現在の自動車に搭載されている先進運転支援技術で、IIHSの新安全性評価を満たすものは「1つもない」

現在の新車に搭載されている先進運転支援システムで、米国道路安全保険協会(Insurance Institute for Highway Safety、IIHS)が策定中の新たな安全基準を満たすものは1つもないと、同協会は述べている。

自動車保険会社が出資する非営利団体であるIIHSが策定中の新しい評価プログラムは「部分的な自動化」機能を備えた車両において、ドライバーが道路に集中していられるように支援するための安全装置を評価することになると、同協会は米国時間1月20日に発表した。

IIHSは、このようなシステムに「good(優)」「acceptable(良)」「marginal(可)」「poor(不可)」の4段階の評価を与える。IIHSによると、最初の評価は2022年に発表予定とのことだが、具体的な時期は明らかにされていない。サプライチェーンの問題により、テスト用に使う車両の入手が困難になっているためだ。

「部分的な運転自動化システムは、長時間のドライブを負担が少ないものにするかもしれませんが、運転をより安全にするという証拠はありません」と、IIHSのDavid Harkey(デイヴィッド・ハーキー)会長は、声明の中で述べている。「実際には、システムが十分な安全装置を備えていないと、逆に危険な状態になることもあるのです」。

IIHSの発表によると「good」の評価を得るためには、ドライバーの目線が道路に向けられており、手が常にハンドルを握っているか、またはすぐに握れる状態にあることを保証するドライバー監視システムが、車両に搭載されている必要があるという。さらにドライバーがこれらの義務を無視し続けた場合、徐々にエスカレートする警告や、緊急措置が取れる機能が備わっていなければならない。

なお、IIHSの新しい評価プログラムでは、カメラやレーダーセンサーによる障害物の識別能力など、事故につながる可能性のある他の機能面については評価を行わない。

自動車メーカーが提供する運転支援システムには「部分的な自動化」機能が多く含まれている。最も一般的なものは、ドライバーが選択した速度と車間距離を維持するために自動的に走行速度を調整するアダプティブ・クルーズ・コントロールと、ドライバーが走行車線の中央に車両を維持し続けるのを補助するためにステアリングを継続的に調整する車線中央維持機能を組み合わせたものだ。自動的に車線変更を行う機能も一般的になってきていると、IIHSは指摘する。

運転自動化システムの評価に乗り出すIIHSの動きは、自動車メーカーを牽制する規制や消費者保護団体の動向に沿ったものだ。Consumer Reports(コンシューマー・レポート、CR)は、十分なドライバー監視システムを備えた部分自動運転システムにポイントの付与を始めるという。IIHSの安全機能評価が提供されるようになれば、CRはそれも考慮に入れる予定だ。

コンシューマー・リポートは、2月17日に発表する2022年の自動車ランキング「Top Picks」で、ドライバー監視システムの評価を盛り込むとしている。テストする車に安全運転を促すシステムが運転支援パッケージの一部として搭載されている場合、CRはその総合得点に2点を加算する。

CRによると、現状でこの追加ポイントを獲得できる先進運転支援システムは、Ford(フォード)の「BlueCruise(ブルークルーズ)」とGMの「Super Cruise(スーパークルーズ)」のみだという。

十分なドライバー監視システムが搭載されていない新型車は、2024年より総合スコアから2ポイントを減点するとCRは述べている。2026年になると減点は4ポイントに増える。

IIHSは、部分的な自動運転システムのほとんどが何らかの安全装置を備えているものの、同組織が策定中の基準をすべて満たしているものは1つもないと指摘。これではドライバーが意図的または無意識に、システムの安全な動作の範囲を大幅に超えてしまう可能性がある。

「これらのシステムの多くは、その機能が実際にできること以上のことが可能であるような印象を人々に与えています」と、IIHSの研究員で新しい評価プログラム策定の指揮を執っているAlexandra Mueller(アレクサンドラ・ミューラー)氏は語っている。「しかし、ドライバーが部分的な自動運転システムの限界を理解していたとしても、気持ちは揺れ動いてしまうことがあります。人間は、すべてを自分で運転しているときよりも、問題が発生するのを見守っているときの方が、警戒心を保つのが難しいのです」。

いわゆる自動運転車はまだ一般に発売されていないが、自動車メーカーが混乱を招いたりシステムの能力を誇張したりするような方法で、そのシステムをブランド化することは止められない。

Tesla(テスラ)は、同社の車両に標準装備されている先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」や、1万2000ドル(約136万円)で追加購入できるアップグレード版のソフトウェアパッケージ「FSD(フル・セルフ・ドライビング)」のベータ版のブランディングについて、多方面から批判を受けている。しかし、他の自動車メーカーでも、自社のシステムの能力を誇大宣伝するようなマーケティングキャンペーンは、以前から行われている。

画像クレジット:Veoneer

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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