時になるのではないでしょうか。

ANRI パートナー 鮫島昌弘

2018年の振り返り:■がん免疫療法

本庶佑先生によるPD-1分子同定の研究がノーベル賞を受賞される等、がん免疫療法に注目が集まりました。免疫チェックポイント阻害剤に続く新たな治療法として遺伝子改変型T細胞療法をはじめとする様々ながん免疫療法が開発されています。米国でもCAR-Tを手掛けるAllogeneが上場しました。

2019年のトレンド:■原子力ベンチャー元年
世界中がESG投資にシフトし、環境に配慮したエネルギー源が求められる中、経済産業省からも次世代型原子炉の開発実用化に向けて原子力ベンチャーの育成が発表されました。また、MIT発のTransatomic Power(Founders Fundも出資)が廃業するという暗いニュースはありましたが、同じくMIT発のCommonwealth Fusion Systemsがビル・ゲイツ率いるBreakthrough Energyから出資を受ける等、世界は前進しています。

■Biotech is eating the world
2018年の米国IPO市場においてバイオ銘柄は過去最高の盛り上がりを見せ(58社上場、US$6.3Bの調達)、全体の約30%を占めるまでになりました。
特にメッセンジャーRNAによる治療薬を開発しているModerna(約5000億円)や老化細胞の治療法を開発するUNITY Biotechnology(約700億円)、次世代ゲノム編集技術のHomology Medicines(約700億円)などユニークな企業が上場を果たしました。2019年は特にユニコーンに代表されるSamumed(1兆2000億円)など、Longevity/Anti-agingが大きなテーマになるのではと考えています。

ほかにも量子科学技術、サイバーセキュリティーは注力領域です。

F Ventures 代表パートナー 両角将太

2018年の振り返り:VTuberは、少し前までは十数名でしたが、今や数千名の規模になっています。声優、歌い手、ゲーム実況者など「声」を武器とするコンテンツ提供者が増加してきました。また、投げ銭などのクリエイターをとりまく経済圏の創出、影響力の拡大に応じてIPを活かした様々な課金モデルが可能になりそう。

2019年のトレンド:

特に注目する分野は以下の2つです。

■MaaS
私は福岡市で実証実験している「メルチャリ」のヘビーユーザーでありますが、移動にまつわるサービスが増え、「移動」の心理的コストや経済的コストが大幅に低下してきていることを実感しています。LyftCREWなどのライドシェアについては、コミュニケーションや決済面に関し、これまで苦痛だったタクシーのUXを凌駕しています。さらには、電動スクーター等の新しいモビリティ、自動運転など、MaaS分野のさらなる盛り上がりが期待できそうです。

個人的にはバス版Uberと言われるChariotのような、複数人のバス乗車希望位置を解析した走行ルート提示サービスの出現に期待しています。また、移動ハードルの低下に伴い、働く場所や住む場所についての変化も見られる年になりそうです。私自身東京と福岡を行ったりきたりする二拠点生活で「移動」に課題を感じている人間の一人ですが、移動が楽になれば、複数地域に拠点を持つ人も増え、働き方の価値観も変わりそうです。常に東京にいる必要はない。

■D2C
ユーザーとの関係構築が容易になり、中間事業者を介する必要がなくなってきたため、ファッションやコスメ等ブランドを持つ生産者と消費者が直接取引するD2Cの流れがさらに加速しそう。

Drone Fund 代表パートナー/個人投資家 千葉功太郎

2018年の振り返り:立場的には当然ドローンの躍進。制御システム「エアロネクスト」社が数々のピッチコンテスト優勝し、国産ドローンメーカーの自律制御システム研究所が12月21日にマザーズIPO。空飛ぶクルマも政府から2023年実用化へ発表、ホンダジェット国内1号機納入など、空盛りだくさん。

2019年のトレンド:2018年は数々のドローン大切な実証実験が行われただけでなく、11月に福島で日本郵便がACSLの機体を使って実施したドローン自律配送レベル3の運用スタートや、JUTMによるドローン航空管制の大規模実験など、個別に飛ばすだけでない次の段階へ。また、12月21日には世界初・日本初となるドローン専業スタートアップ「自律制御システム研究所」が東証マザーズにIPOしました。その前日、12月20日の空飛ぶクルマ官民協議会にて、経産省世耕大臣より「日本で空飛ぶクルマを2023年までに事業化します!とてもアグレッシブな目標です」と力強く演説され、“2023年”と具体的な数値目標の入ったロードマップが公開されました。

もちろん、空は安全が第一です。東京大学・土屋武司先生もご指摘している通りで、大きなドローンはクルマではなく、航空機です。航空機の歴史が超えてきた様々な安全をハード、ソフト、オペレーションの3面に渡って磨き込んで行く必要があります。2019年はまさに、大中小問わず、圧倒的なドローンを実運用で全国各地で飛行させ、様々な飛行データを集め、さらなる安全改良へフィードバックさせる年になるのではないでしょうか。社会実験から実装社会へ、空が変わります。

エンジェル投資家 古川健介

2018年の振り返り:Vtuber。単なる一過性の流行ではなく、今後のインターネットの歴史を変える転換点だった。

2019年のトレンド:4度目のVR元年である2019年は、Oculus Questをきっかけにブレイクします。その上でVtuberによる本格的なライブ、VR上でのアバタービジネス、VR上でのコミュニケーションなど、今後10年の基礎となる体験をする人が増えてくるのではないかと思っています。

慶應イノベーション・イニシアティブ 代表取締役社長 山岸広太郎

2018年の振り返り:大企業との資本業務提携。今までベンチャーに投資してこなかったような重厚長大系の企業がMaaS/コネクテッドカー、航空宇宙、FinTech、バイオ、AI、ビッグデータなどの分野で、アーリーからレイターまで様々なステージで、本気の資本業務提携に乗り出し、一緒に事業開発を進めるケースが目立ちました。

2019年のトレンド:2019年は、引き続き大企業との提携、デジタル技術の活用をキーワードに、下記の分野のスタートアップが盛り上がると予想します。

(1)宇宙関連
人工衛星関連のベンチャーでは実証機の打ち上げが進み、事業のPoCに成功したところは、量産機の製造に向けて100億円規模の資金調達をするところが出てくる。セクター全体の盛り上がりに乗って、有人飛行、貨物輸送などの分野のベンチャーにも資金が流れるようになる。

(2)次世代バッテリー
乗用車のEV化の流れや、再生エネルギーの蓄電ニーズから、全個体/半個体/次世代Liなど新しい技術をもつバッテリーベンチャーへの投資が世界的に加速する。日本でも国プロの全個体電池以外の技術をもつベンチャーが登場する。

(3)再生医療
サンバイオを筆頭に、上場/非上場を問わず、間葉系幹細胞やiPS細胞を使った再生医療ベンチャーの開発フェーズが進み、治験や臨床研究で目に見える成果が出て、IPOやM&Aの事例も増えて、バイオ創薬セクター自体が更に活発化する。

(4)「AI」×「○○」
医療、バイオ、理化学などの分野で、従来、目視での解析や実験によって仮説検証を行っていた分野で、ビジョンレコグニションやビッグデータ解析による効率化/高速探索などを行うベンチャーが増えてくる。

Photo by Marco Verch

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。