決済サービス「AnyPay」が正式ローンチ、木村新司氏が狙うのはスマホ時代の“ウォレット”か

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ドリームインキュベーターでコンサルタントとして活躍した後にシリウステクノロジーズ取締役を務め、広告配信を手がけるアトランティスを立ち上げてグリーに売却。その後はエンジェル投資家としてGunosy(のちに共同経営者となり、退任。同社はマザーズに上場)を始めとしたスタートアップの成長を支援してきた木村新司氏。

2014年には拠点をシンガポールに移して、投資家としての活動に注力していた木村氏だったが、再び自身で事業を開始した。6月末に新会社AnyPayを設立(資本金は5000万円)。8月に入って新サービス「AnyPay」ベータ版を公開していたが、9月1日、いよいよ正式にサービスをローンチした。

新事業は決済サービス

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AnyPayは、個人でも手軽に利用できる決済サービス。サイト上では「AnyPayは誰でも、どこでも、簡単にリンク作成でき、リンクを相手に送るだけで決済ができるサービス」とうたっているとおりで、アカウントを作成した後、管理画面上で自分の売りたいアイテムを登録すれば、すぐさま自らの「ショップ」の商品として販売できるようになる。物販やサービスチケット、月額課金、ダウンロード販売などに利用できる機能を提供する。決済に利用できるのはVISAおよびMasterブランドのクレジットカード。

初期費用および月会費は無料で、登録時の審査も必要ない。決済手数料については、キャンペーン期間中として無料で提供している。ただし1アカウントあたりの月額売上が5000万円を超える場合、5000万円を超過した売上の2.8%の手数料が発生する。また口座への振り込みは1件あたり200円の手数料がかかる。AnyPayでは、3年以内に月額流通額500億円を目指すとしている。

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スマートフォンで使える「ウォレット」を作る

PayPalやその傘下のBraintree、StripeにSquare、さらに国内でもコイニー(昨日リリースしたばかりのCoineyペイジもかなり似たサービスだ)やWebPay、BASEの手がけるPAY.JPなどなど、手軽に使えるオンライン決済サービスは数多く登場している。やはり一番気になるのは、数多くの決済サービスがある中で、どうしてこの領域でのチャレンジを選んだのか、ということだ。サービスの正式ローンチに先駆けて木村氏に尋ねたところ、次の様な答えが返ってきた。

「(ビットコイン取引所の)bitFlyerなどに投資したこともあり、決済まわりのことは調べていた。(ビットコインの)ウォレットで送金をしてみるとその便利さを感じる。だがそれがスマートフォンでできないのはおかしい。例えば送金サービスをやりたくても送金業の縛りもあって日本では簡単に立ち上げられず、いろんな工夫をしないといけない。とは言え誰かがやらないといけないと思っていた」(木村氏)

日本で送金サービスをするために資金移動業者としての登録が必要になるし、供託金をつまないといけない。またKYC(顧客の本人確認)を行う手間でユーザーのドロップ率は高まってしまう。そうそう簡単にスマートフォンで完結するサービスを成長させるのは難しい。では前述の決済サービスのように、個人であってもクレジットカードを使ってお金をやり取りすることもできるが、決済手数料を取られてまでユーザーはやりとりをするのだろうか。こういった課題を解決するべく、木村氏はAnyPayを立ち上げたと語る。

「シンガポールだとPayPalとApple Payを使っているので、そこはすごく意識した。日本はまだまだ不便だと思う」(木村氏)

競合についてはあまり考えていないという。「決済ビジネスはぶっちゃけて言えば誰でも作れると思う。ただ問題なのはどこにポジショニングするか」(木村氏)。加えて、PayPalなどよりはVenmo(Paypal傘下の個人間送金サービス)のほうが気になっているとも語った。

仕組み上は「決済サービス」だが、木村氏が本当に狙っているのはデビットカードの置き換え——つまりリアルタイムに送金、決済でき、手数料の安い(もしくはゼロの)、スマホ時代の新しい「ウォレット」を作るということではないだろうか。

“フリマ”で個人のニーズを喚起

木村氏は「最初はAnyPayをツールとして提供していく」と語る一方で、「今は個人とスモールBに注力しているが、個人の場合、目的があるわけでもないのでそこまで使われない」と分析。今後はそんな個人の利用を喚起するための施策を打っていくという。

「個人の場合、決済のタイミング——CtoCの売買であればチケットや本など、目的をはっきりさせないといけない。今後は目的があるプロダクトを『AnyPay』のアカウントで出していく」(木村氏)。その言葉を聞いて僕の頭に浮かぶの「カテゴリ特化型のフリマアプリ」だったが、木村氏の回答はそのとおりで、今後、領域特化型のフリマアプリをいくつか提供していく予定だという。特化型のフリマという具体的な目的を用意することで、アカウントの拡大を狙う。

BASEがネットショップの構築サービスから決済領域のPAY.JPを提供するに至った。AnyPayは順序こそ逆(決済からショップ(というかフリマ))ではあるが、少し似たアプローチにも感じる。フリマアプリは、年内にもリリースする予定だという。

今後は国内にとどまらず、アジア圏でもサービスを展開していく予定だ。「アジア各国はそれぞれ(決済まわりの)特性が違う。国によってはフリマサービスは提供できても決済はライセンスが必要だったりする。そういった環境に合わせつつ動く。サービスのベースは作ったし、FinTech関連の状況も分かってきたので、M&Aすることも考えていく」(木村氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。