海藻から作った代替プラで環境派投資家から6.5億円を調達したLoliware

ここ数年、プラスティック製のレジ袋やストロー、それによく目にするプラゴミを禁止する街が増加し、環境に配慮した代替素材のメーカーが大きく成長している。その中に、ケルプから作った環境に優しい使い捨て製品を供給するLoliware(ロリウェア)がある。巨大な需要と、その優れた原材料の入手法から、初めて巨額の投資を得た。

私は以前にも、非営利団体のSustainable Ocean Alliance(持続可能な海洋連合、SOA)が2017年にスタートしたOcean Solutions Accelerator(海洋ソリューション・アクセラレーター)で最初に投資を受けた企業のひとつとして、Loliwareの紹介をしている。創設者のChelsea “Sea” Briganti(チェルシー“シー”ブリガンティ)氏は、この変わっているが大成功を収めたSOAのAccelerator at Sea(海のアクセラレーター)プログラムからの今回の新たな投資について、去年の暮れに私に聞かせてくれた。

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同社は、ケルプから抽出した物質で、その他の製品も計画中だが、主にストローを製造している。念のために説明しておくと、ケルプとは、ごく一般的な水生藻類(いわゆる海藻)の一種で、非常に大きく育ち、丈夫なことで知られている。また広範に繁殖し、多くの沿岸水域に大量に棲息して「ケルプの森」を形成し、生態系全体を支えている。正しい知識を持って成長の早いこのケルプ資源を上手に管理すれば、トウモロコシや紙よりもずっと優れた資源にできる。今の生分解性ストローのほとんどは、ケルプから作られている。

独自製法でケルプから作られたストローは、プラスティックに似た感触ながら、簡単に分解する。とはいえ、温かい飲み物の中では分解しない。トウモロコシや紙のストローよりも液体中での耐久性はずっと高い。もちろん、海藻には味が求められるシチュエーションもあるが、ストローの場合は炭酸水を飲んでも味がしないように処理されている。

「そこには大変な研究開発と微調整の努力があった」とブリガンティ氏は私に話してくれた。「今までに、これをやった人はいませんでした。私たちは、素材技術から、世界初の製造機械や製造管理方法に至るまで、すべてを作り上げました。そうして、製品開発のあらゆる側面を、本当の意味でスケールアップできるようにしたのです」。

彼らは1000種類以上の試作品を作ったが、今でも改良を重ね、柔軟性を高めたり、別の形状を可能にしたりと進歩を続けている。

「結果的に私たちの素材は、他の企業が目指す生分解素材開発のパラダイムから大きく脱却したものになりました」と彼女は言う。「彼らは、問題の多い、永遠に朽ちない、石油由来のパラダイムから発想して、それをあまり悪くないものにしようと考えています。それは単に延長線上の開発であって、遅くて古臭く、本当のインパクトを与えることはできません」。

当たり前だが、どんなに素晴らしい製造工程を誇っても、誰も買ってくれなければ意味がない。それは倫理を第一に考えた事業に付きまとう問題なのだが、実際、需要は急増しており、それに追いつけるよう規模を拡大することがLoliwareの最大の課題となっている。同社のストローの出荷本数は、この数年で数百万本から1億本に増え、2020年には10億本となる見込みだ。

「(研究室から)完全なオートメーションに移行するまでには、およそ12カ月かかります」と彼女は話す。「完全なオートメーション化が実現すれば、戦略的に重要なプラスティックや紙の製造業者に技術をライセンスします。つまり、10億本のストローも他の製品も、自社では製造しないということです」。

プリント基板やプラスティックの金型などを外注するのと同じだと思えば、当然、理にかなっている。ブリガンティ氏は、全世界にインパクトを与えたいと考えている。それには、すでにグローバルに存在しているインフラを活用することが大切だ。

そしてもうひとつ、持続可能なエコシステムを常に考慮するよう、ブリガンティ氏は心がけてきた。廃棄物の削減と根本から倫理的なプロセスを用いるという理念の上に、この会社全体が成り立っているからだ。

「私たちの製品に使われる海藻は、産地の行政による監視と規制の下で、持続可能性が非常に高い形で供給されています」とブリガンティ氏。「2020年、Loliwareは世界初のAlgae Sustainability Council(海藻持続性委員会、ASC)を発足させます。それにより私たちは、新しい国際的な海藻のサプライチェーンシステム作りを主導できるようになり、監視体制を確立して、持続可能な事業と公平性を確保できます。また私たちは、Zero Waste Circular Extraction Methodology(ゼロ廃棄物の循環型採取方式)と私たちで名付けた手法の先導者になります。これは、そこで推奨するバイオマスの要素をあまねく活用した海藻加工の新しいパラダイムです」。

今回の590万ドル(約6億5000万円)の「スーパーシード」ラウンド投資には、多くの投資家が参加している。その中には、昨年10月にアラスカでAccelerator at Seaの船に同乗した数人も、SOA Seabird Venturesとして加わっている。Blue Bottle CoffeeのCEOも投資した。その他、New York Ventures、Magic Hour、For Good VC、Hatzimemos/Libby、Geekdom Fund、HUmanCo VC、CityRock、Closed Loop Partnersも名を連ねる。

この資金は、規模の拡大と、さらなる研究開発に使われる。Loliwareでは、箱入りジュース用の曲がるストローなど数種類の新しいタイプのストロー、コップ、さらに新しい食器を発売する予定だ。2020年は、いち早く流行を取り入れる人たちよりも、行きつけのコーヒーショップでこの会社のストローを多く見かけるようになるかも知れない。どこで彼らの製品に出会えるかは、Loliwareのウェブサイトでチェックしてほしい。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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