日本のVRスタートアップ、ダズルが2億円を調達 ― VR分析ツール「AccessiVR」を6月に正式リリースへ

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「Dazzle VR ROOM」の様子

「VR元年」と呼ばれた2016年も、あっという間に過ぎ去ってしまった。でも、VR業界の注目度は高いままだ。

VRプロダクト向け分析ツールの開発を手がける日本のダズルは3月1日、施工図作図や技術者派遣を行う夢真ホールディングス、およびグループの夢テクノロジーから総額2億円の資金調達を完了したと発表した。同社は2016年5月に同じく夢真HDから1億5000万円を調達しており、累計調達金額は3億5000万円となる。

これにともない、ダズルの監査役に夢真HDの佐藤義清氏、そしてスマートフォン向けサービス開発を手掛けるアクロディアの永山在郎氏が就任。また、経営顧問にスカイマーク元代表取締役会長の井出隆司氏が就任する。

ダズルはこれまでに、スマホゲームやVRゲームなど数点のゲームコンテンツをリリースしてきた。なかでも、スマホRPGの「ヴァリアントナイツ」は累計140万ダウンロードを達成している。そして、本日からクローズドβを開始するのが、VRプロダクト向け分析ツールの「AccessiVR(アクセシブル)」だ。今回調達した資金もこの開発費用に充てられる。

AccessiVRは、VRプロダクトの分析および運用サポートサービス。同ツールを利用することで、ユーザーがどこでコンテンツから離脱したか、そして、ユーザーがコンテンツのどこを見ているのかをヒートマップで確認することなどが可能だ。このヒートマップは、ユーザーが向いている方向の中心を視点とするかたちで作成されているそうだ。Unity5、Unreal Engine4など、国内外で使用される主要な開発言語に対応していて(Unreal Engineは正式版から)、対応デバイスもOculus Rift、Gear VR、HTC Viveなど幅広い。 data2

具体的な料金プランは未定だが、導入費用と初月利用料は無料で提供される見通しだ。正式版のリリースは6〜7月頃を予定している。

VRプロダクト向け分析ツールの例として挙げられるのが、バンクーバーの「cognitiveVR」だ。また、開発ツールであるInstaVRでもヒートマップ分析機能などが利用できるようになっている。コンテンツメーカーだったダズルがAccessiVRをリリースすることで、それらの分析ツールと直接的な競合関係になるわけだ。代表取締役CEOの山田泰央氏は、「日本企業として地の利を生かし、まずは日本、次に中国、そしてアジア諸国というかたちでアジアのマーケットを素早く獲得していく。アジアはVRにとって重要なマーケットになると思う」と今後の戦略について話す。

また、AccessiVRはプロジェクトの予算やKPI目標の設定、そしてその管理などが可能な「運用サポート機能」が備わっていることも差別化要因の1つだと山田氏は語る。加えて、「ライトなSDKをつくるという点にはかなり注力していて、他の分析ツールと比べてFPSのロスが少なくなるように開発している」そうだ。

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CEOの山田泰央氏(写真左)とCOOの出口雅也氏

今後、コンテンツメーカーだったダズルが分析ツールという新しい分野にビジネスを拡大していく。中長期的には、分析ツール開発事業がダズルの柱になっていくようだ。「分析ツールを開発して提供するためには、僕らでもコンテンツをつくって社内でもPDCAサイクルを回さないと顧客と対話できない。だからこそ、現在はVRゲームの開発も行っている」と山田氏は話す。

それと、TechCrunch Japanの読者であれば、少なくとも1ヶ月に1度くらいは日本のVR企業に関する記事が公開されていることにお気づきのことだろう。この市場に対する注目度は高いし、ポテンシャルも大きい。Goldman Sachs Asset Managementは、2025年にVR/AR市場は約800億ドルへと拡大し、PC・スマートフォンに続く第3のプラットフォームとして市場を形成する可能性があると予測している

僕たちが最近取り上げたものだけでも、CADデータを使ったVRコンテンツの「ワンダーリーク」VRアプリ開発ツールの「InstaVR」ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の「FOVE」VR特化型インキュベーション施設の「Future Tech Hub」VR触覚コントローラーの「H2L」などがあり、日本のVR業界全体の温度が徐々に上がりつつあるように感じる。2016年に約12億円を調達したFOVEや今回のダズルをはじめ、日本のVR業界でも大型の資金調達も増えてきている。

ところで、VR業界全体の構造がある程度形成されるにつれて、「Oculus Store vs SteamVR」というコンテンツプラットフォーム争いの構図が生まれた。これについては、以前FOVEの小島由香氏も言及している。これまでVRコンテンツを製作してきた山田氏に意見を聞くと、「Steamにはコアなゲームユーザーが多く、それだけHMDを持っているユーザーの率も高いと思う。また、長年ゲームプラットフォームとしてやってきただけあってコンテンツメーカーへの対応も優れていて、結果的にリリースまでの時間が短いのもSteamだ」との話があった。多少、Steam有利の感はあるのだろうか。

かつてフリーランスエンジニアだった山田氏が、「クリエイターが楽しく働ける環境を作りたい」という思いで2011年に立ち上げたのがダズルだ。そして、同社は2015年にVR事業を本格化。現在は40人の従業員をもつ。また、「VR元年と呼ばれた2016年を過ぎた今年だからこそ、VRに触れる機会を提供したい」というアイデアがきっかけで、同社は3月22日までオフィスの一部を開放。「Dazzle VR ROOM」と銘打ってVR体験スペースを提供している。

投稿者:

TechCrunch Japan

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