筑波大発、水中ドローンの空間知能化研究所が1.9億円を資金調達

テレビのバラエティー番組やYouTubeの動画などでも、今や日常的に目にする飛行型ドローンの空撮映像。国土交通省が建設・土木の生産性向上を目指してICTの活用を進める取り組み「i-Construction」の中でも、ドローンを使った測量作業のマニュアルや安全基準が用意され、建築・土木の現場など、業務での活用も盛んになってきた。

一方、水中撮影や調査はまだあまり手軽といえる状況ではない。GoProなどを使った映像も見かけるが、業務用途では主にダイバーや潜水士による有人撮影が行われている。さらに40メートルを超える深さになると、遠隔無人探査機(ROV)と呼ばれる機材が使われるが、ROVは操作が難しく高価なのが難点だ。とはいえ、近年ダムや港湾などで、水中インフラの維持・管理、高寿命化のニーズは高まっていて、より手軽に、安価で水中を撮影・調査する方法が求められている。

筑波大学発のベンチャー、空間知能化研究所の水中ドローンは、そうしたニーズに応えるべく、開発が進められている。日本では初の水中ドローン専業メーカーである空間知能化研究所は、8月21日、Beyond Next Ventures三井住友海上キャピタルおよびSMBCベンチャーキャピタルが運用するファンド、フリービットインベストメントを引受先とする、総額1億9000万円の資金調達の実施を発表した。調達により、資本金の合計は2億2180万円(資本準備金を含む)となる。

空間知能化研究所の設立は2014年6月。メカ・回路・組込みソフトウェアを一気通貫で開発する技術バックグラウンドを持つ、筑波大学出身の伊藤昌平氏を代表取締役に、またセンサー、クラウドシステムの専門家で筑波大学教授の中内靖氏を取締役会長として、共同で設立した企業だ。

空間知能化研究所が現在開発を進める、業務用の水中ドローン「SPIDER」は、母船上から電源を供給して操作していた従来のROVと比べて、小型・軽量でバッテリー駆動式。電源供給が不要な分、ケーブルを細くすることができ、取り回しやすくなっている。特別な専用コントローラーは不要で、PCとゲームパッドがあれば操作ができる。また、搭載された8つのスラスターで深度・姿勢を自動維持する機能や、画像処理による機体の位置保持機能を実装予定で、潮流などがある程度強い海でも映像撮影がより簡単に実現できるという。

SPIDERの潜行性能は300メートル。ダムや近海でのインフラ整備に必要な深度は十分にクリアしながら、従来のROVを利用した場合にかかる導入コストや運用コストを数分の1に削減できる、と空間知能化研究所では説明している。2017年11月にはSPIDERのレンタルを開始。レンタル費用は、1日あたり20万円程度となる予定だ。また2018年春には、機材自体の販売も予定している。

空間知能化研究所では今回の調達資金で、SPIDERの開発と製品化を進めるという。また、現在は市場ニーズの高い潜行性能300mのドローン開発に専念しているが、将来的には深海の探査にも使えるような製品開発を行いたいという。「構造的には1000メートルの水深にも耐えられる設計となっており、相模湾での実証実験では水深350メートルの潜行実績がある。今まであまり見られたことがなかった水中の撮影・探査が手軽にできる取り組みとして、まずはSPIDERを試しに気軽に利用してみてほしい。SPIDERのレンタル、製品化で一歩一歩、水中ドローン普及・開発のための実績を重ねていきたい」(空間知能化研究所)

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TechCrunch Japan

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