現場労働者をハイテク化するParsable、シリーズCで4000万ドルを調達

人工知能、機械学習、ロボットなどのテクノロジーによるオートメーション化が産業労働者の職を奪うという懸念が日々メディアで語られている。これに対してサンフランシスコのスタートアップ、Parsableは別の未来像を考えている。Parsableでは、オートメーション化に取り残されかねない何百万人もの産業労働者にデジタル・テクノロジーを自由に利用できるソリューションを提供しようとしている。

ParsableはConnected Workerと呼ばれるプラットフォームを開発した。これは現在印刷ベースのマニュアルを利用している各種の現場労働者にデスクトップ・パソコンなしで情報テクノロジーの進歩の成果を利用できるようにする。今日(米国時間5/16)、同社はシリーズCのラウンドで4000万ドルのベンチャー資金調達に成功したことを発表した。

今回のラウンドはFuture Fundがリードし、B37やLightspeed Venture Partners、Airbus Ventures、Aramco Venturesなどの既存の投資家も参加した。シリーズCの4000万ドルを加えて同社が調達した資金総額は7000万ドルとなる。

Parsableのプラットフォームはほとんどすべてのスマートフォンとタブレットで利用可能だ。デスクトップ、ノートその他の伝統的パソコンを使うことが不可能な作業環境で、たとえば機械の間を歩きながらでも、労働者はモバイル・デバイスをタップしたりスワイプしたりすることで必要な情報をインプットできる。

写真提供:Parsable

現場労働者はテクノロジーの進歩に追いつくために十分な手立てを与えられてこなかったと同社は考えている。Parsableは2013年に創立されているが、CEOのLawrence Whittleは「われわれは当初からコンピューター・エンジニアが必要と考えるものではなく、産業労働者自身が実際に必要とするプロダクトを作ろうと努めてきた」と語った。ただしこれを実現するためには長期にわたる予備調査が必要だった。

同じ作業を25年も続けてきたベテラン労働者に使ってもらうためには、プロダクトはこれ以上ないほどシンプルである必要がある。同時にテクノロジーを利用する度合いがもっと高い若い労働者にも違和感を抱かせないものでなければならない。つまりFacebookやSMSのような親しみやすいユーザー・インーフェイスが必要だと判明した。

Whittleの説明によれば「われわれは紙ベースのマニュアルやメモ帳の代わりに、さらに高機能、高効率でしかも事故を防止するなど安全面でも優れたデジタル版を提供しようとしている」という。

Whittleはこの努力を機械にセンサーを取り付けて機能をアップさせることに例えた。ただしParsableの場合は、新たな能力は機械ではなく労働者に付加される。「われわれはセンサーやインターネットへの接続能力を機械ではなく労働者に付与して仕事の効率化を図る」という。

同社はプラットフォームに柔軟性をもたせ、テクノロジーの進歩に合わせて新しい機能を追加できる仕組みにしている。たとえば、Pasableプラットフォームはスマートメガネをサポートしており、Whittleによればこれはプラットフォームの作業の10%を占めるまでになっている。テクノロジーがどのように進歩するかは予測不可能なため、新しいテクノロジーが現れた時点でそれを取り入れることができる柔軟性がプラットフォームには必須だという。

現在Parsableには30社の大企業ユーザーがあり、3万人がプラットフォームに登録している。ユーザーにはEcolab、Schlumberger、Silgan、Shellなどの著名企業が含まれる。同社の社員は現在80名前後だが今年の第3四半期末までには100になるとWhittleは語った。

画像:タブレットを利用してオートメーションの状態をチェックする女性エンジニア Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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