米Novoloop、プラスチック廃棄物から高価値の化学製品を生み出すリサイクル方法を開発

ポリエチレン(私たちがよく知っている一般的なプラスチック)を「バージン」プラスチック(石油化学から直接作られたプラスチックのこと)に対抗できる高価値のプラスチックにアップサイクリングすることは、極めて困難な問題だ。それが非常に難しかったため、何十億トンものプラスチックがリサイクルされず、地球や海を汚染している。しかし、米国に拠点を置く新しいスタートアップ企業のNovoloop(ノヴォループ)は、その答えを出したと主張する。

同社の創業者であるJeanny Yao(ジェニー・ヤオ)氏とMiranda Wang(ミランダ・ワン)氏の2人の女性科学者は、5年以上にわたってこの問題に取り組んできた。

米国時間2月15日、Novoloopは1100万ドル(約12億7000万円)のシリーズA資金を調達したことを発表。このラウンドはEnvisioning Partners(エンヴィジョニング・パートナーズ)が主導し、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)とBemis Associates(ビーマス・アソシエイツ)に加え、SOSV、Mistletoe(ミスルトー)、TIME Ventures(タイム・ベンチャーズ)を含む以前の投資家も参加した。Novoloopは、高機能アウターウェアに見られるシームテープなど、アパレル向けボンディングソリューションを製造しているBemis Associatesと新たに提携を結んだことも発表した。

Novoloopは、プラスチック廃棄物を高性能の化学製品や材料に変えることを目指しており、ATOD(Accelerated Thermal Oxidative Decomposition、熱酸化分解促進)と呼ばれる独自のプロセス技術を開発した。ATODは、ポリエチレン(現在最も広く使用されているプラスチック)を、高価値の製品に合成可能な化学的構成要素に分解するという。

その最初の製品は靴、アパレル、スポーツ用品、自動車、電子機器などに使用される熱可塑性ポリウレタン(TPU)のOistreになる。この製品のカーボンフットプリントは、従来のTPUに比べて最大で46%も小さいと、Novoloopは主張している。

Novoloopの共同設立者でCEOを務めるミランダ・ワン氏は、声明の中で次のように述べている。「プラスチックがすぐにはなくなることはないでしょう。そのため、生産されるものと再利用されるものとの間のギャップを埋めるためのイノベーションが必要です。何年もかけて技術開発を行ってきた私たちは、この必要性の高い技術を商業化するために、すばらしい投資家やパートナーから支援を得られたことを発表でき、大変うれしく思います」。

「我々が今回の投資ラウンドを主導することになったのは、Novoloopがプロダクトマーケットフィットを見つけたからです」と、Envisioning PartnersのパートナーであるJune Cha(ジューン・チャ)氏は述べている。「Novoloopは、Oistreが初期段階でも市場で幅広い用途に使えることを証明しました」。

ワン氏は電話で筆者に次のように語った。「ポリエチレンプラスチックは、包装材として最も一般的に使用されているものですが、化学的に変化させたり、分解して有用なものに変えることが非常に困難です。私たちは、このポリエチレンを酸化させるために、根本的に新しい化学的アプローチを採用することで、これを解決しました」。

「他の誰もが、廃プラスチックであるポリエチレンを化石燃料の原料にしています。しかし、私たちのアプローチは、直接ポリエチレンの廃棄物を採取し、ワンステップで変換するというものです。(中略)ですから、石油やガスに戻す場合に発生する多くのステップや化学反応を根本的に回避することができます」と、ワン氏は語る。

Novoloopの競合企業には、BASF(ビーエーエスエフ)、Covestro(コベストロ)、Lubrizol(ルーブリゾール)、Huntsman(ハンツマン)などがある。これらは化石燃料からバージン材のTPUを製造している企業だ。現在、TPUの約99%はバージン材である。言い換えれば、これは崩壊の準備を整えた巨大な産業なのだ。

画像クレジット:Novoloop / Novoloop founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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