真菌建材から形を変えるロボット群まで、これがNASAの「野心的」最新プロジェクトだ

NASA Innovative Advanced Concepts program(NASA革新的先進コンセプトプログラム)は、おそらく馬鹿げているように聞こえるアイデアに、国家予算が使われていることを観察できる最適な場所だ。なぜならこのプログラムのマネージャーたちは、実現できたら本当に素晴らしい大風呂敷を狙っているからだ。

採択された研究者たちは約12万5000ドルと9ヵ月を与えられ「フェーズI」で自分たちのアイデアの実現に取り組む。これは気の遠くなるような作業か、ひたすら技術的に困難なものである。もし重要な進展が見られたり、そのコンセプトが有望であるとわかった場合には、「フェーズII」に進むことができて、ここではNASAの判断で、50万ドルまでの投資を受けることができる。

今年は、NIACプログラム担当者のJason Derlethによれば「特に競争は激烈でした。230以上の提案書が届き、その中からわずか25だけが採択されたのです」ということだ。それなりの数のフェーズII採択も行われた(おそらく昨年の採択者の何人かを覚えている読者もいるだろう)。

それらの多くをここに集め、できる限りのわかりやすい説明を添えてみた。NASAが考える未来の宇宙探索がどのようなものかを眺めてみて欲しい。

1:大気試験船の群


ただ1機の宇宙船を、厳しい大気の中を降下させて、ただ1箇所の測定値を集めるのではなく、それを数十の機体に分けて、数百マイルの範囲にわたってセンサーをばら撒けば良いのではないだろうか?これがLofted Environmental and Atmospheric VEnus Sensorsプロジェクトの背後にあるアイデアだ。このプロジェクトでは、降下中にお互いに協調しながら、より多くのデータを収集することにできる軽量ユニットの開発が目指されている。

2:小惑星の掘削

小惑星の中には何があるだろう?まだ誰も知らない。そしてそれを調査するためには大変な努力が必要とされる。高価な宇宙弾丸を作って撃ち込み、そのとき飛び散るものを観察する代わりに、隕石を使えばいいのではないだろうか?もともとそれらは宇宙の弾丸なのだし ―― それらを小惑星に撃ち込んでみれば

宇宙船から監視することなく、どうやって隕石を小惑星にぶつけるかが課題だが。

3:巨大な自己組立型望遠鏡

望遠鏡は一般的に、ひたすら大きなものが求められる一方である。しかし、本当に巨大なものを軌道に乗せることは簡単な話ではない。そして何かが上手く行かなければ、全てを廃棄することになりかねない。

その代わりに、ある研究者たちが提案するのは、数百もしくは数千の同一の宇宙船を打ち上げ、お互いを発見させながら、1つの巨大な面を構築させようというものだ。もし1つが壊れた場合には、他のユニットを送り込んでその場所を置き換えるのだ!

4:宇宙真菌

見知らぬ星の上で、居住区や作業区を作り上げることは、困難な作業だ。おそらく宇宙に馴化(じゅんか:生物が環境に慣れて変化すること)した様々な真菌類が、私たちを助けてくれることだろう。

とあるチームが、非常に強靭で、耐火性があり、絶縁性であり、成長させることが容易ないくつかの菌糸型素材を発見した。もちろん、それらが火星で生育可能かどうかはまだ検証されていない。

5:軌道上の小さなデブリ(破片)を検出する

軌道上のデブリ(破片)はその付近にいるもの全てにとって危険な代物だ。しかし小さくて動きの速い物体を検出することは困難である。このプロジェクトは、そのような物体がプラズマの中を飛行する際の一種の航跡を検出することを狙っている。高度400から1600キロメートルにある物体を「100個以下のキューブサット」を使ってマッピングするのだ。話を聞くだけなら簡単そうだ!

