決済テックBoltが同業Tipserを買収、「リモートチェックアウト」を開始

デジタルコンテンツを発見した時点で何かを購入するという機能は存在するが、決済テクノロジー企業のBolt(ボルト)は、それを「ワンクリック」で処理する機会を得た。同社は米国時間11月29日、初となる買収でスウェーデン拠点のTipser(ティスパー)を買収したことを発表した。Tipserはあらゆるデジタル端末でのダイレクト決済を可能にするテクノロジー企業だ。

サンフランシスコを拠点とするBoltは、10月に3億300万ドル(約345億円)のシリーズD資金を調達したばかりで、これまでの累計調達額は6億ドル(約682億円)に達している。Boltの創業者でCEOのRyan Breslow(ライアン・ブレスロウ)氏は今回の買収について「しばらく前から計画していた」とTechCrunchに語った。

Tipserの技術は、オンライン出版物、モバイルマーケットプレイス、価格比較サイト、ソーシャルメディアプラットフォームや検索エンジンなどのサイトから、消費者がネイティブに商品を購入することを可能にする。同社は、共同創業者でCEOのMarcus Jacobsson(マーカス・ヤコブソン)氏が率いており、2012年にAxel Wolrath(アクセル・ウォルラス)氏、Jonas Sjöstedt(ヨナス・ショステッド)氏とともに会社を立ち上げた。

実は、BoltがTipserと話を始めた当初、同社は売れる状況ではなく、次の投資ラウンドに向けて動いていた(約16億円を調達)が、結果的に2社はより深い話をすることになり、文化的融合がよりうまくいくことがわかった、とブレスロウ氏は話した。

「我々は、TipserがBoltにとってどれほど大きな意味を持つかを知りました。Tipserは10年間にわたって組み込み型コマースの技術を洗練させており、唯一の強力なプレイヤーでした。我々が苦手とする分野で、彼らは我々よりも強かったのです。彼らをチームに迎え入れることは非常に戦略的です」と付け加えた。

正確な取引額は公表されていないが、ブレスロウ氏はTechCrunchに対し、全株式でのこの買収は「2億ドル(約228億円)弱」であったことを明らかにした。Tipserの全チームはそのまま残り、Boltは100人の増員となる。また、最近発表されたヨーロッパへの進出にともない、TipserがあるスウェーデンはBoltのヨーロッパ本社としても機能することになる。

Boltは、今回の買収に加えて、買い物客が発見したその場で商品を購入できるツール、リモートチェックアウトを立ち上げる。ピュー研究所によると、買い物客の84%がレビューを見るソーシャルメディアで何かを見た後、別のウェブサイトに行って購入している。

この新しいツールは、Boltが1年以上前から社内で開発していたもので、同じく商品を発見してアプリから直接決済できるツールであるInstagram Checkoutにヒントを得たとブレスローは話す。

「トラッキングやクッキーが廃止されたことで、小売業者がコンバージョンを追跡できるよう、ネイティブ決済の必要性が出てくるかもしれません。消費者にとっては、何度もクリックする必要がない方がいいですから」と付け加えた。

Boltのリモート決済の特徴は、ワンクリックでの直接決済、Boltのショッパーネットワークとのエンゲージメント、そして業者が複数のチャネルで注文を受けながらコンバージョン率を高め、訪問者との直接的な関係を築くことができることだ。また、匿名の訪問者をログインしたアカウントホルダーに変え、オンサイトでトラフィックを収益化することができる。

メディア出版社であるBDG(旧Bustle Digital Group)の社長兼CROであるJason Wagenheim(ジェイソン・ヴァーゲンハイム)氏は、出版社やクリエイターが自分のサイトに来たトラフィックを収益化できるという機能に特に興味を示した。BDGは、Bustle、EliteDaily、Fatherlyなどのブランドを展開している。

1月に米国の出版社としては初めてTipserと契約し、4月にはBDGの13サイトのうち2サイトで運用を開始したヴァーゲンハイム氏は、今回の合併を傍観者のように見ていたとインタビューで語った。

「今回の買収で最も気に入っているのは、何百もの業者を当社のプラットフォームに乗せることを加速できることです。これは、コンテンツとコマースの融合です」。

ソーシャルメディア、そしてBoltやTipserのような企業が登場する以前は、雑誌のページから直接買い物をするにはQRコードを利用していたが、人々が思っていたようには普及しなかった、とヴァーゲンハイム氏はいう。

他の出版社もQRコードを取り込もうとしたが、Goopはそれができた数少ない出版社の1つだったという。今では、これらの新しい技術により、出版社やクリエイターは、アッパーファネルとロワーファネルの間のギャップを埋めることができ、ワンクリックで買い物ができるコマースにより、認知度を高めることができる。

同氏はTipserとのBDGのプロジェクトはまだベータ版と考えているが、来年にはBDGのすべてのサイトにこの技術を導入する計画だ。BDGでは、すでに2500万回以上のセッションが行われており、1回のセッションで平均10個の商品を見ていると話す。これは、プロセスが機能していることを示している、と同氏は指摘する。人々はプロダクトに時間を費やし、そしてカートにプロダクトを入れる。

「エディターが記事を書くための業者が数百社に増え、ワンクリックでの取引が可能になりました。これは画期的なことです」と付け加えた。

画像クレジット:Tipser

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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