消費者団体が13歳以下の子ども向けInstagramの開発中止をフェイスブックに要望

35の消費者啓発グループの連合と子どもの発達の専門家64人は、Facebook(フェイスブック)にInstagram(インスタグラム)の13歳以下の子ども向けバージョンを立ち上げる計画を再考するよう求める書簡に共同署名した。Facebookは子ども向けバージョンを開発していることを認めていた。書簡の中でグループや専門家は、ソーシャルメディアが幼い子どもや思春期の子どもの身体的健康と心身の幸福全体に関するいくつかのリスク要因にリンクしていると主張している。

書簡は、大企業と企業が子どもをターゲットとしていることに対するキャンペーンを牽引している啓発グループCampaign for a Commercial-Free Childhoodが書いた。

同グループは、ソーシャルメディアが若年層の発達にいかに影響を及ぼすか、そうしたアプリがもたらし得る危険性を強調している。

「多くの研究機関が、デジタルデバイスやソーシャルメディアの過度な使用は思春期の子どもにとって有害だと指摘しています。特にInstagramは子どもやティーンエイジャーに絶えずデバイスをチェックするよう、そしてフォロワーと写真を共有するよう促すために、若い人々の取り残される不安や仲間に認められたいという強い思いを悪用しています」と書いている。「外観や自己表現、そしてブランディングへのプラットフォームの執拗なフォーカスは、思春期の子どもたちのプライバシーや心身の幸福にとって問題となっています。幼い子どもは特にそうした問題に対応するほどに発達しておりません。この大事な発達時期に社会的なやり取り、友人関係、内なる強みや困難への対処法を学んでいます」ともある。

公衆衛生研究や他の論文を引用しながら、書簡は過度なスクリーンタイムとソーシャルメディアの使用が肥満や低い心理的幸福度、睡眠の質の低下、うつや自殺観念のリスクの増加、その他の問題など子どもにとってさまざまなリスクにつながっていると指摘している。思春期の女子は仲間の気を引くために性的な自撮りを投稿するプレッシャーを感じていて、米国のティーンエイジャーの59%がソーシャルメディアでいじめにあったことがあると報告した、と書簡にはある。

グループが抱えるもう1つの懸念は、Instagramのアルゴリズムの使用だ。アルゴリズムは子どもが次に観たりクリックしたりするかもしれないものを提案でき、子どもは「かなり影響されやすい」とグループは指摘している。

グループはまた、年齢をごまかしてInstagramプラットフォームを使用している13歳以下の子どもがいることをFacebookは知っていて、こうしたユーザーはすでに使っているものよりも「お子様向け」バージョンだととらえているものへは移行しないだろうと指摘している。つまりこれは、FacebookがInstagramアカウントを持っていない幼い子どもを「キッズバージョン」でターゲットにしていることを意味する。

提起されている懸念にもかかわらず、Instagramの若いユーザーを取り込もうという計画は抗議の影響を受けることはなさそうだ。ソーシャルメディアでInstagramが現在最も競合しているTikTok(ティクトック)はすでに13歳以下の子ども向けのエクスペリエンスを開発した。そしてTikTokは、米国の子どもプライバシー法COPPA違反でMusical.ly(TikTokの前身アプリ)を調査した連邦取引委員会(FTC)との和解の結果、アプリに年齢確認を導入することを余儀なくされた。

Facebookもまた既存の未成年ユーザーをCOPPA順守のエクスペリエンスへと正しく誘導するためにInstagramに年齢確認を導入しなければならない、という似たような状況になるかもしれない。少なくとも、Facebookはアプリに13歳以下の子どもを取り込むべきではないという主張に対して反論する材料を持っている。たとえ違反とみなされたとしても、FTCの罰金はテック大企業の売上高からすると痛くも痒くもない

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啓発グループの書簡の前に、複数の民主党議員も2021年4月、子どものプライバシーと心身の幸福を守るFacebookの能力に関する懸念を示すために同社のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏宛に書簡を送って追求している。この書簡では、子どもが正式に許可されていないユーザーとチャットできる設計上の欠陥が見つかったMessenger Kidsを具体的に引き合いに出した。議員らは4月26日までに質問に応えるようFacebookに求めている。

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ザッカーバーグ氏は2021年3月にあった議会公聴会で、子ども向けInstagramの計画を認めた。その際、アプリがどのように機能するかについて「検討の初期段階にある」と述べたが、親の監視や関与のようなものを含むかもしれないとした。これはFacebookが今日Messenger Kidsで提供しているもの、そしてTikTokがファミリーペアリングというペアレンタルコントロールで行っているものと似ている。

別の言葉でいうと、マーケットは子どもがすでに親の許可の有無に関係なくソーシャルメディアを使っていることを認める方へとシフトしている。その結果、企業は現実に即して機能や年齢確認を構築している。もちろんこの計画の短所は、一度13歳以下の子ども向けのソーシャルアプリ作成を正当化すれば、企業は公衆衛生の観点からはリスクのあるエクスペリエンスに幼い子どもを引き込む法的権利が与えられるということだ。

Campaign for a Commercial-Free Childhoodは米国時間4月15日、Facebookに子ども向けInstagramの計画を中止させるため、誰でも署名できる請願書も立ち上げた。

Facebookにコメントを求めたところ、以下の声明が送られてきた。

当社はInstagram子ども向けバージョンの検討を始めたばかりです。開発するあらゆるエクスペリエンスは安全とプライバシーを優先しなければならないことに異論はありません。当社は子どもの発達、子どもの安全、メンタルヘルスの専門家に意見を求め、そしてプライバシー擁護者にも案内します。加えて、開発する13歳以下のInstagramには広告は掲載しません。子どもはインターネットを使用しているというのが現実です。子どもたちは家族や友達とつながったり、楽しんだり、学習したいのです。そして当社は安全で年齢にふさわしい方法で子どもたちがそうしたことをできるようにサポートしたいと考えています。また、子どもがアプリにアクセスするために年齢を誤魔化しているという業界が抱える問題に対する実用的なソリューションを見つけたいとも考えています。13歳以下がInstagramを使用することがないよう新たな年齢確認の手法に取り組んでおり、年齢にふさわしく、そして親によって管理される子ども向けのInstagramエクスペリエンスを模索しています。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Instagram子ども10代FacebookSNS

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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