6:粒子ビームを用いた宇宙船の推進

巨大なレーザーを使用して宇宙船を推進しようという考えは、使われるレーザーの幅が数キロメートルに及ぶという事実を除けば、実用的である。

この非常に興味深いプロジェクトは、基本的にレーザービームを中性粒子の流れと絡ませようというものだ。粒子は光子の経路を限定する導波路効果を生み出し、光子は粒子が引き付けられる高エネルギーコアを生み出す。この「ソリトン」ビームはレーザー単独よりも細く強力で、宇宙船を光速の1/10まで加速することができる。

またクールな名前も付けられている。PROCSIMA(Photon-paRticle Optically Coupled Soliton Interstellar Mission Accelerator):光結合型光子粒子ソリトン恒星間ミッション加速装置だ。

7:「仮想」衛星ネットワークを展開する

これは非常に巧妙なプロジェクトである。本質的には、現在互いに数百フィート以内の場所に、例えば200機の衛星を配置することは不可能である。しかしそのような配置を行うことができれば、とても興味深いデータを収集することが可能だろう。

そこで、実際にそのような配置を行う代わりに、R-MXAS(Rotary Motion Extended Array Synthesis)プロジェクトは、すべてのセンサーを円筒状の衛星上に配置し、その衛星を「転がしながら」地球に対する動きと同期させて、移動しながらさまざまなセンサーを向ける。

麺棒に凹凸が刻まれたデザインを想像して欲しい。生地に沿ってそれを転がすことで、円筒上のパターンが2次元に展開される。それがここでの基本アイデアだ。

8:形を変えるロボット探索機

地球のような複雑な表面環境では、飛行、水泳、歩行、転がりなどの多くの運動形態を必要とする。同じことはエウロパ(木星の衛星)、火星、その他の目的地でも言うことができる。

Shapeshifterは、可能な限り多くの移動形態を持つロボットプラットフォームの構築を目指している。それはボールのように転がり、ドローンとして飛んだりホバリングしたり、魚雷のように水中を進み、それでいて「最小限のデザインで非常にシンプル」なものになる予定だ。

これは、依然としてSFの分野に片足を突っ込んだような話だが、私はこうしたものが拡大していくことを想像することが大好きだ。

9:蒸気式地表ホッパー

蒸気は19世紀と20世紀にはとても役に立った。それを21世紀に使ってはいけない理由はないだろう。

この小さな物体は、海のある世界に投入される、親着陸船がホッパーに電力と氷を供給する。ホッパーはその氷を蒸気に変換し、周囲へホップするための推進力を生み出す、これによって障害物を気にする必要はなくなる。彼らはこれを「完全地形非認識方式」(complete terrain agnosticism)と呼んでいる。

略語もぴったりだ。SPARROW (Steam Propelled Autonomous Retrieval Robot for Ocean Worlds):海洋世界のための蒸気推進型自律回収ロボットである(注:sparrow にはスズメという意味がある)。

10:反物質駆動装置

このコンセプトは、かつて存在していた「非現実的な量の反物質」を利用するという馬鹿げた考えを捨て去り、その代わりに「放射性同位元素陽電子触媒融合推進」を利用するというものだ、要するに反物質を生成しながら進むらしい。

まあ、いいんじゃない?

11:自律生活支援ロボット

新しい宇宙服たちは、背中に巨大な生命維持システムを装着する必要があるためにクールさが台無しになっている。それは外見を台無しにするだけでなく、嵩張るし重いものだ。

その代わりに、もし背中のユニットが、そばにいる犬のように横を一緒に移動してくれるとしたらどうだろう?まあ良いかも。とはいえ、露出したパイプが単一障害点にみえるので、私にはデザインの欠陥のように思えてならない。

12:火星フラッパー

このための技術は、それほど多くは存在してはいないものの、多くの点で簡単なもののように思える。ローバーまたはランダーを基地として、遠隔地の調査や標本採取のために飛行する小さな翼を持つドローンたちだ。

Marsbeeプロジェクトでは、特に火星の大気中で飛行する羽ばたき(フラッパー)ロボットを狙っている。チームの一部は既に地球上で飛行できるハチドリサイズの羽ばたきロボットを作成している。なので実現可能性が全くないわけではない。

13:小惑星を削り取るソフトロボット

これらの配備可能なロボットは、単一の高価な着陸装置を小惑星の表面に送り込むというリスキーなアプローチに対する代替手段だ。そのソフトな外殻は、着地を容易にし、地形にそって這って移動し、最終的にはフジツボのように表面をしっかりと掴むことを可能にする。

