水は身近すぎて忘れられている問題、研究者たちは将来に備えてネット上の情報共有化を提案

蛇口から出る水は、どこから来ているのだろう? どのようにろ過され、浄化されているのだろう? 1ガロン(約4リットル)の水を利用者に送るために要する市や州の費用はどれぐらいだろう? それはもっと安くできないのか? きれいな水がますます貴重な資源になってくるにつれて、あれやこれやの疑問が自然に湧いてくる。それらの疑問に答えるためには、オープンに共有される‘水のインターネット’(internet of water, IoW)が必要だ、デューク大学とアスペン研究所(Aspen Institute)の研究者たちはそう考えている

干ばつや洪水のような自然災害や、過密都市や工場廃液のような人災、これらの被害者である水系は酷使され無理解にさらされている。各地の行政や公共事業体は、水の使用に関するデータを大量に作っているが、国レベルのデータベースはほとんどなく、国や世界の標準に合ったオープンなデータベースとなると、なおさらない。

“人間と水に関しては、データは多いけど情報は乏しい”、デュークのニコラス研究所のMartin Doyleが説明する。“水のデータがオープンに共有され、みんながよく使うデジタルのプラットホーム〔Google検索など?〕に統合されたら、一般市民が地元の水質を測れるようになり、行政は水に起因する健康危機を早めに警報できるようになるなど、水をめぐる社会状況が一変するだろう”。

それは、ミネアポリスの水道局の人がフェニックスの1ガロンあたりの水道料金を知りたい、というレベルの問題ではない。むしろそれは、有意義なビッグデータがみすみす捨てられていた、という問題だ。視野を広げればより多くのデータが得られ、システムの一部を最適化するための意思決定の質も向上する。マクロとミクロの両方のレベルで。

しかしデータの収集と分析にはお金がかかり、国レベルの情報共有システムともなるとさらにお金が要る。そこで研究者たちの結論は、それをすることのメリットを分かりやすい言葉で説得していくことだ。結局のところ、お金の余裕のない州当局が、既存の実際に役に立っているサービスではなく新奇なデータプロジェクトに数百万ドルを投じるとしたら、そこまでする動機やメリットはなんだろうか?

研究者たちは、水と水のデータが極端に軽視されている、と断言する。カリフォルニアで最近の大規模な干ばつのとき行われたような、既存のデータ収集努力を検分することによって、オープンなデータにアクセスできることの具体的な利点を示せるのではないか、とも期待している。

それでも、こんな状況は、きれいな水の入手にはまったく問題がなく簡単でやさしい、ということを意味しているのではない。水不足や季節変動は、自然資源が今後さらに枯渇し、人口が増加するに伴って、ますます深刻になる。

“有限な水資源に対して需要は成長している。適正なトレードオフを見つけるためには、オープンで誰もがアクセスできるデータが必要だ”、カリフォルニア州水管理委員会のGreg Gearheartはそう語った。

デュークのチームが好んでそう呼ぶ“水のインターネット”は、すべての自治体からの、水に関するあらゆる種類のデータが集まるクリアリングハウスだ。関心を持つ一般市民や、行政府のデータサイエンティスト、それにアプリケーションのデベロッパーなど、誰もがそれにアクセスできる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

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TechCrunch Japan

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