有機無農薬にこだわったシンガポールのフードデリバリースタートアップが約11億円を調達

クラウドキッチンはフードデリバリーの重要分野だ、元Uber CEOのトラビス・カラニック氏が新たなビジネスでその分野に参入している、それはアジア、特に東南アジアに重点を置くものだ。そうした中で新参者にもかかわらず、よりしっかりとした事業を進めるシンガポール発のスタートアップが、地域拡大を目指して巨額の資金を調達した。

2014年に設立されたGrainは、クリーンフード(有機無農薬などの素材を使ったものを指す)に特化しており、カラニック氏のCloudKitchensや、Deliveroo、FoodPanda、GrabFoodなどのフードデリバリーサービスとは異なるアプローチを打ち出している。

人気のない不動産をキッチンとして活用し、配達にデリバリーサービスを使うクラウドキッチンモデルを採用してはいるが、それらを自分自身で運営しているのだ。CloudKitchensやその他の会社が、オンデマンドデリバリー顧客に向けて安価に調理を行うために、調理を行う会社に自社の作業所を賃貸している一方で、Grainは自社の調理人、メニューそしてデリバリーチームを使って運営している。もし陳腐になったテクノロジー用語を使うことをお許しいただけるなら、いわゆる「フルスタック」モデルということだ。

そしてなにより、Grainは利益を生み出している。新しい調達ラウンドは後述するように、成長を狙ったものだが、スタートアップ自身は昨年から利益を挙げていたと、CEOで共同創業者のイ・サン・ヨン(Yi Sung Yong)氏はTechCrunchに語った。

現在同社は、プロダクトをすべて支配下におくそのモデルの利点を享受している。他の会社がレストランや配達人を含む連携の複雑さを抱えている事情とは一線を画しているのだ。

私たちは以前、Grainが2016年にシリーズAで170万ドルを調達した件は報告していた。今回はタイのSingha Ventures(ビール会社の投資部門だ)が主導する1000万ドル(約11億円)のシリーズBを公表した。他にも多くの投資家たちが参加している。例えばGenesis Alternative Ventures、Sass Corp、K2 Global(Impossible Foods、Spotify、およびUberなどをサポートしているシリアル投資家Ozi Amanatが経営している)、FoodXervices、そしてMajuvenなどだ。既存の投資家であるOpenspace Ventures、Raging Bull(Thai Expressの創業者Ivan Leeの会社)、およびCento Venturesも参加している。

このラウンドには、株式だけではなくベンチャー融資も含まれているが、The Coffee Bean & Tea Leaf(Sassoon Investment Corporation)のオーナーの家族オフィスが関わっていることは注目に値する。

Grainはシンガポールの個人はもちろん、ビュッフェもカバーする。

前回と今回のラウンドの間の3年は長い年月だった、OpenspaceとCentoはその間にブランド名を変更している。そしてこの期間には非常に様々なことが起きていた。サン氏は、この期間のうちに、危うく資金がショートしそうになったこともあったが、資金が底をつく前にビジネスの基礎にテコ入れを行ったと語る。

事実、同氏によれば、現在100名を超えるスタッフを擁する同社は、自前で資金をまかなえるような準備を整えていたのだという。

「シリーズBでの調達は考えていませんでした」と彼はインタビューで説明した。「そうする代わりに、私たちは事業そのものと利益を挙げることに集中していました。私たちは投資家に完全に頼ることはできないと思っていたのです」。

それが、皮肉なことに、VCたちは自前で資金をまかなえる企業が大好きなのだ(なにしろビジネスモデルが上手く行くことが証明されているのだから)、そして資金調達を必要としないスタートアップに投資することは、魅力的な案件であり得る。

最終的には、利益を挙げられる力こそが魅力的に見える。特に食品分野では、無数の米国スタートアップが閉鎖に追い込まれていることを思えばなおさらである(MuncherySpigなどがその例だ)。だがこれまでの事業への集中はGrainにとってその拡大を棚上げすることを意味していた。だが同社は2017年に傷んだカレーによって20人の顧客に食中毒を起こしたことによって、内省する時間を得ることになる。

サン氏はこの事件について直接コメントすることは避けたが、現在会社はビジネスを全面的に拡大するための「インフラストラクチャ」を開発し、そこには厳しい品質管理も含まれていると述べている。

Grainの共同創業者兼CEOのイ・サン・ヨン氏(LinkedIn経由の画像)

Grainは現在、唯一の市場であるシンガポールで1日当たり「何千」もの食事を提供しており、その年間売上高は数千万ドルに及ぶと彼は言う。去年の成長率は200%だった、とサン氏は続け、いまや国外に目を向けるべきときだと語る。GrainのCEOによれば、Singhaと組むことで「バンコクで事業を立ち上げるために必要なすべてのもの」が手に入ると語る。

マレーシアを拠点とするライバルであるDahamakanが最初の拡大に選んだタイは、現在考えられている唯一の拡大先だが、サン氏は将来的には変わっていく可能性もあると語る。

「もし事態がより速く動くならば、私たちはより多くの都市へ、おそらく1年に1つのペースで拡大して行くでしょう」と彼は言う。「しかし、私たちは自分たちのブランド、私たちの食べ物、そして私たちのサービスをまず整える必要があります」。

その1つの要素は、供給者からの原材料や食品のより良い取引を確保することかもしれない。Grainは、街中で顧客になるべく速く提供を行えるように戦略的に配置された、その「ハブ」キッチンを拡大している。またデリバリーに用いる温蔵庫ならびに冷蔵庫を備えたトラック群の数も増やしている。

Grainの歴史は、この地域のスタートアップが試練と苦難を乗り越えることが可能なことを証明しているが、事態が悪化したときには基本に集中し、コストを削減することができることが大切なのだ。コストが積み上がったときに何が起きるかは、同じシンガポールに拠点を置いているHonestbeeに何が起きたかを見るといいだろう

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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