機械学習によるマッチング精度向上、新事業の展開──ランサーズが新成長戦略を発表

クラウドソーシングサービス「Lancers」を提供するランサーズは4月19日、新成長戦略「Open Talent Platform(オープン・タレント・プラットフォーム)」構想を発表した。スキルを持った個人(タレント)と仕事を効率的にマッチングさせ、生産性の向上を目指すこの構想でランサーズは、独自テクノロジーとAIによる高精度のマッチングを基盤に、既存のクラウドソーシング事業の強化に加え、デジタルマーケティング支援事業「Quant(クオント)」、オフラインでのスキルシェアリングサービス「pook(プック)」を3本柱として展開していく。

機械学習でスキルと仕事のマッチング精度向上を目指す

ランサーズは、4月から京都大学大学院 情報学研究科 知能情報学専攻の集合知システム分野(鹿島研)と産学協同研究を開始。機械学習によって、ランサーズが持つ「個人の働くデータ」を解析し、スキルや仕事のマッチング精度を向上させる仕組みづくりに取り組む。

オープン・タレント・プラットフォームは、これら研究の成果と、これまでのクラウドソーシング事業で蓄積された仕事やフリーランス個人に関わるデータをAIや機械学習で解析し、スキルや仕事のマッチングを行う独自のテクノロジー「LANCERS SMART DATA TECHNOLOGY(ランサーズ・スマート・データ・テクノロジー)」を核として展開される。

デジタルマーケティング支援事業は新会社クオントとして独立

これまで法人向けサービス「Lancers for Business」で提供されてきた、クラウドソーシングを活用したデジタルマーケティング支援事業は、ランサーズの100%子会社クオントとして独立。オープン・タレント・プラットフォームの一翼を担う事業として強化されることとなった。

新会社では、従来“Quant”の名称で提供されてきたコンテンツマーケティングとクリエイターマネージメントシステムのほか、マーケティング企画・戦略構築を行うデジタルマーケティング支援、マーケティング活動を支える制作・運用・分析・改善提案をクラウドソーシングで構築する事業の3つのサービスを行うという。

位置情報を活用したオフラインのスキルシェアサービス「pook」

クラウドソーシングサービスLancersでは従来、デザイン制作やWeb制作、システム開発、ライティングなど、オンラインで完結する業務とフリーランスをマッチングしてきた。今回、新たに加わるスキルシェアリングサービスpookは、パーソナルトレーナーや家事代行など、オフラインで提供されるスキルをマッチングする事業だ。

pookではスキルを持つ個人と、サービスを受けたい個人が、サービス依頼から実際の決済までをスマホで行い、スマホの位置情報とチャットを利用して「会えない・来ない」トラブルを防ぐという。pookは6月にβ版リリースが予定されていて、現在、サービス依頼者とフリーランス双方の事前登録を受け付けている。

専門スキルを持つフリーランス向けサービス「Lancers Top」

ランサーズの中核、クラウドソーシング事業でも、新しいサービスが発表された。今年の夏にローンチが予定されている「Lancers Top」は、専門スキルを持つフリーランスのエンジニア・クリエイターを対象にしたプレミアムサービスだ。こちらも現在、フリーランスの事前登録受付が行われている。

掲載される案件は単価を保証する形での完全非公開制。フリーランスの登録には審査が設けられており、実践スキルテストや面談で選抜され、認定されたトッププレイヤーが業務を担当する。また、案件を掲載するクライアント企業に対しても登録審査が設けられ、信頼できるクライアントとの仕事のみがやり取りされるという。

 

ランサーズでは、オープン・タレント・プラットフォーム構想の発表とともに、コーポレートロゴとコーポレートサイトを刷新。新ビジョン「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」のもと、これらの取り組みを通してグループ全体で成長をさらに加速させていくとしている。

今回、新事業として発表されたデジタルマーケティング支援については、大手広告代理店やスパイスボックスなどの専業プレイヤーがひしめいている分野だし、オフラインでのスキルマッチング事業でもココナラの「ココナラ」やストリートアカデミーが運営する「ストアカ」、ランサーズと同じくクラウドソーシングサービスを展開するクラウドワークスの「WoW!me(ワオミー)」などが先行している。また家事代行などの各ジャンルごとに専業サービスが提供されている分野だ。既存のクラウドソーシングとの相乗効果やAI・機械学習によるマッチング精度の向上で、どれだけこうした先行者に食い込むことができるのだろうか。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。