社員の能力開発が急務な知識経済の時代には教育のNetflixが必要だ

[筆者: Rob Harles, Karl Mehta]

・Rob HarlesはAccenture Interactiveのマネージングディレクター。

・Karl MehtaはEdCast, Inc.のファウンダーでCEO、Code For IndiaのCEOでもある。

毎日46億点の新しいコンテンツが生産されているのだから、私たちの知識への飢えはとっくに満たされている、と思えるかもしれないが、しかし情報の生産と流通は消費の機会や分布とパラレルではなく、それは情報をただそこへ置けば解決する問題でもない。

私たちは情報の中で溺れ死のうとしているが、しかし同時に、私たちの生産性を本当に高め、コラボレーションとイノベーションを促進してくれる知識には飢えている。

役に立つ知識が必要になると、私たちは広くWebを検索したり、口コミでエキスパートを見つけたり、設計のお粗末な会社の文書共有システムを探しまくったりする。どの方法も、効率が悪い。

必要な知識を見つけるための、もっと良い方法があるべきだ。そのような方法はユーザーのニーズに適応し、真の対話と強力な学習体験を通じて、継続的に知識の適切な推奨や提案ができるソリューションでなければならない。

エンターテイメント産業に倣って学習をもっと容易にする

NetflixSpotifyRedditのような、人力または自動化されたキュレーターのいるコンテンツアプリケーションが登場するまでは、視たい/聴きたい番組や音楽、ニュースなどのメディアを見つけるために、いくつものソースを訪ねる必要があった。しかし今では、自分が消費したいエンターテイメントやメディアを容易に発見でき、それらはユーザーの関心に基づいて個人化(パーソナライズ)されている。

多くの点で今のエンターテイメントサービスのやり方は、知識管理や学習開発のアプリケーションにも適した方式だ。

学習と知識の発達を支援する産業は、教育のアクセス性と適切性を高めるプラットホームであるべきだ。それは、知識の吸収と普及拡散が円滑にシームレスに行える場でなければならない。Netflixが、求めるエンターテイメントをすぐ届けてくれるように、私たちが必要とする知識と学習は、必要なところへ、必要なときに、簡単迅速に届くべきだ。

幸いにも、それを実現するテクノロジーが育ちつつある。人工知能(AI)と機械学習を利用するそれらのソリューションは、学習の過程とそのためのコンテンツを、集積、キュレート、そして個人化できる。

企業の成功は優れた学習文化を持つことにかかっている

“学習する能力と、学習を迅速にアクションに翻訳する能力は、企業に最強の競争力をもたらす”、GEの元CEO Jack Welchはそう言った。

データを見ると、Welchが正しいことが分かる。Institute of Corporate Productivity (I4CP)のCEO Kevin Oakesによると、業績の良い企業では、そうでない企業に比べて、社員たちが自分の獲得した知識を4倍多く同僚と共有している

重要なのは、雇用者が学習の文化を作ることだ。学習の文化(learning culture)とは、その中で知識がもっと自由に獲得され、吸収され、交換される社風だ。それを実現するためには、いくつかの障害を克服しなければならない:

  • 社内的には、いろんな物事のエキスパート(subject matter experts, SMEs)がいて、その人たちの心の中に知識がある。そんなエキスパートは、日頃の評判や担当業務から容易に見つけることができる。そして、そんな社内的エキスパートが持つ重要な知識を素早く明快に公開し、社内でその知識を必要とする者全員が共有できるための、場や方法が必要である。
  • 会社の外には、コンテンツが至るところにあるが、どのコンテンツが良質で、権威があり、適切であるか分からない場合がある。したがって、適切で有益な(そして安全な)外部コンテンツを集めて、社員たちがそれを消費できるための仕組みを作る必要がある。

これらの社内的および社外的なソリューションでとくに重要なのは、ただ単に学習のためのコンテンツを集めて、キュレートして、カスタマイズするだけのテクノロジーを採用するのではなく、それはまた、学習と共有のためのコンテンツを手早く作れるテクノロジーでなければならない。効率的な学習文化の構築のためには、それが重要だ。

これが知識のNetflixだ

AIを用いる新しいプラットホームは、知識労働者が必要とするコンテンツを、適切なタイミングで届ける。そういう理想的な学習と知識開発のためのソリューションは、とくに次の項目を重視する:

  • 集積: 適切な情報を一箇所に集めること。企業の学習管理システム(Learning Management System, LMS)やイントラネット、そして外部のリソースなどなどから。
  • キュレーション: AIと機械学習を利用して、そのときの状況に合った適切なコンテンツを適切なタイミングでチームにもたらすこと。
  • 個人化: 学習用コンテンツのリコメンデーションを、さまざまな要素の分析に基づいて、個人の特性やニーズに合った形で行うこと。
  • 創造: 多くの中小企業が持っている言葉にならない知識を、解放すること。そのための最良の方法は、社内にコンテンツライブラリを作ってコンテンツを迅速かつ便利に供給することだ。

次の10〜12年間で、人間の今の仕事の半分はなくなる、と言われている。だからこそ、学習の機会とその消化しやすい方法や仕組みを、すべての社員に提供することが、きわめて重要なのだ。

それはいわば、社内における知識の民主化だ。個々の学習機会が十分に個人化され、また社内的および社外的なコンテンツのアクセス性を増し、そして社員たちに成長のためのスキルと知識を与える取り組みを、強化しよう。それは、これまでの企業では、時間がない、人がいない、とかいって、おろそかにされていた分野だ。でも今や、どの企業でも、社員の能力開発は最重要の課題だ。

時間がなくても、人がいなくても、今ではAIと機械学習が助けてくれる。社員を入れ替えるのではなく、今いる社員の学習を前進させ、彼らの明日のキャリアパスを築いていける。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

投稿者:

TechCrunch Japan

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