機械学習で消費者トレンドをリアルタイムとらえ企業の迅速な対応をサポートするAi Palette

消費者製品の製品開発は、調査やプロトタイピングやテストなどで2年以上を要する場合もある。しかしソーシャルメディアのある社会では、人びとはトレンドがもっと早く店頭でカタチになることを期待している。2018年に創業されたAi Paletteは、機械学習を利用してトレンドをリアルタイムで発見し、早ければ数カ月でその商品開発を実現させる。すでにクライアントとしてDanone(ダノン)やKellogg’s(ケロッグ)、Cargill(カーギル)、Dole(ドール)などを抱える同社は、米国時間8月24日、pi VenturesとExfinity Venture Partnersがリードする応募超過のシリーズAで440万ドル(約4億8000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドにはさらに、これまでの投資家であるフードテックのベンチャーAgFunderとDecacorn Capital、そして新たな投資家としてAnthill Venturesが参加した。これでAi Paletteの総調達額は、2019年のシードラウンドを含めて550万ドル(約6億円)になる。

Ai Paletteはシンガポールに本社があり、主な技術者たちはベンガルールにいる。顧客ベースは東南アジアに始まり、その後中国や日本、米国、ヨーロッパへと拡大した。

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Ai Paletteは現在15の言語をサポートし、したがって多くの種類のAIベースのツールを利用して消費者向けパッケージ製品(CPG)のトレンドを予想できる。今回の投資は主に市場拡大と、特にデータサイエンス方面の技術者の増員に当てられる。

Ai Paletteを2018年に創業したCEOのSomsubhra GanChoudhuri(ソンブラ・ガンチョウドリ)氏とCTOのHimanshu Upreti(ヒマンシュウ・ウプレティ)氏は、ロンドンのインキュベーター / アクセラレーター事業であるEntrepreneur Firstで出会った。それまでガンチョウドリ氏は、世界最大の香料メーカーGivaudanで営業とマーケティングを担当していた。その仕事を通じて彼は、スナックやファストフードや包装製品などさまざまな消費者製品のイノベーションの過程を見てきた。彼は見てきた企業の多くが、2年という製品のイノベーションサイクルでは需要に追いつけないことを理解し始めていた。そこで以前Visaなどで仕事をしたことのある、高度な機械学習とビッグデータ分析のエキスパートであるウプレティ氏は、数ペタバイトという大量のデータを処理できるモデルを作った。

Ai Paletteの最初のプロダクトであるForesight Engineは、原材料や香味などのトレンドを調べて、その人気の理由を分析し、需要の継続期間を予想する。それはまた、まだ満たされていない需要である意味する「空白の商機」を見つける。例えば、新型コロナ(COVID-19)の流行で、人々の食生活が変わった。1日に6回もテレビを観ながら健康スナックを食べるようになったため、企業は新しい種類の製品を発売するチャンスがあるとガンチョウドリ氏はいう。

ウプレティ氏によると、Foresight Engineは状況に即した情報も提供できる。「例えば、ある食品が外出先で食べられているのか、それともカフェで食べられているのか。社会的的に消費されているのか、個人的に消費されているのか。子供の誕生日会では何が流行っているのか?特定の製品や成分について、画像は製品の組み合わせや製品のフォーマットに関する情報を提供します」。

このプラットフォームが利用するデータのソースは、ソーシャルメディア、検索、ブログ、レシピー、メニュー、企業のデータなどさまざまだ。ガンチョウドリ氏によると「各市場で人気の高いデータセットは分析に際してプライオリティを上げる。たとえば地元のレシピやフードデリバリーアプリには、そのときのトレンドが見られることが多い。そしてそれらのデータを時系列で追えば、かなり高い確度で成長の軌跡を判断できる」。

たとえばAi Paletteが新製品開発に貢献した例として、特定の国のポテトチップやソーダが挙げられる。彼らはForesight Engineを使って人気上昇中のトレンドを知るだけでなく、長期的な人気になりそうなものを知り、無駄な投資を避けようとした。

パンデミックの間、Ai Paletteの顧客の多くが、そのツールを使って新しいトレンドや消費者の行動パターンに応じようとした。中でも多くの市場で関心が高かったのは、健康食品や免疫力を高める食材だ。たとえば東南アジアではレモンとにんにくの需要が増え、米国ではアセロラやマリファナがトレンドになった。

一方、中国では健康より味が優先されたとガンチョウドリ氏はいう。「おそらく平常時感覚への回帰が優先されたのではないか」とのこと。さらにインドでは、パンデミック対策として商店は棚持ちの良い商品を歓迎したが、消費者の多くは退屈をまぎらわすために、一風変わったスナックを求め、中でもキムチなどの韓国系香辛料に人気があった。

Ai Paletteは使える言語が多いため、機械学習を利用する他のトレンド予測プラットフォームとの差別化という点で有利だ。現在サポートしている言語は、英語、簡体中国語、日本語、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、マレー語、タガログ語、スペイン語、フランス語、ドイツ語となる。今後はヨーロッパ各国やメキシコ、ラテンアメリカ、中東もターゲットにする予定だという。

画像クレジット:Ai Palette

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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