歯科医療人材をマッチングする「HANOWA」が総額6000万円を調達、ライフスタイルに合った働き方を支援

左から2番目がHANOWAの新井翔平代表

歯科医療人材のシェアリングプラットフォーム「HANOWA」を運営するHANOWAは4月30日、第三者割当増資によりプレシリーズAラウンドで総額6000万円の資金調達を行ったと発表した。調達した資金は開発体制・顧客サポート体制の強化や、マーケティング費用に充てていく。

引受先はANOBAKAと日本スタートアップ支援協会、G-STARTUPファンド、守屋実氏、端羽英子氏、大冨智弘氏、遠藤健治氏、ガゼルキャピタルの他、複数の歯科医師を含む個人投資家となる。

歯科衛生士らと歯科医院をマッチング

滑らかに働き続けることが可能に

歯科衛生士国家試験の合格者に対する免許登録事務などを行う登録歯科医療振興財団によると、歯科衛生士名簿登録者数は約29万人となっている。一方、厚生労働省の調査によると、実際に就業している歯科衛生士は13万人程度しかいない。アクティブ率は5割を切っている状況だ。

結婚や妊娠、出産、育児、介護などを機に、うまく家庭と仕事を両立させることができないでいる『潜在医療従事者』が日本には大勢いるという。歯科医療も含めて医療業界の人材不足は大きな課題となっているのだ。

これらの課題を解決するため、HANOWAを2019年1月に設立した。同社は大阪府大阪市に拠点を構える。同社が2019年12月にローンチしたHANOWAは、自身のライフスタイルに合った働き方をしたい歯科衛生士らと、働き手が欲しい歯科医院をマッチングするプラットフォームとなる。歯科衛生士はHANOWAを通じて、転職するための一歩としても、スキマ時間に単発で働くことも、メインの仕事として週に何度も働くことも可能になるのだ。

歯科衛生士の登録者数は4月30日時点で700人を超えているという。現在は東京都23区と大阪市内でサービスを利用できるが、2021年度中には全国展開を目指している。

HANOWAの新井翔平代表は「歯科医院としては、通常は固定費になる人件費をHANOWAによって変動費にできます。歯科衛生士が就職を希望するのであれば、単発で働いてもらった後にミスマッチのない人材だけを採用できるなどのベネフィットもあります」と話した。

歯科衛生士にもメリットはある。「面接だけでは見えづらい現場も実際に働いて知ることができます。地域のいくつかの歯科医院で実際に働いて自分に合うかを選び、最終的には就職を希望することも可能です。また、常勤勤務というかたちをとらなくても、結婚、妊娠、出産などのライフイベントに合わせて、キャリアを分断せずに滑らかに働き続けることができます」と新井氏は説明した。

HANOWAでは、歯科衛生士のサービス利用料や登録料は無料となる。専用アプリをダウンロードする必要はなく、PCやスマホ経由でブラウザからサービスを使うことができる。

登録後は希望自給や勤務可能な日程、自己PRといった情報をオンライン上に入力していく。地域の歯科医院はそれらの情報から、HANOWAに登録する歯科衛生士にメッセージを送り、実際に勤務可能かすり合わせていく流れだ。もちろん、歯科衛生士から仕事の依頼を行うこともできる。

また、マッチングし終わった歯科医院の院長と歯科衛生士はレビューを交換するようになっており、HANOWAではこのレビューを「アリガトウ」と呼んでいる。

HANOWAに登録している歯科医院で働いた人からのレビューも閲覧でき、安心して働く場所を選べる。歯科衛生士側もHANOWAで働くたびにレビューが積み重なっていくため、自身のキャリアに自信が持てるようになる。新井氏は「今はレビューが多くなるほど、希望自給の提示金額が上がる傾向にあります」という。

なお、マネタイズの部分では月額利用料やマッチング手数料を歯科クリニックから得ている。

看護師や薬剤師へと領域を横展開

新井氏は今後の展望について「歯科領域の人材やシフト管理や労務管理など、アナログな医院経営などをDXしていきます。具体的にはシフト管理SaaSを次に提供することで、我々の登録人材を自動で人材不足の日程に埋め込み、経営者が人材不足について考えなくて済むようなかたちにしていきます。そして歯科業界で蓄えたナレッジを基に、歯科領域と同じスキームで看護師や薬剤師へと領域を横に展開していきます」と語った。

関連記事
在宅・被災地などの医療現場でリアルタイム検査が可能な免疫センサー機器を開発するイムノセンスが1.3億円調達
医療ICTのアルムが約56億円をシリーズA調達、コロナ禍拡大に対応するソリューション開発・研究開発に投資

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:HANOWA資金調達医療日本マッチングサービス

画像クレジット:HANOWA

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。