私たちがあなたの会社に投資しない11の理由

Close-Up Of Pencil Crossing On Checklist

【編集部注】著者のPhil Nadel氏はBarbara Corcoran Venture Partnersの共同創業者でディレクター。

ほとんどのVCと同じように、私たちは毎週しばしば数十件に及ぶ案件をレビューする。私たちは、私たちの一般的な投資基準(例えば業界、ステージ、モデル)に適合しないものを、素早く排除することができるフィルターを開発した。

この初期選考プロセスを生き残った案件は、更なる精査と適性評価の対象となる。このプロセスは様々な観点を含んでいる。財務諸表と収益予測;創業者、顧客、他の投資家との議論;その会社、製品、そして業界に関連するサードパーティ情報のレビューなどだ。このプロセスの様々な段階で、企業は更なる考慮から除外されていき、最後に、残されたレビュー対象の少ない割合の案件に対して、最終的な投資を行うのである。

ある会社に投資しないことを決定するとき、私たちは常に創業者たちに、不採用の決定の理由を説明するための時間を設けている。この記事の目的は、私たちが企業に投資しない決定をした主要な11の理由についてのレビューを提供し、これからの創業者の方々の資金の調達のチャンスを向上させることである。

透明性/率直さの欠如。 私たちは創業者が率直ではない場合には、直ちに興味を失う。ベンチャー投資は信頼関係に基づいているのだ;不透明であることは関係に対する不吉の始まりである。

占有性/防御性の欠如。 もし企業が、潜在的な競合相手に対抗するための独自性を占有していない場合、その成功はやがて没落に繋がる。

これが何を意味するのか?堀がなければ、会社の成功は簡単に模倣されてしまう。成功すればするほど、より多くの競合を引き寄せてしまうのだ。しかしもし、その会社が秘密のソースを持っていたなら ば ‐ 技術、プロセス、知識、関係、その他などが含まれる – 持続的な成長のオッズは遥かに高くなる。先発であることの利点は、初期の段階では有用だが、それは長期的には通常あまり助けにはならない(例えばMySpace)。

実績がありスケーラブルな有償マーケティングチャネルの欠如。 私たちは、当社の資本を収益成長の燃料として使うことができる企業に投資することを好む。もし対象企業がまだ、スケーラブルでコスト効率の高いマーケティングチャネルを見つけていない場合には、それらを見つけるための実験とテストに私たちの資金を燃料として使うことになりがちだ。

私たちは、実績あるチャネルを拡大するために私たちの投資を使用できるように、少なくとも既にそうした初期テストを十分に行っている企業に投資することを好む。有償顧客の獲得を心の底から理解していて、私たちの成長に関する質問に「グロースハッカーを雇いますから」と答えない創業者たちに、私たちは強く惹かれる。

自身の主要業績評価指標(KPI)を知らない。 私たちは創業者によるその企業自身のKPIに対する知識の深さと、会社の成功との間には、直接的な相関関係があることを発見した。

私たちは、創業者がその会社に全てを捧げていることを確認したい。

まず、創業者たちは彼らのビジネスに、どの指標が重要であるかの理解を示さなければならない。次に、彼らはそれらのメトリックスを適切に測定し、計算していることを示さなければならない。最後に、彼らは各KPIに影響を与えるにはどのレバーを引くべきか、ビジネスを成功させるためには、どのKPIを微調整する必要があるのかについて熟知していなければならない。

短い予算計画。 私たちが企業に投資する場合、少なくとも12ヶ月分の月次予算計画を持っていることを望んでいる。資金の調達には多くの時間と労力が費やされ、ビジネスの成長から創業者たちを遠ざけてしまう。私たちは、会社がすぐに別の資金調達ラウンドにとりかかる心配なしに、チームが成長に注力することを可能にする十分なリソースを持っていることを望んでいる。そしてまた、もし会社が12ヶ月分のKPIの改善と成長を示すことができれば、次の調達ラウンドは、はるかに容易になるだろう。

