米国防総省がついにMSとの1兆円超規模クラウド契約「JEDI」を白紙に、リセットしてやり直し

世界最大のクラウドインフラ企業が数年にわたって争奪戦を繰り広げてきた結果、米国防総省は米国時間7月6日、論争の的となっていた勝者総取りの100億ドル(約1兆1000億円)規模のJEDI契約をついに白紙に戻した。結局、誰も勝てなかった。

「テクノロジー環境の変化にともない、長い間延期されてきたJEDIクラウド契約は、もはや国防総省の能力ギャップを埋める要件を満たさないことが明らかになりました」と、米国防総省の広報担当者は述べた。

関連記事:ペンタゴンの100億ドル規模のプロジェクトJEDI(ジェダイ)が、クラウド企業たちを悩ます理由

契約調達のプロセスは、2018年に国防総省のクラウドインフラ戦略を担う100億ドル(約1兆1000億円)、10年にわたる契約のRFP募集から始まった。国防総省の広報担当者であるHeather Babb(ヘザー・バブ)氏はTechCrunchに対し、1人勝ち方式を採用する理由を次のように述べていた。「単一受注が有利なのは、特にセキュリティの向上、データへのアクセス性の向上、当省によるクラウドサービスの採用と利用を簡素化できるからです」と、当時同氏は語った。

しかし企業各社は当初から、マルチベンダー方式の方が国防総省にとって良い結果をもたらすと考え、1人勝ち方式に反対していた。特にOracle(オラクル)などは、入札プロセスがAmazon(アマゾン)に有利になるように設計されていると考えていたようだ。

関連記事
米国防省は1兆円超のJEDIクラウドの最終候補にMicrosoftとAmazonを選定、Oracleは選外
アマゾンとの入札競争に勝ったマイクロソフトは米国防総省の1兆円相当のクラウドを作る

AmazonとMicrosoft(マイクロソフト)の2社が最終選考に残り、最終的にはMicrosoftが選ばれた。しかし、Amazonは自分たちの方が優れた技術を持っているととともに、当時CEOだった(ワシントンポスト紙のオーナーでもある)Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏を公然と軽蔑していた前大統領が直接干渉したために、この契約を失ったと信じていた。

Amazonは決定に対して法廷で争うことにしたが、数カ月の遅れの後、国防総省はそろそろ先に進むべきだという判断を下した。Microsoftは7月6日のブログ記事で、この遅延を引き起こした原因として、Amazonを非難した。

「国防総省がMicrosoftをJEDIパートナーとして選定してから20カ月が経過し、政策立案者が注目すべき課題が浮き彫りになりました。1つの企業が、国を守る人々のための重要な技術アップグレードを何年も遅らせることができるのであれば、抗議プロセスには改革が必要です。Amazonは2019年11月に抗議申し立てを行いましたが、訴訟から判決が出るまでに少なくとも1年はかかると予想され、その後控訴される可能性もありました」と、Microsoftは契約終了に関するブログ投稿に記している。

しかしAmazonは独自の声明の中で、プロセスが公正に行われなかったとの考えを改めて示した。「当社は国防総省の決定を理解し、同意します。残念ながら今回の契約先決定は提案のメリットに基づくものではなく、政府調達にあるまじき外部からの影響を受けたものでした。米国の軍隊を支援し、戦闘員や防衛パートナーが最高の技術を最高の価格で利用できるようにするための当社のコミットメントは、これまで以上に強固なものとなっています。今後も国防総省の近代化を支援し、重要な任務を達成するためのソリューションを構築していきたいと考えています」と同社の広報担当者は述べている。

最初から、うまくいくわけがなさそうに見えたプロジェクトにふさわしい終わり方には違いない。国防総省がちょっと洒落っぽく「スター・ウォーズ」の名を冠したこの契約を発表したときから、この調達プロセスは昼ドラのように紆余曲折してきた。

初めの頃は騒々しく激しさが渦巻いたが、結果的には無意味な結果につながっていった。我々は、次に起こるであろうクラウド調達プロセスに注意を移すこととしよう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:米国防総省MicrosoftJEDIAmazon裁判

画像クレジット:US Dept of Defense / Wikimedia Commons under a Public Domain license.

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。