神戸から世界へ、国連調達を目指すスタートアップ育成拠点が2020年夏に神戸上陸

兵庫県と神戸市は11月28日、国連の機関であるUNOPS(United Nations Office for Project Services、国連プロジェクトサービス機関)との間で、テクノロジーを活用してSDGs(持続可能な開発目標)上の課題解決を目指すグローバルイノベーションセンター(GIC)の開設に向け、基本合意書(MOU)を締結した。

写真に向かって左から、グレテ・ファレモ国連事務次長兼UNOPS事務局長、久元喜造神戸市長

GICの神戸拠点は2020年夏頃に神戸市内に開設される予定で、SDGs上の課題に基づき入居期間1年間の条件で入居者を公募する。一定の選考基準にて毎年約15社を選定。3か月ごとに目標を立てて達成度合いを評価し、年間5社程度を国連調達へ参加させることを目標とする。なおGICの拠点としては約300平方mのコワーキングスペースが必須となるそうで、神戸市では現在、既存の建物を前提に候補地を策定中とのこと。

UNOPSは、フィンランド・ヘルシンキで開始されたSlush Helsinki 2019で、今回の取り組みについて講演した

UNOPSは、デンマーク・コペンハーゲンに本部を置く、プロジェクトサービス(事業運営・実施)に特化した国連機関。世界80か国以上で毎年1000件以上の援助事業を実施している。通常資金(コア予算)に対して各国政府から資金提供を受けず、事業運営の実施のみですべての経費をまかなう完全独立採算の機関で、ほかの国連機関や国際開発金融機関、援助国および被援助国政府などからの依頼に基づき、援助事業のプロジェクト推進を進めている。具体的には、アフガニスタンでの道路舗装や太陽光発電を利用した街灯の敷設、ヨルダン北部では老朽化した配水管を修復して漏水を削減する事業などを進めた。

神戸市は、米国シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタルである500 Startupsと連携したアクセラレーションプログラム「500 KOBE ACCELERATOR」や、スタートアップと協働する行政のオープンイノベーション施策「Urban Innovation KOBE」、インキュベーション拠点として「起業プラザひょうご」の運営など、さまざまなスタートアップ支援策を実施してきた経緯がある。このような神戸の取り組みが評価されたほか、誘致に向けて神戸市が迅速に対応したことで、今回アジア初のGICの開設が決まったとのこと。

スウェーデンのGIC施設

なおGICは神戸が3拠点目となり、すでに2018年1月にカリブ海東部の小アンティル諸島にあるアンティグア・バブーダ、2019年10月に本部のデンマークに隣国であるスウェーデンに開設している。既存2施設については、現在入居するスタートアップに向けた課題策定を進めているそうだ。今後は発展途上国を中心にGICの設置を進めていく予定で、すでにモンテネグロ、チュニジアへの設置も決まっている。

前述したように、GICに入居できるのはSDGs上の課題解決を目指せるスタートアップ。つまり世界で通用するサービスやテクノロジーを開発している企業に限られる。となると、食料や物流、医療、教育、インフラ、通貨などの問題を解決するサービスやテクノロジーを有する企業にチャンスがありそうだ。

ちなみに関西には、食材表示の絵文字を開発するフードピクト、低コストでIoTシステムを構築できるPalette IoTを開発するMomo、衛星データと農業データを活用して農業を最適化するアプリケーションを開発するSagri、コオロギ由来のプロテインバーを開発するバグモ、遠隔集中治療支援システムを開発するT-ICUなどのスタートアップがある。神戸市としては、GICの開設によってこれらのスタートアップはもちろん、国内やアジアのスタートアップが神戸を拠点として国連調達を目指して活動することに大きな期待を寄せているようだ。

現在日本では、最初期のスタートアップを支援するエンジェル投資家やシード・アーリーのスタートアップを支援するベンチャーキャピタルが東京に集中しており、地方拠点のスタートアップがそのコミュニティに早期から参入するのは距離的な問題もありなかなか難しい。地方都市を拠点とする資金のある企業にとっても、スタートアップとの接点が東京に比べてまだまだ少ないのが現状だ。GICは開かれた施設になるとのことで、神戸市としては定期的なGICオープンファシリティDayの開催を通じて、地元企業への働きかけも進めていきたいとしている。

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TechCrunch Japan

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