日本発パブリックブロックチェーン開発のStake Technoloigesが約11億円調達、「世界で勝つ事例つくる」

「パブリックブロックチェーンこそが『未来』だと思います。私たちは日本発のプロダクトで、世界級のユニコーンを目指しています」。そう力強く話すのは、日本発のパブリックブロックチェーンであるPlasm Network(プラズムネットワーク)Shiden Network(紫電ネットワーク)の開発をおこなうStake TechnoloigesのCEO渡辺創太氏だ。

Stake Technoloigesはこれまで、世界最大級の暗号資産取引所であるBinanceからの資金調達や、「Microsoft for Startup」への採択など、ブロックチェーン業界の最先端を走ってきた。同社は2021年6月11日、中国のブロックチェーン特化VC大手のFenbushi Capitalなどから総額約11億円の資金調達を発表した。

今は「インターネットの黎明期」の段階

渡辺氏が率いるPlasm Networkは、Polkadot(ポルカドット)上でスマートコントラクトを扱うことに特化したブロックチェーンだ。Polkadotは、異なるブロックチェーン同士をつなげる「インターオペラビリティ(相互運用性)」を持つ。

この「インターオペラビリティ」の必要性ついて、渡辺氏はこう説明する。「例えば、私たちの生活に欠かせないインターネットも、本格的な普及以前は企業や研究機関が独自のプロトコルやネットワークを使用しており、互換性がなかったのです。でも、共通のレイヤーができ上がることで、各ネットワーク同士に相互運用性が生まれて、世界中どこにいてもつながることができるようになりました」。

「一方で、今世の中に数百あるともいわれるブロックチェーンは、基本的に個々のネットワーク別に運用されていて、つながっていません」。例えば、Bitcoin(ビットコイン)とEthereum(イーサリアム)は完全に別のネットワークであるため、イーサリアム上のDeFiなどでビットコインを利用することはできない。ビットコインの保有者はイーサリアムのそれより圧倒的に多いと予想されるため、現状の機会損失は大きいと言わざるを得ない。

ブロックチェーン同士がつながり合う世界

この課題を解決するのが、Polkadotが持つインターオペラビリティ(相互運用性)だ。Polkadotは、リレーチェーン(心臓部分)と、パラチェーン(手足の部分)に分かれており、約100個あるパラチェーン(手足)同士がつながることで、相互運用が可能になる。わかりやすいメリットの例としては「Polkadotを経由することで、ビットコイン(のバリュー)でイーサリアム上のNFTを購入できたり、ビットコインをイーサリアム上でステーキングできるようになる」と渡辺氏はいう。

Plasm Networkは、このPolkadotのパラチェーンの1つに入ることを目指している。ただ、パラチェーンの枠は約100個と限りがあり、今後、オークション形式で世界中のブロックチェーンプロジェクトと競い合うことになる。しかし渡辺氏は「Plasm Networkは現在、上から2、3番目という位置にいる」と自信を覗かせる。

スマートコントラクトに特化するPlasm Networkは、今後DeFiやNFTゲームといった数多くのdApps(分散型アプリ)が開発される基盤となる存在だ。いわば、Plasm Network上に築かれた「国」と、他の99個のパラチェーンの「国」が、Polkadotを経由して相互に交わり合うという「世界」が実現する。なんだか凄そうではあるが、うまく想像しづらいのが正直なところ。

渡辺氏は「『今できないこと』ができるようになるので、これはイノベーションです。だからこそ、将来的なユースケースやメリットを、現時点で具体的に想像することは少し難しい(笑)。でも、このインターオペラビリティによる変革の波は、この1、2年で一気に来ると思っています」と話す。インターネットが相互につながり世界を一変させたように、ブロックチェーンも今後「相互運用」が常識になると、我々が今想像することもできない使い方が発見されていくのかもしれない。

「日本が世界で勝つ」成功例となる

「日本発の企業が世界級のユニコーンになるためには、DXだけでは難しい。世界と戦うには、やはりプロダクトで勝負するしかないと思っています」。こう話す渡辺氏は、慶應義塾大学在学中の2014年にブロックチェーンと出会った。「黎明期から関わることができるイノベーションって珍しいと思うんです。インターネットが始まった頃、僕は生まれてもいなかったし、モバイルの時は中学生だった。でもブロックチェーンは、2008年から全員が『よーいどん』でスタートしたので、これはチャンスだと」。

渡辺氏は、大学を休学してシリコンバレーのブロックチェーン関連企業で1年間働いた後、日本に帰国してStake Technologiesを設立。総勢13名のチームは日本、韓国、中国、シンガポール、欧米と世界中に散らばっており、将来は法人をなくしてDAO(自律分散型組織)で運営する予定だという。

「日本がグローバルで勝つための『How To』が、まだまだ足りていません。米国では最近上場を果たしたCoinbaseが、過去にCompoundUniswapに投資しています。これらのプロジェクトはすでに育ってきていて、そこからさらに次のプロジェクトに投資するという段階。一方で日本は、まだこの最初の段階さえも完成していない。だから、私たちが先陣を切ってグローバルで勝つ成功例をつくり、日本のブロックチェーン業界に良い循環をつくっていきたい」と同氏は想いを語る。

いよいよ、6月15日からPolkadotのR&DチェーンであるKusamaの第1回パラチェーンオークションが始まり、Shiden Networkが参加する。さらにその後は、本丸であるPolkadotのパラチェーンオークションが始まり、Plasm Networkが参加する予定だ。執筆時点で2兆円を超える時価総額を持つPolkadotは、暗号資産業界全体でもトップ10に入るビッグプロジェクト。そのPolkadotの代表的なパラチェーンへの道を歩むPlasm Networkは、日本だけでなく世界を代表するパブリックブロックチェーンになる可能性さえも秘めているといえるだろう。

関連記事
「日本から世界で勝負する」国産ブロックチェーンPlasm NetworkがBinanceらから2.5億円調達
日本発のブロックチェーンPlasm Networkを手がけるステイクがマイクロソフトのスタートアップ支援プログラムに採択

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Stake Technoloiges資金調達Polkadotブロックチェーン日本スマートコントラクト

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。