楽天がオンライン・レンディングのKreditechに1040万ドルを出資

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ビッグデータによる審査を行うレンディングサービスを展開し、これまでにPeter Thiel、Blumberg、世界銀行のIFCなどからの資金調達を完了しているKreditechは現地時間15日、新しい戦略的パートナーの発表と資金調達を発表した。本調達ラウンドで同社に1040万ドルを出資したのは、日本のEコマース巨大企業、楽天だ。この出資は楽天が昨年にローンチしたRakuten Fintech Fundを通して行なわれた。この調達ラウンドは同ファンドによる出資の中では最大のもので、ドイツ企業に出資が行なわれたのは今回が初めてだ。

Kreditechはバリュエーションを公表していないが、私が理解するところでは、同社のバリュエーションは上昇中であり、現在は約3億ユーロ(約3億1300万ドル)といったところだろう。

Kreditechは今年初めに1億500万ドルの資金調達を完了しており、さらに、それと同規模の資金調達を近々予定していることを考えれば、今回の調達規模は比較的小さいものだと言えるだろう。しかし、この戦略的パートナーシップによってKreditechは、同社のビジネスをさらに強化することができる。

具体的には、それは2段階に分けられる。

Kreditech CFOのRene Griemensが話してくれたところによれば、楽天はルクセンブルクで金融業の営業ライセンスを取得済みであり、同社はその地域の顧客に提供するサービスの範囲を拡大したいと願っている。現在、楽天はフランスでPriceMinisterを、そしてドイツではRakuten.deを展開中であり、これらのサービスのユーザーがクレジットで大きな買い物ができるような仕組みを作ろうとしているのだ。

Rakuten Fintech FundのマネージングパートナーであるOskar Mielczarek de la Mielは、「楽天が掲げるグローバル・イノベーションのビジョンとは、最先端のテクノロジーとアントレプレナーシップによって社会に貢献することです。インターナショナルな市場で、信用供与を通して個人がもつ力を高めるというKreditechのユニークなビジネスモデルを見て、私たちはワクワクする思いでした」と語る。「ビッグデータを利用したユニークな審査モデルとテクノロジーの専門知識をもつKreditechは、すでに市場から広く認められる存在となっています。彼らに楽天が資本参加することで、Kreditechのサービスをさらに拡大することができます」。

この業務提携は、Kreditechが展開中のサービスの1つである「POSローンサービス」の強化にもつながる。これにより、ユーザーは同サービスを通して高額な商品を購入することが可能になる(ポーランドではすでに、Nasper傘下のPayUと共同して同様のサービスを開始している)。

Eコマースのマーケットプレイスとは別に、すでに楽天は静かに銀行業を開始している ― だからこそ、楽天はFintechスタートアップ専用のファンドを設立し、新しいパートナーシップの機会を探しているのだ。また、楽天がKreditechのレンディングサービスを同社のプラットフォームに統合する可能性もある。オンラインショップにおける商品の支払いでKreditechのサービスを利用できるようにするのだ。

Griemensによれば、同社は今後、ヨーロッパだけではなくアジア各国にビジネスを拡大することも視野に入れている。特にアジアの新興国がターゲットだ。今のところ、Kreditechはアジアにおけるプレゼンスをもっておらず、楽天とのパートナーシップがアジア進出の助けになるだろうと同社は考えている。

Kreditechの創業者兼CEOであるAlexander Graubner-Müllerは、「伝統的な金融サービスを利用できない層の経済的自由をテクノロジーを利用して改善するという、私たちのビジョンに楽天は投資してくれました」と語る。さらにCFOのRene Griemensは、「Kreditechと楽天は単に資本的な協力関係にあるだけでなく、私たちはこのパートナーシップがもつ将来的なチャンスを共に描いています。アジアで強力なマーケットポジションをもつ楽天は、私たちのアジア進出の助けとなってくれることでしょう」と加えた。

これまでにも、楽天はRakuten Fintech Fundを通して様々なスタートアップに出資をしている。送金サービスのAzimoへの出資ラテンアメリカのUberと呼ばれるCabifyが1200万ドルを調達したシリーズBへの参加英国のCurrency CloudのシリーズCへの参加、そして、ビットコインのBitnetへの出資(その後、楽天はBitnetを買収している)などがその例だ。

Kreditechはこれまでに合計で1億5200万ユーロを調達済みだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

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TechCrunch Japan

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