明日の商業はデベロッパが築く“体験型コマース”だ…売り方ではなく体験を作ろう

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[筆者: Atlee Clark](Shopifyでデベロッパリレーションを担当。アプリケーションとサードパーティデベロッパのエコシステムを指揮。)

旅行、交通運輸、メディア、不動産などなど、すべての産業がテクノロジによって変わった。商業もそんなイノベーションの一部を享受しているが、まだ変化は終わっていない。次の最前線は“どこでもコマース(Commerce Everywhere)”、それはオンラインとオフラインを混ぜあわせて、欲しいものがあればそれを、いつでも、どこでも、買えるようにする。

商業のこの変化は消費者が起こしたものではなく、また企業が率先したものでもない。デベロッパが作り出したものだ。API経済の成長によって利用できる新しいリソースが増え、また決済などビジネスの基本を支えるプラットホームが多様化したことにより、デベロッパの筋力が増した。これら新しいリソースをフルに活用するアプリケーションやユーザ体験が活況を呈し、今ではメジャーなトレンドになりつつある。そして今後は、お店が物を売るやり方と、消費者がそれらを買う買い方が、抜本的に変わる。

このような新しいコマースのあり方を体験型コマース(experiential commerce)と呼ぶのは、もはや買い物をするという単独の体験があるのではなくて、さまざまな楽しい体験の中にたまたま買い物もあるからだ。体験型コマースは、これまでの購入過程につきものだったギクシャクを取り除く。買い物をすることが、ほかの活動の流れの中の、ちょっとした一部になる。食器を洗いながら、テレビを見ながら、フィットネスの目標を追いながら、買い物もできる。

品物は、日用品から高級ファッションまで、何でもよい。Rebecca Minkoffの旗艦店であるSoHo店では、巨大な壁掛けディスプレイを見ながらスタイルを決め、それらを試着室へ送る。Dominoではピザの絵文字をツイートして注文し、 Amazonでは食器を洗いながらダッシュボタンを押して食器用洗剤の補充を頼める〔本誌日本語記事〕。

今あるこれらの例は、未来のコマースの姿を示すささやかなヒントにすぎない。今後の新しいテクノロジによって、想像したこともないような、エキサイティングなユーザ体験が提供されるだろう。それらが、世界のどこのデベロッパたちから生まれても、不思議ではない。

バックエンドツールがイノベーションを加速する

豊富で多様なAPIとプラットホームを利用できる今のデベロッパは、開発に要する時間労力が昔に比べるとずっと少ないため、先頭に立ってイノベーションを引っ張ることができる。とくに、複雑でコーディングに時間のかかるバックエンド部分をAPIとプラットホームがやってくれるから、デベロッパは自分の創造性を発揮できる部分に集中できる。

Stripeは、コマースを前進させるバックエンドツールの優れた例だ。従来の決済ソリューションは面倒だった: APIもドキュメンテーションもクライアントライブラリもない。Stripeは決済処理の面倒な部分をすべて引き受けるから、デベロッパは自分のアプリケーションにエレガントで使いやすいチェックアウト体験を導入できる。

またAPIが使えることによって、既存のeコマースプラットホームがコマースのイノベーションと機会を加速する新たな便宜にもなっている。彼らのAPIを使えば、売り買いトランザクションの一から十までをすべてやってくれる: 決済処理、仮想店頭の実装、顧客とのコミュニケーション、そして発送も。

既存のプラットホームを利用することによってデベロッパは、すでに十分な広がりのある、活発なユーザベースに簡単にアクセスできる。自分のアプリケーションのマーケティングやマネタイズに長期間、悪戦苦闘しなくてもよい。小さなデベロッパチームが大成功を収めることが近年多いのも、Google、Evernote、 Zendeskなどのプラットホームを利用できるからだ。

小さなデベロッパチームがコマースの未来を切り開く

APIとプラットホームの利用が民主化されているので、地球上のどこにいる、どんなに小さなデベロッパチームでも、明日のショッピング体験を導く強力で斬新なアプリケーションを構築できる。

これからは、小企業と小さなデベロッパチームとのコラボレーションが盛んになるだろう。小規模な商業者は、オンラインとオフラインの両方で、顧客の心に残るような結びつきを作り出すための、新しい方法に飢えている。それさえあれば、Amazonとも十分に競合できるし、数えきれないほど多い、自分と同じような小規模店の集合の中で、群を抜くことができるのだ。

今、デベロッパや小さなデベロッパショップにとって、コマースのイノベーションの市場機会はものすごく大きい。お店や買い物客は、今あるものへの対応で日々忙しいが、デベロッパは未来への道を描ける。コマースの次の新しい大波は、そこまで迫っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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