生データを大規模なリアルタイム分析APIに変えるTinybirdがシードで約3.3億円調達

Tinybirdは、開発者がインフラやクエリ時間など、巨大なデータセットを扱う際に生じる煩わしい問題を気にすることなく、大規模なデータ製品を構築できるよう支援する新しいスタートアップだ。同社は大規模なデータを取り込み、SQLを使ってデータを変換し、そのデータをAPIエンドポイントで公開する。

ここ数年、アナリティクスやビジネスインテリジェンス製品は、我々がデータを扱う方法を大きく変えた。現在、多くの大企業では、データウェアハウスやデータレイクにデータを保存している。そして、それらのデータセットからインサイトを得ようとしている。

とはいえ、データの抽出や操作にはコストがかかり、時間もかかる。四半期ごとの業績を発表するためのパワーポイントを作成するのには有効かもしれない。しかしそれでは、最新のウェブ製品やデータ製品を作ることはできない。

「Tinybirdで取り組んでいるのは、開発者があらゆる規模のデータ製品を構築できるようサポートすることです。そして、当社はリアルタイム性に重点を置いています」と、共同創業者兼CEOのJorge Gómez Sancha(ホルヘ・ゴメス・サンチャ)氏は語ってくれた。

共同設立者のチームは、もともとCartoで出会った。彼らはすでにそこで、複雑なデータの問題に取り組んでいた。「毎年、人々は桁違いのデータを持ってきていました」とゴメス・サンチャ氏は語る。そこから生まれたのが、Tinybirdだ。

画像クレジット:Tinybird

同社の製品は、3つの部分に分けられる。まずユーザーは、自分のTinybirdアカウントとデータソースを接続する。すると、それらのデータソースから連続的にデータを取り込むことができる。

次の段階としてユーザーは、そのデータをSQLクエリを通して変換できる。コマンド行インターフェースに加えて、ウェブインターフェイスでもSQLクエリを入力し、複数のステップに分けて、すべてを文書化できる。クエリを書くたびに、そのクエリに従ってデータがフィルタリングされたりソートされるのを見ることができる。

3つ目は、これらのクエリに基づいてAPIエンドポイントを作成することだ。その後は、標準的なJSONベースのAPIのように動作する。それを使って、自分のアプリケーションでデータを取得することができる。

Tinybirdの特徴は、まるでリアルタイムでデータを照会しているかのような高速性にある。「当社のお客様の中には、Tinybirdを介して1日平均1.5兆行以上を読み取り、1日に約50億行をインジェストしている組織もあれば、数十億行のデータセットを照会するために当社のAPIに1秒あたり平均250回のリクエストを行っているケースも多くあります」とゴメス・サンチャ氏はメールで書いている。

舞台裏では、同社はClickHouseを使っている。しかし、Tinybirdがすべてのインフラを管理してくれるので、ユーザーがその点を心配する必要はない。

現時点で、Tinybirdは3つの有望なユースケースを特定している。顧客は、製品内アナリティクスを提供するためにTinybirdを使用することができる。例えば、ウェブホスティングサービスを運営していて、顧客にアナリティクスを提供したい場合や、オンラインストアを運営していて、顧客に購買データを表示したい場合など、Tinybirdはそのような用途に適している。

また、同社の顧客の中には、社内で共有できるリアルタイムダッシュボードなど、オペレーショナルインテリジェンスのためにこの製品を利用するケースもある。チームはより迅速な対応が可能になり、すべてが正常に稼働しているかどうかを常に把握することができる。

また、Tinybirdを自動化や複雑なイベント処理の基盤として使用することもできる。例えばTinybirdを活用することにより、トラフィックをスキャンしてリアルタイムに反応するウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)を構築することなどができる。

Tinybirdは、Crane.vcが主導するシードラウンドで300万ドル(約3億3000万円)の資金を調達した。また今ラウンドには、GitHubのNat Friedman(ナット・フリードマン)CEO、Algoliaの共同創業者であるNicholas Dessaigne(ニコラス・デサイーグ)氏、VercelのGuillermo Rauch(ギレルモ・ラウチ)CEO、GitHubのJason Warner(ジェイソン・ワーナー)CTO、元HerokuのCEOであるAdam Gross(アダム・グロス)氏、Collibraの共同創業者兼CTOであるStijn Christiaens(スティーン・クリスティアン)氏、Auth0の共同創業者兼CTOであるMatias Woloski(マティアス・ウォロスキー)氏、Hybrisの共同創業者Carsten Thoma(カーステン・トーマ)氏など、多数のビジネスエンジェルが参加している。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Tinybird資金調達API

画像クレジット:Nana Smirnova / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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