極右お気に入りのレジストラが「検閲に強い」サーバーを構築中

デジタル格差は今や、必要不可欠なヘルスケア情報にアクセスすることができない人にとって生命にかかわる問題だと国連事務総長のAntónio Guterres(アントニオ・グテーレス)氏は2020年6月に述べた。世界の人口のおよそ半分が現在インターネットへのアクセスを持たず、多くの人がすべての情報源に自由にアクセスできない。

世界のインターネット規制を追跡しているFreedom Houseは、新型コロナウイルスパンデミックが世界中のインターネットの自由を急激に低下させていると話す。2020年には少なくとも28カ国の政府が好ましくない健康統計や汚職疑惑、新型コロナ関連コンテンツを抑制するためにウェブサイトやソーシャルメディアの投稿を検閲したことが明らかになった。

そして現在、米国企業Toki(トキ)はアフリカとアジアの最大10億人をつなげる「school-in-a-box」というデバイスを開発している。一部の情報源を避け、地元当局による検閲を迂回するためにコンテンツをフィルターにかけることができると主張する技術を活用している。デバイスはWi-Fiが用意されたサーバーで、電源につなぐ、あるいはバッテリーで作動し、同時に数十人のユーザーに対応できる。ネットワークが利用できない場合、サーバーには「地域に関連するコンテンツ」を提供するために監修されたデジタルライブラリーがあらかじめインストールされる。

Tokiのカントリーマネジャーの1人は、このデバイスが分散型検索エンジンを搭載し、匿名でプライベート、そして検索に強いようデザインされているとLinkedIn上で説明している。デバイスは米国拠点のeRise(注)によって発展途上国のコミュニティに寄付される予定だ。eRiseは2019年に設立され、「資本効率が良く、コンテンツやコミュニティ、商業へのアクセスを改善するデジタルエンパワーメントの取り組みにフォーカスしている」とウェブサイトにはある。

Toki、eRiseいずれも起業家で自由な言論を主張するRob Monster(ロブ・モンスター)氏によって設立された。モンスター氏はドメインレジストラのEpikを所有している。同社は物議を醸しているソーシャルネットワークParler(パーラー)がAmazon(アマゾン)のクラウドサービスから出禁扱いとなった後、すぐにオンラインに再登場できるようにした。ParlerはEpikのサポートを受けている複数のプラットフォームの1つにすぎず、モンスター氏の他のドメインとウェブホスティングの会社は極右コンテンツの巣窟となっている。Parlerは米国時間1月6日の米議会議事堂襲撃の調整を手伝った人をサポートしていたと非難されている。

「school-in-a-box」には教育コンテンツやゲーム、本、地図、祈りに関連するモジュール、宗教と「感謝することの美」が入ったメモリーカードが含まれる。このデバイスは「賢く、好奇心のある子供になってほしいと願う親、コンピューターを配備できない学校、教育についての意識を広げ、社会に力を与えたいと思っている宗教的な場所」向けだと話す。

しかしある研究者は、こうした取り組みはFacebook(フェイスブック)のかなり批判を浴びたインドでの無料接続を提供するプロジェクトを思い出させると話す。このプロジェクトは偏向と自己検閲で非難された。

「好都合なコンテンツの配信と、こうしたグループがあなたの慈悲心に依存するようになることを保証するという目的も果たせるデジタルアクセスポイントを提供するという、Facebookによる似たような戦術を見てきました」とShorenstein CenterのTechnology and Social Change Research ProjectディレクターであるJoan Donovan(ジョアン・ドノヴァン)博士は話した。「イデオロギーがインフラにあるとき、後に力学を変えるのはかなり困難になります」。

モンスター氏は、過激なコンテンツを歓迎して許容するプラットフォームとEpikの協業を防衛するために自由な言論の論争を使ってきた。ヘイトグループを追跡している南部貧困法律センターは、モンスター氏が「インターネット上で最も評判が悪く恐ろしい人々にサービスを提供している」と指摘してきた

Epikの広報担当Rob Davis(ロブ・デイビス)氏はTechCrunchに対し、クライアントのコンテンツモデレーションをサポートすべく積極的に取り組んでいると語り、同社はナチグループをプラットフォームから排除し、虐殺を推進するグループを削除したと主張した。

「合法で、責任をともなう言論の自由はすばらしい権利です」とデイビス氏は話した。「全てのドメイン登録はこうしたグループを抱えますが、Epikは往々にしてより高い水準に保たれています」。

ドメインネーム取引専門フォーラムにおける2019年の一連の投稿で、モンスター氏はTokiのテクノロジーについて詳細を明らかにした。Tokiは安いRaspberry Piプロセッサで駆動し、ファイル共有やP2Pコマース、デジタルウォレット、パーソナライズされた検索エンジンを可能にするLinuxの正規バージョンを「特定のデータソースを無視する」オプションつきで動かしている。

「分散化はGoogle(グーグル)やTwitter(ツイッター)、Facebookといったテック大企業の発信ポイントを分散することだけを意味するわけではありません」とデイビス氏は話した。「人々が知らなかった物事でそうした人々に力を与えることによる反検閲も意味します」。同氏は軽微な健康問題のための自然療法を例に挙げた。自然療法は新型コロナに対して効果があると証明されていない。

「ゆくゆくは各デバイスにインターネットの『スナップショット』があらかじめ搭載されるようになるかもしれません」とデイビス氏は述べた。しかしインターネットがどのように1つの小さなデバイスに収まるよう減らされるのかは明らかにしなかった。eRiseウェブサイトには、同社が採用する地域のデジタル司書にコンテンツがキュレートされるかもしれないとある。デイビス氏はTokiがサーバーの作業モデルを持っており、すでに社会実験を行い、2022年か2023年にデバイスをアフリカの6000の村に提供し始めたいと考えている、とTechCrunchに語った。おそらく名前非公開のアジア通信企業とのコラボでだ。

Tokiのデバイスが実用的な場合、デバイスの選択性は自前のコンテンツと検閲の懸念を提起するかもしれない。たとえばeRiseがEpikのクライアントであるGabやParlerにあったような過激なコンテンツを許す、あるいは新型コロナや他の健康問題に関する科学的なアドバイスを無視するといった懸念だ。

ドノヴァン博士はワンボックスソリューションを警戒している、と話した。「我々はサービスプロバイダーから情報企業を切り離すことに注力しなければなりません。そうしたコントロールは政治的利益のために使われます。テクノロジーは、別手段の政治なのです」。

【注】eRiseは、課税を免除される501(C)(3)非営利団体だと主張していた。TechCrunchは米内国歳入庁の非営利団体のデータベースでeRiseを見つけられなかった。後にモンスター氏はeRiseが501(C)(3)団体として登録されていなかったことを認め、501(C)(3)の主張を削除した。

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カテゴリー:ハードウェア
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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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