月次予算計画を計算するには、創業者は、現在の出金速度を知っている必要があり、そしてどのように調達した資金を利用していくのか、毎月末毎にどのくらいの現金を使っていくのかに関する、詳細な予測を立てなければならない。この計算は以下の仮定で行うことができる:(1)ゼロ収益、(2)ゼロ成長で、現在の収益が続く、または(3)これまでの傾向に基づく合理的な収益の成長が望める。

TAM(総市場規模)が小さすぎる。 私たちはしばしば、比較的小さなグループが直面している問題への、革新的で時に独創的な解決策を持っている企業をみかける。買収されることを目指す起業は、その収益可能性を買収者にとって意味のあるものにするために、十分に大きな市場にアプローチする必要がある。もしある企業が、同社のソリューションが対象としている市場の大きさが妥当であることを示すことができない場合(私たちの場合、それは通常年間10億ドルの市場である)、私たちは通常は見送ることにしている。

未発売または未出荷。 私たちは企業が製品を売り始めたときに、その評価の高まりに伴ってはるかに投資リスクが低くなることを知っている。言い換えれば、企業が売上のない状態を卒業して、顧客が喜んでお金を払う製品の製造と出荷に移行したら、その評価の高まり以上にリスクが減少するということだ。したがって私たちは、対象企業が最初の販売を行い製品が市場に受け容れられる初期の証拠を示した後に投資をすることは賢明だと考えている。

ビジョンがない。 私たちは、現在の会社を100倍のサイズにするための、明確な成長のビジョンを持っている創業者の企業に投資するのが好きだ。実際にその成長を成し遂げるためには、そのビジョンからの逸脱も必ず必要になるのだが、一方ビジョンを欠いていてはその達成ははるかに遠ざかってしまう。激しい嵐の中でも、北極星が創業者たちに道を示してくれるのだ。

競合相手をきちんと理解していない。 多くの企業は、しばしば私に「私たちには競合がありません」と言ってくる。一般にそれは信じがたいことなので、こう返答するようにしている「あなたが対象とする市場では、あなたが対応しようと考えている課題を現在はどのように解決しているのですか?それがあなたの競合相手ですよ」。

この初歩的な知識を超えて、創業者は競合他社がどの市場セグメントに取り組んでいるのか、そしてどのように売り込んでいるのかを睨みつつ、競合他社によって提供されているソリューションを徹底的に理解しておく必要がある。企業の潜在的な顧客は、その製品を他の利用可能なソリューションと比較する。そして頭の良い創業者たちはその製品を正しく位置付けるのだ。

こうした他のオプションについて精通していないこと、そして自らの製品を差別化できないことは、すなわち失敗のレシピである。

偏った創業者チーム。 製品は作られる必要があるし、また製品は売られる必要がある。これらのタスクは1人ではほとんど賄うことのできない、非常に異なるスキルを必要とする。私たちは、エンジニアリングと開発から販売とマーケティングまでの、様々な専門性をもつ創業者チームに会うのが好きだ。

会社の創立時からあらゆる専門性をしっかりと持つことは、偉大な製品を作ること、売れる製品を作ることを確実にする。もちろん、企業は欠けている部分の人材を雇用することができるが、その補った部分は企業のDNAの一部にはならない。加えて、雇用した働き手を管理する側の人間が、関連領域での経験を積んでいることが常に好ましい。

リスクを負っていない。 私たちは、創業者たちがその会社に全てを捧げていることを確認したい。最低でも、彼らはフルタイムでそのビジネスでに従事する必要がある。理想的には、彼らには同時に、自分のお金の比較的大きな部分を会社に投資していて欲しい。ポール・グレアムはかつて、創業者たちがそうすることによって「失敗を死ぬほど恥ずかしいと考えるようになり」、すぐに「倒れるまで戦うことを誓う」ようになるのだと書いた。全く同意する。

このリストは網羅的ではないが、なぜ私たちが(そして恐らく他の初期ステージ投資家たちが)案件を採用しなかったのかに関わる、ありがちな理由を示して、これからの創業者たちがそうした問題に確実にアプローチするための役立つチェックリストになることを期待している。ところで、もしあなたがこうしたことをもう全て正しくやっているというなら、是非話を聞かせて欲しい。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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