日本はすでに代表が交代、米国はCEO未確定–井口氏退任に揺れるTelepathy

ウェアラブルデバイス「Telepathy One(テレパシー・ワン)」を開発中のTelepathyから、CEOの井口尊仁氏が退任するというエントリーを掲載したが、その続報をお届けする。

TechCrunch Japanでは、第1報を公開後、井口氏に替わって日本法人であるテレパシージャパン(Telepathyは米国法人が親会社であり、日本法人が子会社)の代表を務める鈴木健一氏とのアポイントを取り付けたため、東京・人形町の同社に向かった。だが同社に到着する直前で、「急な対応が必要な用件ができた」とのことで連絡もつかなくなり、当日の取材ができなくなった(同氏とは本記事公開前に連絡がついている。今後しかるべきタイミングで改めて取材を依頼したいと思っている)。だがその後、同社広報などを通じて一部の情報を確認することができた。なお井口氏自身からは「広報を通じて回答する」という旨の連絡をもらっている。

すでに日本法人の代表は交代

まず日本法人だが、前述の通りですでに4月28日をもって井口氏から鈴木氏に代表取締役が変更されている。鈴木氏はこれまで同社のCTOも務めていた人物だ。米国法人に関しては、今日時点で解散の事実はないそうだ。一部の業界関係者からは「法人自体は存在しているが、すでに人が居ない」という証言も得ていたが、同社によると「そういう状況ではない」とのこと。また井口氏が務めていた米国法人CEOついては「正式に確定していない」のだという。

こういった状況ではあるが、井口氏の進退とあわせて気になるのは、やはり井口氏がその構想を語ってくれたTelepathy Oneが登場するか否かではないだろうか。イベント「TechCrunch Tokyo 2013」で井口氏は、2014年内の発売を目指していると語っていたが、現時点での公式な回答は「開発は進んでおり、マーケティング戦略でベストタイミングを探っているので今年中かは未定」というものだった。エンジニアは今も開発を続けている。

ハードウェアスタートアップはトラブルが起こりやすい

僕はあるハードウェアスタートアップの代表と話をしていたときに、「ウェアラブルデバイスを含めてハードウェアの分野は、開発しながら提供するということもできないので時間もかかるし、利害関係者も多くなる。だから(サービスを作るより)トラブルが起こりやすいものだ」と語っていたのが忘れられない。正直なところTelepathyに関しては——デバイスの形状から資金繰り、ビジネスの方向性、協力会社との関係、果てには井口氏の性格まで。さらにここ数日は同氏の進退についても——ただの噂か真実かはさておき、ありとあらゆる話が聞こえてくる。正式なプロダクトの姿すらお披露目されていない状況にもかかわらず、ここまで多くの話が聞こえてくるスタートアップはあまりない。それだけ同社に注目が集まっていることの表れでもあるのだろう。そのうち一部の内容に関しては関係者の証言を得ることができたが、Telepathyではその内容を否定している。

井口氏はあるインタビューで「世界で勝負するにはハッタリが必要」という話をしていたが、僕もスタートアップには自分たちの現状のリソースで実現できる以上の大きなビジョン、ハッタリは必要だと思っている。新しいプロダクトを生み出すには、そりゃ当然今の常識を越えていかないといけないだろう。だからこそ、Telepathyに関してもプロダクトを早く見たいと思ってしまう。

ともかく、「代表」という意味で井口氏がTelepahtyから退任した(厳密には米国についてはCEOは未定だ)が、会社としてはプロダクトの開発を引き続き進めるという。Telepathyの「顔」だった人物が離れ、同氏を支えてきた鈴木氏やエンジニアチームは果たしてどのようなプロダクトを我々に見せてくれるのだろうか。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。