社外の専属経理チームに業務を丸投げできる「バーチャル経理アシスタント」、メリービズがリリース

「担当者がなかなか定着しない」「担当者によってスキルのバラつきが大きい」「繁忙期と閑散期の差が大きく、適正な体制を整えることが難しい」――このような”経理業務の課題”は多くの企業に共通する。

この課題をオンライン上に専属の経理チームを持つことで解決できないか、そのようなアプローチをしているのが経理代行サービスを提供するメリービズだ。同社は9月14日、企業が経理・会計業務をリモートの経理アシスタントチームに依頼できる「バーチャル経理アシスタント」をリリースした。

オンライン上でアシスタントに仕事を依頼できるサービスには「CasterBiz」やクラウドワークスの「ビズアシスタント オンライン」もあるが、バーチャル経理アシスタントでは経理業務に特化。メリービズ代表取締役の工藤博樹氏は「単発のタスクを依頼するというよりは、専門スタッフに経理業務を任せるとイメージしてもらうとわかりやすい。個々の企業のルールに合わせ、業務のプロセスを作るところから一緒にやるのが特徴」だという。

バーチャル経理アシスタントには簿記2級以上、経理経験3年以上という条件をクリアしたスタッフのみが在籍しており、リモートで経費精算や売上集計、収支表の作成といった幅広い経理業務をカバーする。個別のニーズや社内独自のルールにも対応し、コスト削減や社内経理スタッフの負担削減、全体の作業スピード向上に活用できる。

専属のリモートチームが、経理業務を丸ごと請け負う

メリービズでは今まで経理書類の入力代行サービスを提供してきた。これはレシートなどの経理書類をメリービズに送れば、同社に登録するスタッフが仕訳入力を代行してくれるというもの。経理の知識があるスタッフという人力に、システムのチェックも組み合わせることで品質を担保。上場企業を含め400社以上が導入している。

このサービスはメリービズのルールに沿って機械的に仕訳入力をすることで、現場の負担を削減する仕組みだった。一方で今回リリースしたバーチャル経理アシスタントは、対応できる業務の幅が広がり要望に合わせてカスマイズできる点が特徴だ。

「導入企業からは仕訳入力以外の業務も任せられたらという要望をいただいていた。バーチャル経理アシスタントではリモートでやれる経理業務には全て対応する。質問や要望にもすぐ返答があるといったように、隣に専属の経理アシスタントがいるような体験を提供したい」(工藤氏)

左が以前から提供する入力代行サービス、右が新たにリリースしたバーチャル経理アシスタント。既存の入力代行サービスも今回「ロボット経理」へ名称の変更を行っている。

経理の現場では冒頭で触れたような課題が生じていて、企業の悩みの種になっている。工藤氏によるとその原因の1つが「経理と人のミスマッチ」だという。

「経理は製造業のように仕事を細かく分解できる。その中には日付入力など専門知識がいらないものもあれば、月次決算など経理の知識と事業への理解が必要なものもある。今問題となっているのは、スキルのある人が単純な入力作業に追われたり、経験の不足している人に高度な作業を要求してしまっていること。これがスタッフの負担となり担当者が定着しづらい原因にもなっているが、コストの問題で経理スタッフの定員を増やすことも難しいというのが現状だ」(工藤氏)

そこで人手が必要になった時に、経理スキルのあるスタッフへ入力代行以外の業務も依頼でき、採用コストも抑えられるバーチャル経理アシスタントのニーズを再確認したそうだ。構想自体は以前からあったもののオペレーションの構築が簡単ではなく、ようやく体制が整いリリースに至った。

「業界や企業ごとにルールが異なるのはもちろん、大企業だと部署やプロジェクトによってもやり方が違う場合がある。顧客のルールを把握した上で、各業務の判断基準をどのように標準化していくのか。人力とAIを組み合わせて成り立つ仕組みなので、システムの設計も含めて時間をかけて作りこんだ」(工藤氏)

バーチャル経理アシスタントでは契約前にカウンセリングと1ヶ月のトライアル期間を設けている。この期間内で顧客のルールを把握し、オペレーションに落としこむことが重要なのだそうだ。

約半年前からベータ版の提供を開始していて、約300店舗を展開する飲食店では翌月15営業日までかかっていた月次決算が5営業日でできるようになった。従来は社内の経理スタッフ4名で担当していが、現在は1名とバーチャル経理アシスタントのみ。他の3名は本来やりたかった経営企画の仕事に時間を使えているという。

ビジネスインフラを構築し経理の負担削減へ

今後メリービズではビジネスインフラを作り、企業内での経理業務の負担を削減することを目指していく。

「今はほとんどの企業が社内で経理業務を行っている。これは例えるなら日本全国の家が個々で発電をしているようなもの。インフラが整備されて個々で発電をせずに済んでいるように、経理機能をインフラとして提供することで、企業の経理スタッフが本来やりたかったことにもっと時間を注げるようにしていきたい」(工藤氏)

直近ではバーチャル経理アシスタントの基盤を整えることに注力しつつ、将来的には社労士と組んで労務業務のサポートするなどサービスの横展開や、社内に蓄積された会計データを活用した事業も検討していくという。

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TechCrunch Japan

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