簡単にネット販売ストアを立ち上げて注文を受けられるツールを開発するCococart

2年前、起業家のDerek Low(デレク・ロウ)氏は、自身が所有するバリ島のホテルを失い、生活費を稼ぐために手作りのチーズケーキのネット販売を始めた。しかし、すぐに立ち上げて注文を受けることができる簡単なeコマースツールを見つけるのは、難しいことがわかった。

ロウ氏は、2億もの事業主が注文を取るために電話やWhatsApp(ワッツアップ)やInstagram(インスタグラム)などのメッセージングアプリに頼っており、注文の追跡が困難であることが、代金回収を難しくしていることに気づいた。また、プロフェッショナルなeコマースサイトは立ち上げに数週間かかり、新規ビジネスには高額な費用が必要になることも知った。

Cococart共同創業者兼CEOのデレク・ロウ氏(画像クレジット:Cococart)

ロウ氏はZhicong Lim(ジコン・リム)氏とパートナーを組み、シンガポールを拠点にCococart(ココカート)を設立した。同社のツールは、商品を販売する人が数分でオンラインストアを立ち上げることができ、コードもデザインもアプリのダウンロードも不要だ。このストアには、注文管理からモバイル決済ソリューションまで、あらゆる機能が搭載されている。販売者は、持続不可能な手数料を請求するアプリやマーケットプレイスを利用することなく、自分たちの販売を管理することができる、とロウ氏は付け加えた。

「率直に言って、受注管理は大変です」と、ロウ氏は語る。「ほとんどの地方事業者は、未だにWhatsAppで注文を受け、スプレッドシートを使って注文を管理しています。それでは事業を成長させるために使うべき多くの時間が吸い取られてしまいます。私たちは、地方起業家たちの新しい波の最前線にいます。キッチンで作った料理を販売するところからスタートし、今では業務用キッチンを備えた小売店を経営しているような当社の加盟店のストーリーから、私たちは日々インスピレーションを受けています。私たちのミッションは、地域の事業を変革し、ビジネスオーナーに情熱を追求する力を与えることです」。

Cococartの加盟店の多くは、まさにロウ氏と同じような人々だと、同氏はいう。新型コロナウイルス感染流行から生まれた新世代の個人事業主は、eコマースで急成長しているセグメントを代表する存在となっている。また、人々がオンラインで注文することに慣れたことも、ロウ氏はこの動きがなくならない要因と見ている。

「私のように、職を失った多くの人がネットで副業を始め、それが主な収入源になりました」と、ロウ氏は続けた。「このような起業家は、他人のために働くよりも、自分のビジネスを運営する方が収益性が高く、充実感が得られることに気づいたのです」。

Cococartは設立当初から収益性の高い会社であり、サービスの立ち上げ以来、90カ国で2万人以上の商店主が契約し、合計50万件以上の注文を受け、1500万ドル(約17億円)以上を稼ぎ出している。

例えば、同社のトップマーチャントの1つであるINDOCIN(インドシン)は、オンデマンドで職人によるインドネシア料理を提供している会社だ。ロウ氏の話によると、同社のオーナーが1年前にCococartで商売を始めた当時は、自宅のキッチンで手作りの料理を売っていたそうだ。現在では24人の従業員を雇用し、自分の店舗を経営している。

ロウ氏によると、2021年だけでCococartは契約店数を30倍、顧客数を46倍に伸ばしたという。同じ期間に、同社は創業者2人だけのチームから、12カ国にまたがる22人のチームに成長を遂げた。

この勢いを維持するため、CococartはForerunner Ventures(フォアランナー・ベンチャーズ)とSequoia(セコイア)から420万ドル(約4億8500万円)を調達した。他にも、Y Combinator(Yコンビネータ)、Uncommon Capital(アンコモン・キャピタル)、Soma Capital(ソマ・キャピタル)、Liquid 2 Ventures(リキッド・ツー・ベンチャーズ)、Fitbit(フィットビット)CEOのJames Park(ジェームズ・パーク)氏、Curated(キュレイテッド)CEOのEduardo Vivas(エデュアルド・ヴィヴァス)氏などの投資家が出資した。

ロウ氏は、この新たに調達した資金を使って、雇用と顧客獲得を継続していく意向だ。

「私たちはまだ始まったばかりです」と、同氏は続けた。「私たちの目標は、商取引の次世代を定義することです。事業を始めて運営していくには、配送からサプライチェーン、資金調達に至るまで、まだまだ私たちで解決したい課題が山積しています。私たちは目の前に大きな機会を見出しています。Cococartを世界中の2億の事業主に届けたいと思っています」。

画像クレジット:Cococart

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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