法律書籍を自由に横断検索・閲覧できる月額制サービス「Legal Library」が5000万円を調達

約数百冊の法律書籍や官公庁の資料を横断検索できるデータベース「Legal Library」を展開するLegal Technologyは3月31日、マネックスベンチャーズより5000万円を調達したことを明らかにした。

同社はこれまで複数のエンジェル投資家より資金調達を実施しているが、VCからの調達は初めて。今回も含めた累計調達額は約1億円になるという。

昨年12月の正式ローンチ時に詳しく紹介した通り、Legal Libraryは弁護士のリーガルリサーチ業務の負担を削減するサービスだ。

掲載されている書籍を定額でいくらでも閲覧できるという点では法律書籍の電子版に特化したサブスクサービスのようでもあるけれど、リサーチを効率化する仕組みとして「気になるキーワードで書籍を横断検索する仕組み」なども備えている。

たとえば「ストックオプション」と検索すればタイトルや本文中に関連する記載のある書籍がすぐに出てくる。そのままオンライン上で中身までチェックできるためリサーチ業務がサクサク進む。お気に入り登録やメモを残しておけば、いつでも簡単に参照することが可能だ。

従来のやり方だと、弁護士会の図書館や事務所内の図書室などで関連する書籍を手当たり次第調べることから始めなければならなかったので、参考になる文献にたどり着くまでに時間と手間がかかっていた。そもそも外出先や出張先ではすぐに調べ物ができないという場所の制約もある。

Legal Libraryではこのリーガルリサーチ業務を全てオンライン化できるのが特徴。重たい書籍を持ち歩く必要もなく、何かを調べたいと思った際にPCやタブレットからスピーディーにリサーチができる。

Legal Technology代表取締役CEOで弁護士でもある二木康晴氏によると、ローンチから3ヶ月ほどで約2500人が無料トライアルを実施し、すでに1000人程度が有料(月額5200円)で活用しているそう。かなりシンプルなプロダクトではあるものの、既存の業務フローに対して課題意識を持っていた弁護士が多かったのだろう。

今は個人ユーザーが中心だが、一部では弁護士事務所が海外駐在中の弁護士や地方オフィスにいる弁護士のために人数分のアカウントを契約するケースも出てきているという。

「今のところはサブ的な使い方が多い。Legal Libraryだけで業務を完結させるというよりは、これがあることで書籍を持ち運ぶ煩わしさがなくなった、わざわざ家に持ち帰る必要がなくなったという点に価値を感じてもらえている。手元に書籍がない時に急な調べごとや困りごとが発生した時でも、Legal Libraryがあれば安心してもらえる」(二木氏)

掲載コンテンツは現在数百冊ほど。ただし数よりも質を重視し、二木氏自身が「実際に弁護士が実務で使いたいと思う書籍」を1冊ずつリストアップした上で、タッグを組む出版社と交渉をしているそうだ。

「実際にユーザーの利用状況を見ていても、使われる本はかなり偏りがある。冊数を闇雲に増やしても、弁護士の実務において本当に必要とされる書籍が入ってなければ意味がない。もちろん今後も冊数は拡充はしていくが、書籍は厳選していく方針だ」

「本当に必要な本を網羅できていれば、ユーザーにとって利便性が高くなるだけでなく、その結果として出版社にもしっかり収益を分配できるようになる。プロダクト構想時に初めて出版社に声をかけた頃はこのビジネスに懐疑的な会社が多くなかなか共感を得られず大変だったが、最初の分配金をお支払いすると『こんなにもらえるんだ』とポジティブな反応も得られた」(二木氏)

今回調達した資金に関してはプロダクトの機能拡充に向けた人材採用やプロモーションへ投資していく計画。「現時点ではまだまだビューアーにとどまっている状況」だというが、今後はリサーチのためのシステムとしてより便利に使えるような機能追加を進めていく。

まずは4月をめどに書籍内に記載されている契約書のひな形や書式をWord形式で出力できる仕組みを実装する予定。そのほかラインマーカーを引いた箇所やメモの内容をプロダクト上で他のユーザーに共有できるような仕組みも検討している。パートナーとアソシエイトとの間で、もしくはクライアントとの間で書籍に関するトピックをそのままシェアできるようなイメージだ。

「基本的にはリサーチをした後は誰かに報告をするので、その報告業務をいかにしやすくするかという観点でも機能を強化する。自分自身が弁護士として現場経験もあるからこそ、実際のリサーチ業務に沿った形で、そこをより簡単にできるような機能を充実させていく」

「もともとこのプロダクトを作ったのも、コンサル時代に本当に不便だったから。会社のお金でバンバン本を買うのは難しいから図書館を往復したり、自腹で購入したりで時間もお金もかかっていた。そんな状況を変えたくて、自分自身が1人のユーザーとして欲しいと思うものを形にした。みんながスムーズにリサーチできるように今後もプロダクトを進化させていきたい」(二木氏)

この領域では弁護士ドットコムも先日新サービスをリリースしたばかり。これらのプロダクトによって従来のリーガルリサーチ業務がどのように変わっていくのか、今後に注目だ。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。