目指すは脱ガラパゴス、DMM.com発「スマートロボット」は世界で戦えるか

DMM.comが1月27日、ロボットの販売・製造を手がける新事業「DMM.make ROBOTS」をスタートした。ロボット同士がインターネット経由でつながって成長・進歩する「スマートロボット」を普及させることで、国内ロボット産業の「脱ガラパゴス化」を図りたいという。

同日に開催された記者発表会では、「日本のお家芸が再加速する」と期待が寄せられた一方で、「何に使うか見えてこない」という冷めた見方も。果たして、スマートロボットは世界に通用するのか。

世界初のロボットキャリア事業

同社によれば、DMM.make ROBOTSは世界初のロボットキャリア事業。聞きなれない言葉だが、携帯キャリア事業をイメージするとわかりやすいかもしれない。DMM.comは通信会社のように、製品の販売やプロモーションを担当。一方、ロボット開発ベンダーは携帯端末メーカーのように、設計・開発・製造だけに従事する。いわば分業制だ。

クラウド上には、ロボットを進化させるためのIoT環境「DMMロボティクスクラウド」を構築。ここでは、ロボット向けにアプリやファームウェアを配信したり、DMM.comのコンテンツ販売も想定している。ユーザーの行動データを解析してレコメンドすることも可能。不健康な生活を送るユーザーには、ロボットが健康促進に必要な情報を伝えるようなイメージだ。



提携するロボット開発ベンチャーは富士ソフトユカイ工学プレンプロジェクトロボットゆうえんちの4社。特別タイアップ企画として、デアゴスティーニの部品付き週刊マガジンでお馴染みの「ロビ」の完成品を販売する。

DMM.comはこれらのスマートロボットを10億円分買い取り、ウェブ上の販売プラットフォームで売り出す。2015年で30億円、2017年で100億円の売り上げを目指す。

ロボット産業はビジネス視点が欠如している

DMM.comロボット事業部の岡本康広氏は、「日本に欠如しているのはビジネス視点。1社独自で開発することがほとんどで、技術連携もなかった」と、ロボット産業のガラパゴス化を指摘する。

DMM.comといえば2014年11月、東京・秋葉原に総額5億円の設備を備える、ものづくりスペース「DMM.make AKIBA」をオープンしたことが話題になったが、ロボットキャリア事業では、この場所にロボット開発ベンチャーに開放。詳細は明かされなかったが、各社が持つロボットの要素技術を集める仕組みを作ることで、イノベーションを起こせると力強く語った。

将来的に事業化した場合には、DMM.comとして出資することも視野に入れているという。


日本のお家芸が危機

「このままでは日本のお家芸が世界に追い越される」。こう危惧するのは、前述の「ロビ」や、世界で初めて国際宇宙ステーションへ打ち上げられた「キロボ」などを開発したことで知られる、ロボ・ガレージ代表取締役社長の高橋智隆氏だ。これまでのロボット研究はビジネスを見据えてなかったと言い、「世界の流れを考えずに、研究者の興味のあるものしか作ってこなかった」と問題点を指摘する。

日本とロボット開発で火花を散らす米国に目を向けると、シリコンバレーではビジネスマインドを持った起業家たちが次々とロボット業界に参入。ネット業界の巨人も、こうしたロボットベンチャーを買いあさってきた。

例えばGoogleは2013年6月、人型ロボットを手がける、東京大学発の「SCHAFT(シャフト)」を買収したほか、映画「ゼロ・グラビティ」の特殊撮影でも使われたロボットアームを開発するBot & Dolly、4足歩行ロボ「BigDog」を手がけるBoston Dynamicsといったロボット開発ベンチャーを次々と傘下に収めている。

日本から世界で通用するロボットを生み出すためには、それなりの投資が欠かせないと高橋氏。過去数年のロボット業界は「どこかがリスクを背負ってくれるのを待っていた」とみる。DMM.comが開始したロボットキャリア事業については「リスク承知で参入してくれた」と高く評価。日本の技術と知を集めることで、日本のお家芸であったロボットが再び加速するのではと期待感を表した。

一方で冷めた見方も

脱ガラパゴス化を目指すロボットキャリア事業に期待が高まる一方で、冷めた見方もある。1月27日に開催された記者発表会にゲスト参加した堀江貴文氏は、「ぶっちゃけ何に使うか見えてこない。ロボットで生活が変わるには、結構時間がかかりそう」とバッサリ。スマートロボットを購入するのは、「エンタメに興味がある物好きぐらい」という見解だ。

初年度に30億円の売上目標を掲げるDMM.comだが、これは現実的な数字なのか。この点について、DMM.comロボット事業部の岡本氏に単調直入に聞いてみると、「アーリーアダプター層が中心となるが、一部のロボットはファミリー向けにも十分訴求できる」と自信をのぞかせている。

初年度に販売するのは、人工知能搭載で会話ができる「Palmi」(29万8000円)、外出先から伝言ができる「BOCCO(ボッコ)」(2万9000円)、運動神経が売りという「PLEN.D(プレン・ディー)」(16万8000円)、ダンシングロボット「プリメイドAI」(9万9000円)の4種類。

記者発表会では製品の体験会が開催され、実際にいくつかのロボットを見せてもらったので、動画を貼っておこう。


投稿者:

TechCrunch Japan

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