植物由来のタンパク質を利用して安価に細胞肉を生産するTiamat Sciences

細胞培養培地とは、実験室で育てた食肉を低コストで生産する細胞農業の構成要素だ。しかしそのための成長因子すなわち試薬を作る従来からの方法はそれ自体が高費用で、大量生産が困難だった。

報道によると、実験室で育てた食肉を使ったバーガーは1個が約50ドル(約5750円)になるが、新技術はそれを2030年までにはもっとリーズナブルな1ポンド(約450g)3ドル(約340円)にまで下げるという。

Tiamat Sciencesは、高価なバイオリアクターに代わるコスト効率の良い生物分子を開発しているバイオテックスタートアップの1つだ。米国時間11月24日、同社はTrue Venturesがリードするシード投資で300万ドル(約3億4000万円)を調達したことを発表した。これには、 Social Impact CapitalとCantosが参加した。

Tiamet Sciencesの創業者でCEOのフランス-エマニュエル・アディル氏(画像クレジット:Tiamet Sciences)

CEOのFrance-Emmanuelle Adil(フランス-エマニュエル・アディル)氏は2019年に同社を創業し、独自の植物分子の育成による非動物性たんぱく質の生産を目指している。そのやり方は、バイオテクノロジーと垂直農業と、コンピュテーションデザイン(コンピューターによる設計工程)を結びつけて、独自の組み換え型プロテインを作るものだ。

「現在のものは、培地で使われている成長因子が高価です。私たちはコストを大幅に下げて、食肉と同じ価格にできます」と彼女はTechCrunchの取材に対して語った。

アディル氏の推計では、今日の成長因子は1グラム生産するのに200万ドル(約2億3000万円)必要となるが、Tiamat Sciencesなどの努力により、そのコストは今10分の1まで下がっており、2025年までには1000分の1に下げて量産を可能にしたい、という。

300万ドルのシードラウンドの前、2021年7月に小さなラウンドを行ったので、同社の総調達額は340万ドル(約3億9000万円)になる。アディル氏が大きくしたいと願う同社はベルギーに本社があったが、現在、5月にノースカロライナへ移転した。

新たな資金は、ノースカロライナ州ダラムにパイロット的な生産設備を作ることと技術開発に充てるという。同社はすでに、カーボンニュートラルに向かう途上にいる。

顧客については、まだ公表できる段階ではないが、リリースを目的とする最初のプロダクトは年内を目処に開発している。それによりTiametは顧客がテストするためのサンプルを送れるが、2022年中にはそれらの企業が何らかのかたちでパートナーになる、と彼女は考えている。

アディル氏によると、Tiamatのやり方は食品以外に再生医療やワクチンの製造などにも応用が効くという。

「その成長因子は、似たような工程の他の業界にも移せる」と彼女は語る。「2022年の終わりごろには拡張に励んでいるでしょう。プラント数の拡張は急速にできるため、その頃には、プラント数は10万に達しているはずです。このような規模拡大を助けてくれそうな企業と現在、協議しています」。

True Venturesの共同創業者であるPhil Black(フィル・ブラック)氏によると、Tiamat Sciencesへの投資はTrue Venturesの植物ベースのポートフォリオと相性が良い。最初に調達した資金で、同社の技術が有効であることを多くの人たちに証明し、プロダクトの試作を行った。そしてその次の大きなラウンドでは、リットルからガロンへと規模拡大を行なう。

「細胞肉産業はこれからも続くでしょう。そして今、人々はそれを自分たちのために利益を上げ、より多くのものを作ることに興味を持っています。限られた要素が存在しており、Taimatのソリューションはゲームチェンジャーとなるでしょう」とブラック氏はいう

関連記事:培養肉の最大の問題点に立ち向かうカナダ拠点のFuture Fields、培養を促す安価で人道的な材料を発見

画像クレジット:Tiamet Sciences

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。