無人運転車の大量配備の時代に備える駐車場アプリSpotHero

オンデマンド駐車アプリのSpotHero(スポットヒーロー)は、自動運転車が当たり前のものになる時代に備えて準備を進めている。その戦略は、とりあえず人間が運転する共有車両をターゲットにすることだ。

シカゴに本社を置く同社は、サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンDC、およびシアトルで事業を展開している。このたび、ライドシェアやオンデマンドのサービスをターゲットにした、SpotHero for Fleetsという新しいサービスを開始した。

これは、カーシェアリングと商用の車両に対して、常に必要な数の専用駐車場を用意して、確実にアクセスできるようにするワンストップショップのとなることを目指すもの。SpotHereが押さえている、300都市にまたがる6500カ所の駐車場の大規模なネットワークを活用する。

これには、駐車場の所有者と配車会社との間の関係の調整、カーシェアを利用する人が実際に利用可能な車を見つけることができるようにするための標識類の設置、さらには業務ユーザーの季節による需要の変化への対応など、ありとあらゆることが含まれる。

この新しいサービスを利用すれば、顧客はどの都市の交通量の多い地域でも、空いている駐車場を確実に確保することができる。また、利用状況に応じて課金される料金も、まとめて請求、支払いができるようにすることで合理化できる。

このサービスは、商業車用が駐車場にアクセスする際の難しい課題を解決することも目的としていると、SpotHeroの戦略と運営の責任者であるElan Mosbacher(エラン・モスバチャー)氏は、最近のインタビューで語っている。

「車を運転している人が、必ずしも駐車料金を払うわけではないのですが、その場合に、どうやって駐車場に出入りすればよいでしょうか?」とモスバチャー氏は問いかける。このサービスによって、ゲート付き駐車場へのアクセスも可能となる。それにより、カーシェア車両への乗車と返却が可能な地点を増やすことができるわけだ。

2011年の創業以来、同社が生業としてきたこと、同社ならではの中核サービスとなっているのは、運転者を日常的に、北米にある何千という駐車場に割り振ることだ。

しかし、この8年間で、事業内容も拡張してきた。都市部の密度が高くなり、路上の駐車スペースがますます混雑し、混乱を招くほどになってきたことをうけて、別のサービスも提供することにしたのだ。それは、交通量が増し、町中での乗降や、オンデマンドの配達サービスが増加して、貴重な歩道脇のスペースが不足してきたこととも関係している。

「私たちのプラットフォームは、コネクテッドカーから、都市におけるモビリティアプリ、配車サービスから自動運転車まで、さまざまな分野で多くのトレンドが生まれるたびに進化してきました。さらに多くの会社が私たちにコンタクトしてきました。私たちのネットワークとAPIを利用して、彼らが顧客としてかかえる運転者に駐車場を提供するためです」とモスバチャー氏は明かした。

たとえば先月には、SpotHeroは、Googleが所有するナビゲーションアプリ、Wazeを自身のアプリに統合したことを発表した。それにより、顧客が事前に予約した駐車場への最善かつ最短のルートを探すことができるようになった。同社はまた、Moovitとも提携し、AP通信、Caterpillar、US Cellularなどの企業にもサービスを提供するようになった。

SpotHeroには、このような消費者に焦点を当てたビジネスモデルを拡張し続けていく手もあった。しかし同社は、カーシェアリングの配車管理には、二重の意味で大きな機会があることに気付いたのだ。

モスバチャー氏によれば、SpotHeroは、この1年の間に、自動運転車の企業の何社かからアプローチされていたという。そのうちに、駐車場の問題を解決しなければならなくなることに気付いた企業だ。しかし、そうした企業は、パイロットプログラムを開始する準備さえできていなかった。

SpotHeroは、現状では、人が運転するカーシェアリングの車両管理について、ユースケースと機会があることに気づいている。

「私たちが今取り組んでいるのは、私たちのサービス、ハードウェア、そしてソフトウェアのネットワークを活用して、カーシェアリングの車両管理に関するいくつかのビジネス上の問題を解決することです。技術とインフラの進歩が加速し、自動運転車が私たちのネットワークを使って駐車できるようになることを願っています」とモスバチャー氏は語った。

その機会は、今後10年間でさらに広がる見込みだ。デロイト・コンサルティングの予測によれば、都市部では、2030年までに共有車両の台数が個人所有の車の台数を上回るという。SpotHeroによれば、カーシェアリングの車両数が増えるにつれて、企業は複雑な駐車場のニーズの大規模な問題の解決に、ますます真剣に取り組まなければならなくなる。

同社は、まだ名前は明かしていないが、カーシェアリングの会社や、その他の商用車両を扱う会社と、すでに契約を締結している。

駐車場のビジネスは、今のところは人間が運転するとしても、将来は無人運転となる大量の車両を扱うことが期待され、ベンチャー資金を集めている。SpotHeroは、これまでに6760万ドル(約73億4200万円)を調達している。

そして、投資家や、SpotHeroのような駐車アプリ会社が、「駐車場問題を解決する」ことに注力しようとしているのには、もっとはっきりとした理由がある。Inrixが2017年に発表した調査結果によれば、米国の運転者は、平均して年に17時間も駐車場を探して走り回っているというのだ。これによって、浪費される時間、燃料、排気ガスのコストは、運転手ひとりあたり345ドル(約3万7480円)に相当する。

画像クレジット:Marvin E. Newman/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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