米雇用統計の不振を受け、ハイテク株は小幅な上昇を続ける

更新:この記事を掲載してから、ハイテク株は上昇を止め、NASDAQと我々が追跡しているソフトウェア銘柄はともに下落した。少し遅れて、完全雇用への懸念とそれによる金利上昇が市場でのセンチメントバトルに勝利したようだ。

ここ数カ月、経済ニュースとテクノロジー銘柄の価値の関係は、楽しいパズルだった。

例えば、雇用統計が好調であれば、一般的に経済が楽観的になり、その結果、テクノロジー株も上昇すると考えるかもしれない。また、経済指標が悪いと、一般的な景気悲観論につながり、その結果、テクノロジー株は下落すると思うかもしれない。なぜなら、テクノロジーは現在の経済の大きな部分を占めているからだ。

ハハ、違う。まあ、部分的にはそうだが、そうでもない。

米国時間1月7日の雇用統計に向けて、市場にはある恐ろしい空気が漂っていた。つまり、米連邦準備制度理事会(FRB)が2022年に、おそらく債券買い入れプログラムの終了、バランスシートの圧縮、金利引き上げなどを通じて金融引き締めに乗り出すというものだ。FRBが金利を引き下げる結果、債券やその他の低リスク資産の魅力が増すことになる。同時に、リスク調整後のリターンで考えると、金利上昇により、高価なハイテク株の魅力が薄れると予想される。

このような力学からして、力強い雇用統計ではハイテク株は下がり、雇用統計が冴えなければハイテク株は上がると予想できるかもしれない。それはほとんど現実のもとなった。1月7日に発表された2021年12月雇用統計は予想を下回り(19万9000人の新規雇用、予想の約半分)、ハイテク株は当初売られた。しかし、取引が始まると、NASDAQは0.34%上昇し、ダウ平均はわずかに下落したが、ソフトウェア株は約0.8%上昇した。

なぜハイテク株の価値が下がり、そして跳ね返ったのか。

事実上、完全雇用に達したという懸念がある。つまり、12月の雇用者数が伸び悩んだのは、雇用側の需要不足だけでなく、労働者不足も一因だったということだろう(もちろん、世界的なパンデミックが続いていることも、この動きの一因だ)。

そして、雇用統計の悪化は、経済が予想以上に好調(完全雇用に近い)であることを示すという奇妙な状況に陥っていて、賃金と物価が上昇し続け、FRBが利上げに踏み切ることを示唆している。そうなると、前述のように、高リスクの資産が売られ、低リスクの資産がより魅力的になることを意味する。にもかかわらずテック株が少し上がっているのは、ここ数週間で急激に売られたハイテク株にとって、この低調な統計がプラスに働くと市場が判断しているからだろう。あるいは、冴えない雇用統計は、強い雇用統計よりもFRBを刺激しない、と判断しているのかもしれない。

というわけで、今日のハイテク株は高く、この業界で働く人はみんな、ちょっとした富を手に入れたことになる。

画像クレジット:Jorg Greuel

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。