米国全土でVCの動きは活発になっているが

著者のMonique Villa(モニーク・ヴィラ)氏は、米国とカナダのスタートアップに投資するアーリーステージVCファンドMucker Capitalの投資家。彼女はまた、南東部で会社を設立することにコミットしている創業者、投資家、エコシステムパートナーのコミュニティであるBuild In SEの共同設立者でもある。

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この5年で、シリコンバレー以外の土地におけるベンチャーキャピタル投資の波が勢いをつけている。Twitter(ツイッター)のツイートだけで資本の流れを測ってみても、大変動が起こり、アイスホッケーの試合で使用されるTシャツキャノンで小切手が大放出されていると推測できる。

その一方でベンチャーキャピタルは「シリコンバレー以外の市場に目を向けている」という言葉で創業者達に近づくだろう。

2011年にMucker(マッカー)を創業したとき、高成長を遂げる企業はどこにいても成長できるということを証明すべく、共同創業者達はシリコンバレーからロサンゼルスに移動した。Muckerの過去10年のポートフォリオがまさしくこの物語を証明している。Muckerではロサンゼルス、オースティン、ナッシュビルにオフィスを設け、北米全域で投資を行っているが、米国全土とカナダで投資するという10年以上前のアイデアの受け入れが近年著しく増していると感じている。

最近では、ここナッシュビルや南東部における取引の流れに興味を示す、サンフランシスコやニューヨークなどを基盤にしたベンチャーキャピタルから連絡を受けることが多くなっている。

実際には、同じベンチャーキャピタルによって書かれる小切手が、対外の誇大広告と既存の市場機会の両方と一致する前に時間のズレがある。マーケティング目的とFOMO(取り残されることへの恐れ)のために広がったベンチャーキャピタルの地理的な焦点は、本当の物語を十分にキャプチャーしていない。

要約すると、シリコンバレー以外での機会とは、米国全体での機会を指している。

米国には機会があり、私たちには投資する価値があるのでは?

「私たち」は含みを持たせた表現だ。私はベンチャーキャピタリストとして、そしてバイレイシャルの移民一世の娘としてこの記事を書いている。両親はほとんどの人の標準に比べると貧しい環境で育っている。一方の家系はメキシコ革命の最中にメキシコから米国に移民した。もう一方の家系は、オクラホマの田舎出身だ。私が南東部で毎日毎日出会う創業者達はみな同じようなストーリーを持っている。

私のストーリーは平均的な米国人のそれだが、人々が「イノベーションエコノミー」として認識するものからは何光年も離れていると感じる。この10年間、ベンチャーキャピタルで多くの人と出会ったが、その両親や祖父母は、うちの家族とは決して関係しないであろう良い家柄の出身だった。しかし私たちはここにいる。ここは米国なのだ。

シリコンバレーの起源と国際的なスターダムへの上昇は、イノベーターが中心になって行われ、何十年も経つにつれ、より多くのイノベーターと資本を引きつけた。「広大で多様な州と人々が集まる米国」という重要な要素は間違いなく途中で欠落した。ベンチャーキャピタルの資金の流れに関する年次報告がこの矛盾を裏づけており、資金の大半はシリコンバレーとその周辺に拠点を置く企業に注ぎ込まれいる。

2019年6月の米国地域別ベンチャーキャピタル取引(画像クレジット:PitchBook/NVCA Venture Monitor)

私たちは今、米国の未来を支える製品やサービスにベンチャーキャピタルの資本が流入される「機会を与えてくれる土地」として、米国が正しく改変できる年代の入口に立っている。そして、そうしたイノベーションの舵取りをするのは、市場機会の最も近くにいて、顧客と顧客に最善のサービスを提供するという特別な意味合いにおいて完全に一致協力している人々だ。

新型コロナ後の世界では、顧客はサプライチェーンや職場の文化、株主所有権にかつてない透明性を求めている。顧客はブランドに関する情報をいつでも好きな時に手に入れ、一生懸命働いて得たお金をどこに落とすか精査できるようになった。つまり、顧客は自身の存在をはっきり認識してもらえることを好み、このことに気づいた創業者達がこの新しい環境で成功するようになる。

