生理日予測から生理用品の購入までをLINEで簡単に、LINE連動型EC「illuminate」がリリース

ランジェリーブランド「feast」などアパレル領域で複数の自社ブランドを展開するウツワは9月12日、生理用品に関する新サービス「illuminate」のベータ版をリリースした。

同サービスは生理用品に特化したLINE連動型のECで、LINEアカウントから生理日の予測や商品購入がスムーズにできるのが特徴だ。

機能の1つである「生理日予測」は、国内だけでもここに焦点を当てたアプリが複数存在する領域。シンプルなトラッキングアプリから読み物系のコンテンツが充実したものまで多岐にわたり、たとえば代表的な「ルナルナ」のダウンロード数は1400万ダウンロードを超える。

illuminateの場合は生理予定日の確認機能のほか、連動したECから商品を購入できる機能や「買い忘れ防止策」として生理日に合わせてリマインドしてくれる機能などを搭載。これらを独立したアプリではなくターゲットユーザーが使い慣れたLINE上で提供する。

ウツワ代表取締役のハヤカワ五味氏の話では、予測機能はあくまでECをフォローする機能としての意味合いが強いそう。既存のアプリは妊活ユーザー向けに多様な機能を備えるものも多いが、よりシンプルに「生理の日を知りたい」というニーズに合わせて短時間でサクッと使える仕様にした。

「生理の難しい部分は悩んでいる瞬間は月に数日しかなく『次回こうしよう』と思っても忘れてしまうこと。いざそのタイミングが来るとてんやわんやしてしまうので、(生理日に合わせたリマインド機能や連動するECによって)生理前から準備できるというのがポイント」(ハヤカワ氏)

同事業のキャッシュポイントにもなるセレクトECは幅広い品揃えと商品選びをサポートするコンテンツがウリだ。扱う商品は生理用ナプキンやタンポン、月経カップなど80種類以上。ECサイト上では使用感や着用感が伝わる動画コンテンツ、生理や性の学びを深めるための記事コンテンツも掲載しユーザーの意思決定をサポートする。

「2017年の数字にはなるが生理用品のEC化率は1%未満で、ドラッグストアでの購買率が6割を超える。近くのドラッグストアに置かれているものが選択肢の全てになっていて、棚の滞在時間もすごく短くほぼノールックで購入する人もいる。様々な商品を比較した上で、人の目を気にせずに自分に合った選択肢をじっくり選べる場所を作りたい」(ハヤカワ氏)

既存のECでは商品を網羅的に扱っているものがそもそもAmazonなどごく少数のみ。ECで購入する場合もドラッグストアと同様「商品を見ただけでは実際の使い勝手がわからない」課題があるため、商品ごとに自社で使い勝手を紹介した動画を制作することで解決していきたいとのことだ。またAmazonでは3個パックでしか買えない商品を個別で購入できるようにするなど、商品のバリュエーションを増やし細かいニーズにも対応できる体制を整える。

本日時点ではベータ版ということもありミニマムな機能のみとなるが、まずは年内を目処に生理用品のサブスクリプションサービスをスタートする計画。ECの取り扱い商品も年内には100点以上まで拡大しする予定だという。

「FemTech」領域で事業拡大目指す

女性の健康や生活に関する悩みをテクノロジーで解決していく動きは「FemTech(フェムテック)」と呼ばれ、海外では近年徐々に盛り上がり始めている領域だ。生理関連だけでもD2Cブランドやサブスク型のサービスを手がけるRaelやLOLA、月経周期のトラッキングアプリを開発するClue、Glowを始め二桁億円規模の調達を実施済みのスタートアップが複数社ある。

一方で日本はこの領域でプロダクトを展開するプレイヤーや投資家がまだ少ない状況。ウツワは2015年の設立から自己資本で運営してきたが、今後は外部からの資金調達も見据えながらFemTech分野での事業拡大を目指していきたいという。

「今後女性の人口が減りマーケット規模も縮小するのではという声もあるが、女性の年収が上がれば各自が自分に対して使えるお金は増えるので、その市場には大きなビジネスチャンスがあると考えている。海外に比べると日本国内のFemTech領域へはお金が流れていないので、業界を盛り上げるという意味でもチャレンジしていきたい」(ハヤカワ氏)

もともとハヤカワ氏自身が生理に深く悩まされたというわけではないが、女性の多い会社を経営していく中で生理の価値観自体を変えていきたいという考えが以前からあったそう。大学時代の同級生がナチュラルなデザインの生理用品を卒業制作で作っていて、それを商品化したいという話を聞いたことが1つのきっかけになり、2018年5月頃からilluminateのプロジェクトが立ち上がった

当初は生理用品のOEM生産や製造工場の立ち上げ、生理用品の輸入など色々なアプローチを検討するも業界構造や薬機法など厳しい法規制などの障壁もあり苦戦。このあたりの原体験やこれまでの背景はハヤカワ氏のnoteに詳しく書かれている。

最終的には、自分たちで商品を作るのではなく国内で販売されている商品を中心に様々な選択肢を提示する「セレクトEC」の形からスタートすることを決断。並行してポップアップショップの展開やユニチャームと共同で#NoBagForMe プロジェクト(こちらはハヤカワ五味が代表として個人で参加)なども取り組んできた。

「illuminate」の事業モデルイメージ(今後の計画なども含む)

今回のプロダクトローンチ前には生理用品に関するオンラインアンケートを実施したところ、7000件近くの回答が集まったそう。「コンビニで買うと紙袋に入れられ恥ずかしいものを持ち歩いてる気分になる」「コンビニで男性店員しかいないと買いづらい」「単品で売られていないから、無限に余りが自宅に溜まっていく」などリアルな声が多数寄せられた。

「めちゃくちゃペインがあるのだけど、今まで声になってこなかった。いろいろな意見を聞いていると、そもそも生理自体について、そして既存の生理用品について知られていないことも多いことがわかった。たとえば抱えている悩みを解決してくれる商品が既にあっても、その選択肢を知らなければ検索することもできない。今まで見えてなかった選択肢を丁寧に提示することができれば、それだけでも価値を提供できると考えている」(ハヤカワ氏)

まずは明確なペインを感じているユーザーが自分に合った商品を探せる場所を目指すが、中長期的には生理自体への理解を深めてもらうための啓蒙活動やコミュニティ作りにも力を入れていく方針だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。