組み込みシステムのマイクロコントローラをAI化するCartesiam

マイクロコントローラ(マイコン)を使用するエッジデバイスに機械学習の機能を組み込む技術を擁するCartesiam(カーテシアム)が、これらのサービスを容易に構築できるツールをローンチした。NanoEdge AI Studioと呼ばれるプロダクトは、すでに何十億ものデバイスで使われているArm Cortex-Mマイコンに機械学習とその推論能力を持たせる初めてのIDEだ。

2016年に創業したCartesiamの共同創業者でゼネラルマネージャーのMarc Dupaquier(マーク・デュパキエ)氏によると、同社はArmとの関係が極めて密接で、ともに共通の関心、すなわちこれらのデバイスの新しい機能を作り出すことに注力している。彼によると、IoTの第一波はもっぱら自分のデータをクラウドに送るだけだったが、しかし今ではほとんどの企業がデータの送出量を制限してデバイス自身に処理をやらせようとしている。そしてそれがまさに、Cartesiamの創業動機でもある。彼は曰く、「データを全部送るなんて馬鹿げている。しかもそんなIoTはデバイスを長時間露出してセキュリティ損なうことになる。デバイスにもっと近いところで処理をやらせるべきではないか?」。

同社は最初、Intel(インテル)が開発した超小型モジュールCurie SoC(キュリーSoC)に目をつけた。しかしCurieは短命で2017年にサポートを打ち切られた。そこでCartesiamはCortex-Mにフォーカス。Armチップは至るところで使われているのでこれによって事態は好転した。ただし主人公はあくまでも低電力消費のマイクロコントローラで、顔認識や自然言語理解の世界の話ではない。そんなデバイスの上で使う機械学習は、彼らをもう少し高性能にするだけだ。特に産業用のユースケースでは、異状の検出や予防的メンテナンス時期の告知などでデバイス上のAIが役に立つ。

Cartesiamの顧客は、Cortex-Mを使ったデバイスを作っている大企業が多い。NanoEdge Studioを使えば、そんなデバイスの開発が楽になる。デュパキエ氏は「スマートオブジェクトの開発は単純、迅速、低コストでなければならない。現状がそうでないから、それを変えようとしている。ただしターゲットはデータサイエンティストではない。Cartesiam自身が、そこまでスマートではない。しかし、組み込みシステムの設計者向けには、十分以上にスマートだ。彼らが抱える問題の99%を解決できる」と語る。彼によると、Cartesiamは彼らの製品が市場に出るまでの時間を20%から50%ぐらい節減できる。これまで彼らが数年を要していたプロジェクトを数日でできることもある。

NanoEdge Studioは、センサーとそのユースケースの組み合わせを入力として与えると、その組み合わせのための最良のアルゴリズムを自動的に見つけてくれる。また、生成するライブラリが極めて小さくて、4Kから16K程度のメモリーに収まる。NanoEdge StudioはWindows用とLinux用がある。料金は、ユーザー1人につき月額690ユーロ(約8万3000円)から、チームなら月額2490ユーロ(約30万円)からだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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