お金に続け

顧客はどこに住んでいるのか?ヒントをあげよう。多くはシリコンバレーにはいない。

テネシー州ナッシュビル周辺の人口(画像クレジット:Nashville 2018 Regional Economic Development Guide

私は2018年にBuild In SE(ビルドインSE)の創業を発表したとき、ナッシュビルにおけるアンフェアアドバンテージに関する記事を書いたBuild In SEは南東部で起業することを選んだ創業者をサポートするためのコミュニティで私は共同創業者だ。ナッシュビルは米国の人口の半分以上が半径650マイル(約1050km)内に住み、米国市場の75%に2時間のフライトで行き来できる範囲内に位置している。

背格好もサイズもさまざまな顧客がいて、創業者たちはこうした市場で必要不可欠な仕事をする。顧客と同じように平凡だが必要な仕事をし、アンフェアアドバンテージを得る。こうした創業者は歴史的に、必要に駆られて自力で起業している。初期段階の高リスクの資本へのアクセスが乏しく、街や州、業界によって大きく異なるためだ。

こうした創業者はMailchimp(メールチンプ)、Calendly(カレンドリー)、 Lynda.com(リンダドットコム)、シリーズAで6億ドル(約630億円)の投資前価値を誇ったGoFundMe(ゴーファンドミー)など、テクノロジーやイノベーションエコノミーでお馴染みの企業を設立してきた。そしてこれらすべての企業にはもう1つ共通点がある。それは「シリコンバレー以外」の地で創業したという点だ。

強力な磁石となる才能あふれる人材

もう1つのマクロトレンドは、サンフランシスコやニューヨークといった従来の都会の拠点以外に才能ある人材が分散され始めていることだ。起業家、技術者、経営者は、生活の質がより重要に感じる時代の中でライフスタイルを求めている。ナッシュビル、オースティン、アトランタ、デンバー、ダラム、マイアミなどの都市へ引っ越すことで、高齢の家族の側に暮らすことや手頃な養育費、アウトドアアクティビティなどが実現する。

このようなシンプルな喜びは、海岸沿いの都市で「夢を追いかけ」、お金(時にはより良い天候)を求めて引っ越す場合のトレードオフだった。才能ある人材が徐々に不足し貴重になると、一夜にしてプライベートマーケットの資本が潤沢になったように思える。振り子が揺れ、2つの磁石の弱い方に資本が傾いたのだ。才能ある人材は「通勤時間はどのくらいがよいか」や「家族や自分にどのくらいの時間を割きたいか」といった質問を自問し始め、ウォールストリートの人々はマンハッタン島からコーヒーショップやドッグランのある公園の方へと移動し始めた。

2020年はこの乾いた丘に火をつけるマッチ棒のようなものだった。窮屈な部屋に閉じ込められ、新しい生活に投資できるリソースを持った(または他に失うものがない)人々は、荷物をまとめ新天地へと移動したのだ。

私が2017年に長年住んでいたロサンゼルスからナッシュビルに引っ越したときに感じたように、コミュニティやつながりという新たな気持ちが芽生える場合もある。ロサンゼルスにいたころは、その無常な街の性質のせいで近所とのつながりがほとんどなかったが、ナッシュビルでは自分よりも大きな何かの一員になれたと感じている。

機会はどこにでも溢れている

ナッシュビルやアトランタ、リサーチトライアングル、シンシナティ、トロントといった市場で私の知っている創業者達が示したフラストレーションの1つは「利用できる資本はもっとあると聞くが、それはどこにあるのか」だ。創業者達は投資家と会えても時期尚早だ、資金不足だ、または多すぎる、「十分に大きな市場」を目指せていないなどといわれてしまうのだ。

ときにはそれが本当の場合もあるが、シリコンバレーの起業家のような見た目や話し方、振る舞い方をしない創業者に対して投資家が明らかに批判的な反応を見せているケースも多い。

さまざまなスキルを持ちパターンマッチングするベンチャーキャピタルと全国のスタートアップCEOの間の理解のギャップを埋めるには、これからの10年で多大な労力が必要になる。隣人と分かち合い、子供を同じ学校に通わせ、地元の安食堂に馴染み親しみ、相互信頼を得るというようなことが非常に重要になってくるが、これははじめの一歩に過ぎない。実際には「米国」の定義そのものに沿って、よりいっそうの一致協力や苦難を要することだろう。

次の10年でこの機会をものにするのは投資家次第で、それはまさに私たちの仕事だ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:アメリカ

画像クレジット:Alexi Rosenfeld / Getty Images

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(文:ゲストライター、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。