百貨店のリプレイス狙うギフト特化型EC「TANP」が1.2億円を調達

ギフトEC「TANP」を運営するGraciaは10月22日、複数のVCや個人投資家らを引受先とする第三者割当増資により1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金を活用してロジスティクスやマーケティングの強化を進め、プロダクトのさらなる成長を目指す計画。なお今回のラウンドに参加している投資家陣は以下の通りだ。

  • ANRI
  • マネックスベンチャーズ
  • ベンチャーユナイテッド
  • ドリームインキュベータ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • 中川綾太郎氏
  • 有川鴻哉氏
  • 河原﨑大宗氏
  • 坂本達夫氏

Graciaは2017年6月の創業。その直後にANRIとCandle代表取締役の金靖征氏から約1300万円を調達していて、今回はそれに続くシリーズAラウンドでの資金調達になるという。

特化型ECでオンライン上でも優れたギフト体験を

Graciaが手がけるTANPはギフトに特化したECサイトだ。

この領域に特化することで、誕生日や記念日、クリスマスなどの様々なシーンだけでなく、ギフトを渡したい相手の性別や年代に合わせてぴったりな商品を見つけやすい仕組みを設計。「何を贈ったらいいのかわからない」というユーザーの悩みをオンライン上で解決できる場所を目指している。

2017年9月のリリースから約1年が経った現在は約100社のメーカーとタッグを組み、取扱商品数は合計で860点を突破。Gracia代表取締役の斎藤拓泰氏の話では人気化粧品メーカーの「the body shop」や香水ブランド「JIMMY CHOO」など、知名度のあるメーカー・ブランドも徐々に増えてきているようだ。

特にクリスマスや母の日といったイベント時の利用が多いそうで、5月の母の日のピークには1日あたりの出荷数が800件を超えたという。

「特別なシーン用のギフトを買うとなると、多くの人が想起するのは百貨店。特に『何か特定なものを探している』というよりは『何かしら買いたい』というニーズに対して、オンライン上で応えられる場所がまだない。(ECというくくりでは)すでにビッグプレイヤーがいるが、自分たちはギフトに特化することで探すのが大変という悩みを解決しつつ、より優れたギフト体験を提供したいと考えている」(斎藤氏)

ギフト探しの悩みを解決するという点では、TANP上で細かい条件ごとに商品を探せるほか、LINE@を活用してチャットベースでの相談にも応じている。斎藤氏の話ではLINE@の登録者数は約6500人ほどだそう。記念日や特別なイベントに合わせて年に数回問い合わせをしてくるユーザーが多いようだ。

“良さそうな商品がオンライン上で見つかる”というのもTANPの特徴ではあるけれど、同サービスのウリはそれだけではない。斎藤氏によるとユーザーに評判がいい機能として「配送までのスピード」と「ラッピングなど独自のオプション」をあげる。

独自のロジスティクスを軸にギフトの商流を作る

TANPでは注文が入ってから最短で翌日届くような体制を構築している。シンプルながらこの点に関してはユーザーのニーズがかなりあるそうで「注文した商品が明日届くかどうか」といった問い合わせが多いという。

またラッピングなど独自のオプションも複数用意。ラッピングだけで約10種類ほどあり、それ以外にもブーケを同梱したり、段ボールの中を装飾したりといったことができる。7割くらいのユーザーが何かしらのオプションをつけていて、斎藤氏は「(ギフト探しの悩みを解決するだけでなく)配送期日やオプションといった要素を網羅していることがTANPの特徴」だと話す。

この点について課題意識を抱えているのは何もユーザー側だけではない。メーカー側もまた、同じようにギフトに関する悩みを持っているようだ。

「担当者の方と話していても、ギフトをやりたいという考えはある一方で、ギフト用のニーズに応えるためだけに自分たちでラッピングをしたり、(他の顧客よりも優先して)最短で届けるための仕組みを作ったりするのが難しいという声を聞く。双方の間に入って“ギフトの商流を作る”というのがTANPを通じてやりたいテーマだ」(斎藤氏)

このギフトの商流づくりのために、Graciaではロジスティクス周りの整備に力を入れてきた。自社で倉庫を保有し商品はそこから発送。その際に使う発送システムや在庫管理システムも独自で開発しているのだという。

特にギフトの場合は商品にさまざまなオプションがつくことが多いため「どの商品にどのオプションがつくか」を全部紐付ける必要がある。その作業に対応したシステムを自社で整えていることが、オペレーションを効率化しつつ、ユーザーのニーズに合わせたスピード感やオプションを実現できる要因にもなっているようだ。

ギフトを買う際に最初に想起してもらえるサービスへ

「ロジスティクスの強化」は今後のTANPの鍵を握るポイントであり、今回調達した資金もここに投資する計画。扱う商品の数を増やすべく倉庫を広げたり、ラッピングなどの質を改善することでサービスの拡大を目指していく。

また中長期的にはTANPに蓄積されるユーザーの購買データを活用することによって、ユーザーのギフト探しの悩みに対して適切な商品をレコメンドできるような仕組みも構築する予定だ。

Graciaのメンバー。写真前列中央が代表取締役の斎藤拓泰氏

Graciaは以前Candleで働いていた斎藤氏を含む3人の東大生によって設立されたスタートアップ。今後ECが伸びていく一方で、ギフトECの領域では「ファッションにおけるZOZOTOWN」のような巨大なプレイヤーがおらず、ユーザーの課題もあるためこの領域で事業を展開することを選んだ。

現在のユーザー層は20〜40代が中心。インターネットを普段そこまで利用していないようなユーザーも一定数いるが、そういった層のユーザーも含めて「オンライン上でギフトを買う体験」をさらに広げていくのが目標だ。

「(今回調達した資金も活用しながら)まずはギフトの領域をもっと掘り下げて、ギフト市場での第一想起の獲得を目指していきたい」(斎藤氏)

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TechCrunch Japan

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