決済サービスのStripeが新たに1億5000万ドルを調達、評価額は90億ドルに

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ウェブサイトやアプリに、数行のコードを挿入するだけで決済機能をAPI経由で搭載できるサービスを提供しているStripeは、新たにシリーズDで1億5000万ドルを調達し、資金調達前の評価額が90億ドル、調達後の評価額は92億ドルに達した。

スタートアップ界のいわゆる”ユニコーン企業”が過大評価されているのではないか、とたくさんの人が疑問に思っている中、この調達額はStripeにとって大きな意味を持つ。なお、Visaと協力して行った昨年夏のラウンド時の同社の評価額は50億ドルだった

資金調達に加え、Stripeは合計2億5000ドル分の回転信用枠(リボルビングクレジットファシリティ)を、J.P. Morgan Chase & Co.、Goldman Sachs Group Inc.、Morgan Stanley、Barclays PLCとの間に設定しようとしている。金利が低迷している今のうちに、借入自体ではなく、借入の上限額を引き上げておこうというのが同社の狙いだ。しかし資金が必要でなければ、Stripeはこの枠を利用しなくても良い。

今回の資金調達に関するニュースは、面白いタイミングで発表された。というのも、先週の木曜日は買い物客が増える休暇の初日で、プラットフォーム経由の全ての決済から手数料をとっているStripeのような会社は、この時期に1年で一番大きな売上を期待することができるのだ。サンクスギビングデーには、売上が2016年に入って初めて20億ドルの超えると予想されている。

中には、ニュースが静かになる休暇中の週末に、このニュースが発表されたことを不思議に思っている人もいるかもしれない。なお、最初にこのニュースを報じたメディアはThe Wall Street Journalだった。

しかし、私はこのタイミングでの資金調達の発表には意義があると感じている。Stripeはいずれ株式を公開するか、同社よりも大きなEC(もしくはテック…もしかしたらGoogle?)企業に買収されることを念頭においているため、今回の発表でStripeは、オンラインショッピング界にとって大事なこの時期に、「Stripeがここにいるよ。これからEC業界を席巻していくよ」と伝えようとしているのだ。

Alphabetブランドの下に検索・モバイル事業を置くというGoogleの組織改編後に、Google Capitalから名称変更を行い、今回初めてStripeに投資した”CapitalG”と、以前から投資家として名を連ねていたGeneral Catalystの2社が今回のラウンドのリードインベスターを務めた。その他にも、Sequoia Capitalや、以前から同社に投資を行っていたものの、名前が明かされていない投資家が同ラウンドには参加していた。

2010年にアイルランド出身のPatrick・John Collison兄弟(それぞれCEOとプレジデントを務めている)によって設立され、サンフランシスコを拠点とするStripeは、今回の調達資金を含め、これまでに約4億6000万ドルを外部から調達している。

同社のビジネスの中心は決済サービスではあるものの、今後金融サービスプラットフォームへと進化していくために、Stripeは決済以外のサービスの開発も進めている。

例えば、アメリカ国外からアメリカ籍の企業を設立するためのサービス詐欺防止ツール、企業の支払をスピード化するツール、Stripeのプラットフォームを利用したマーケットプレイスなどの開発が行われている。Stripeは自社のプラットフォームを利用して、利幅を増やす(決済サービスだけでは少額の利益しかあげられない)と共に、顧客との接点を増やそうとしているのだ。

その点に関しStripeは、今回の調達資金をディベロッパー向けツールの開発や企業買収時に使えるツールなど、実業家をサポートするような機能をプラットフォームに追加するために使っていくと話している。さらにスタッフの増強も行っていく予定だ。

Stripeは次に何をローンチするのか名言していないが、詐欺防止ツールのRaderを10月末にリリースした際に、John Collisonは、EC業界にいる人たちの信頼感を高めるために、売る側・買う側両方をさらに保護していくためのサービスが今後発表されるかもしれないと、ほのめかしていた。

「この分野のサービスの開発は活発に行われており、私たちがやりたいと思っていることもたくさんあります。まだ利用者保護サービス(を単独のサービスとしてローンチするかどうか)の可能性は断念していませんが、今後ユーザーがどのようにこのサービスを利用して、何がうまくいって、何がうまくいかないかというのを観察していきたいと考えています」

ネットビジネスの運営やオンラインコマースへのアプローチとして、仕組みが複雑なサービスをシンプルにすることでPayPalのような企業へ対抗するという、Appleが得意とするやり方をStripeはもっと広く活用しようとしている。

先月Collisonに話を聞いたところ、Stripeのミッションは「ビジネスを成長させる上で直面する複雑な問題を簡素化することです。そのため、今後ローンチされるStripeのプロダクトは、そこに特化したものが多くなると思います。何がビジネス上の問題なのか、なぜ成長スピードが思うように伸びないのか、そして私たちはその状況に対して何ができるのか、というのが私たちの考え方なんです」と語っていた。

Stripeはまだ、世界中のユーザーの数や売上額、Stripeプラットフォーム上での決済総額などは明らかにしていない。しかし同社は、現在ユーザーが110ヶ国にいて、アメリカのインターネット人口の半分にあたる人々の決済をこれまで処理してきたと話している。

つまり、かなり広範囲に渡る顧客が、Stripeのサービスを少なくともひとつは利用したことがあり、そのユーザーには有名なネット企業も含まれているのだ。具体的にはSAP、Macy’s、Missguided、 GE、Adidas、Docusign、Slack、Medium、Daily Mail、Yelp、NASDAQ、UNICEF、「他にも先の大統領選の両候補者」などがStripeのサービスを利用している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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