知識なしでも最短1分で動画作成、「RICHKA」が2.1億円を調達

SaaS型の動画生成ツール「RICHKA(リチカ)」を運営するカクテルメイクは5月14日、ベンチャーキャピタルのNOWなど6社を引受先とする第三者割当増資により総額で2.1億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達はカクテルメイクにとって昨年9月にNOWや佐藤裕介氏などから5000万円を調達して以来のラウンドで、シリーズAに該当するもの。需要が高まっている動画広告用途を軸に、5G時代到来に向けてプロダクトの機能拡充やパートナー企業との連携、人材採用など組織基盤の強化を通じてさらなる事業拡大を目指す。

なおシリーズAに参加した投資家陣は以下の通りだ。

  • NOW
  • みずほキャピタル
  • 新生企業投資
  • ドリームインキュベータ
  • マネックスベンチャーズ
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ

素材とテキストのみでサクッと動画生成

RICHKAは専門知識がないユーザーでもパフォーマンスの高い動画を作れる動画生成サービスだ。

必要なのはシーンに合わせて素材(動画や画像)とテキストを入れるだけ。動画の制作経験がなくても、ドラッグ&ドロップで用意した素材を配置して、表示させたいテキストを入力すればブラウザ上でスピーディーに動画が完成する。

素材についてはRICHKA上にある100万点以上の動画や画像素材を使うことも可能。素材を選択すると画像認識システムを通じて最適な切り抜き位置を判定するなど、AIを用いた制作サポート機能も搭載されている。

細かいポイントはいろいろとあれど、RICHKAの大きな特徴となっているのがバラエティに富んだ動画フォーマットだ。

約100人のクリエイターが毎月100種類以上の動画フォーマットを作成していて、ユーザーはその中から目的や業種、配信先などに合わせて最適なものを選び動画を作る。

現在用意されているフォーマットはだいたい1000種類ほど。RICHKAで蓄積されたナレッジを反映してどんどん新しいものが追加される仕組みが構築されていて、これが高いパフォーマンスを実現することにも繋がっているという。

この領域では昨年9月にリリースされた「VIDEO BRAIN」のように動画制作をAIで自動化するようなプロダクトも登場してきているが、今のところRICHKAではユーザーがツールを活用して自身で動画を作成する。AIは一部の工程を補助する位置付けだ。

この点についてカクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏に話を聞いてみたところ「自分たちもAIで全自動化するような実験にも取り組んでみたが(現段階では)多様なニーズをAIだけで捌くのは難しいと判断した」結果、今の仕組みで提供しているという。

「ユーザーの視聴態度はSNSや年齢層によっても異なり、ものすごく細分化される。ただ広告という数秒〜長くても30秒くらいの尺の中で、かつ業種業態が限られているという条件下であれば自動化できる余地はある。それも見据えて今はフォーマットの種類を増やしている段階。トレンド自体は人が作るものなので、そこはクリエイターに担ってもらうことは変わらない」(松尾氏)

今後はフォーマットのレコメンドなどにも力を入れていく計画。サービスのサービスの業種業態や特徴を入れたら適切なものを推薦したり、もう一歩進んで出来上がりの状態まで提示するような仕組みも検討しているという。

動画広告用途を中心に累計200社以上が導入

松尾氏によると、RICHKAはこれまでで累計200社以上に導入され月間の動画生成数は5000本を突破。トータルで生成された動画数は10万本を超えたそうだ。

2018年9月の調達時に話を聞いた際は「動画広告用のクリエイティブ、Webメディアやプラットフォームでの利用、その他の用途がそれぞれ3分の1ずつ」ということだったけれど、直近では動画広告用途が増加。現在は全体の約7割を占める。

「広告事業者や事業会社において高速で(動画クリエイティブ作成の)PDCAサイクルを回したいという声がものすごく増えてきている。特に以前に比べて広告代理店からの引き合いが強くなってきた。クライアントからの動画広告のニーズを無視できない状況である一方で、制作会社に頼るとコスト感が合わなかったり、PDCAを回すスピードが遅くなってしまったりする」(松尾氏)

そこでRICHKAの登場というわけだ。RICHKAの場合は動画制作経験のない広告運用者でも手軽に動画を作ることが可能。料金も月額10万円からの定額モデルのため、コストを抑えながら何本もの動画を試すこともできる。

実際RICHKAのユーザーの9割ほどは動画を作ったことが一度もないような人たちだが、上述した機能とフォーマットの助けを借りることで、成果を出しているケースも多いようだ。

「フォーマットを介して各業界や用途ごとに今の動画のトレンドを知れるのも特徴。(各フォーマットの)パフォーマンスなどを把握した上で動画を作れるため、ゼロから自分でナレッジを貯めていくよりも効率が良い」(松尾氏)

2月には広告代理店向けの「RICHKA for Agency」をリリース。サービス上の動画フォーマットを営業資料として持ち歩き、自社のオリジナルWebカタログ(自社のロゴを入れることが可能)として使えるような仕組みも整えた。

カクテルメイクでは今回調達した資金を用いてRICHKAのさらなる機能拡張やマーケティングの強化、人材採用などを進めていく計画。培ってきたノウハウやデータを活かしながら、5Gの本格的な商用化が見込まれる2020年末までに、ハイクオリティでリッチな動画を100万本生成することを目指すという。

投稿者:

TechCrunch Japan

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