一旦固定されると、サンプリング機構が物質を表面から「削り取り」それらを待機中の宇宙船に送ることができる。

私はこれを昨年から覚えているが、デザインは少々改良されて、一種のパンケーキや虫のようなものから、花のようなものに進化している。

14:キロメートル幅の宇宙望遠鏡

このプロジェクトは、そのような望遠鏡があれば手に入るであろう様々な便益を追求することが目的で、キロメートル幅の望遠鏡を構築することそのものが目的ではない。便益のいくつかは明白だが、他のものはそうではなく、チームは研究室でそれをあれこれ研究している最中だ。

彼らはそれがどのように構築できるかも研究しているが、それはまだまだ遠い先の話である。彼らのデータは、キロメートル幅であろうとなかろうと、次世代宇宙望遠鏡の製作に役立つことだろう。

15:恒星間移動のためのレーザー推進

これも昨年から続くもう一つのフェーズIであり、この推進方法の難しさを例証している。良いニュース:レーザーの幅は10キロメートルに及ぶ必要はない…たったの2キロで大丈夫だ。悪いニュース:100メガワットの出力では不十分だ。必要なのは400メガワットである。

それでも、イオンエンジンを併用して移動するレーザー駆動の宇宙船のアイデアは有望であり、必要とされる高効率(50%超)の太陽電池は、それ自身興味深い研究プロジェクトである。

16:メガドライブ

いや、これはSEGAのものではない。これはMach Effect Gravity Assist driveシステムである。これは「加速度と内部エネルギーの変化が同時に起こる際の、物体の静止質量の一時的な変化」を利用する。私たちは、このシステムが「技術的に信頼できる物理学」に基づいていると確信している。。

これは(Emdriveのような)どちらかと言えば骨折り損の研究のように聞こえるかもしれない、しかしそれはこの種の研究につきものなのだ。そしてフェーズⅡも選択されたという事実は、それが何らかの成果を得る見込みがあることを意味している。

17:宇宙線からの宇宙船の保護

長期にわたる宇宙旅行の主な問題の1つは、放射線被曝である。もちろん、鉛やその他の遮蔽材を使用することはできるが、完全にクリーンなものにしたい場合には、有害な放射線を能動的に排除するシステムを最初から作る必要がある。それがこのプロジェクトの基本アイデアである。

本質的にはそれは巨大な環状マグネットであり、「銀河の宇宙線の大部分を偏向させる並外れた能力を持ち」、一次衝突から発生する二次粒子への対処の必要をなくすものである。

いやちょっと待った、実はまだ続きがある!磁気遮蔽は、物理的な遮蔽が少なくて済み、船体自体の必要質量が減少することを意味するのだ。これは超有望な技術なのだ。

18:自己給油式プローブ

太陽系の中で、木星以遠の惑星に到達することは、宇宙的尺度で言えば比較的簡単な仕事である。しかし、そこでサンプリングを行い、そのサンプルを地球に持ち帰ることは難しい!到着時に減速しなければならないだけでなく、帰る際には逆方向に加速しなければならないからだ。このためには燃料が必要だ。

The Nano Icy Moons Propellant Harvester(NIMPH)は、惑星や衛星の表面に着陸機を送り、地球に帰るために十分な燃料を作るために必要な材料を集める。これはまた、最初の打ち上げ質量を減らし、ミッションを行いやすくする。

19:海王星のトリトンで跳ね回る

トリトンは海王星の最大かつ奇妙な衛星である。文字通り、太陽系内の他のすべての衛星とは異なり、それは惑星の自転の反対方向に公転している。その表面は奇妙で、滑らかな部分と、凸凹した部分が交互になっており、その起源は冥王星に似たものだと考えられている。

その探査のために提案された着陸船は、凍った窒素を動力に使って飛び跳ねながら、その衛星の荒れた地形の上を移動することを狙っている。

20:太陽系外惑星の太陽重力レンズ画像

遥か遠方の太陽系外惑星を見ることは困難である。しばしばそれらを直接見るのではなく、その惑星の従属する恒星からの光を反射した光によって間接的に見ることになる。このプロジェクトは、太陽重力レンズの概念を利用することによって、より直接的なイメージングを可能にすることを目指している。

基本的には、太陽系外惑星から届き、私たちの太陽の周りで曲げられた非常に少量の光でも、それをモデル化することで一種の3D写像を作り出して見ることが可能なのである。

それはとても野心的なことのように聞こえるかも知れないが、もし物理学によって裏付けの計算が行われれば、30パーセク離れた太陽系外惑星のメガピクセルサイズの画像を得ることができるだろう。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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