翻訳サービスから東大門市場のファッションアプリまでーー韓国の有望なスタートアップ8社を紹介

日本から韓国まで飛行機で3時間もかからないが、すぐ隣の国のスタートアップについて知る機会は案外少ない。11月28日、韓国のスタートアップ支援を行う官民ネットワークStartup Alliance Koreaと日本のベンチャーキャピタル、グローバルブレインは韓国スタートアップのピッチイベントを共催し、勢いのある韓国スタートアップ8社が登壇した。

ブロックチェーンやVRといった全世界的に注目が集まっている分野のスタートアップがある一方で、韓国の東大門市場のファッションを扱うショッピングアプリなど韓国独自のビジネスを活かすスタートアップもあった。この記事では登壇した8社の概要を紹介したい。

Flitto:翻訳プラットフォーム

flitto

Flittoはクラウドソース翻訳とプロによる専門翻訳を提供するプラットフォームを提供している。Flittoの主な顧客は、観光客向けに案内やメニューを多言語化したいと考える観光スポットや美術館、レストランなどだ。立て看板などを翻訳したい施設は、Flittoのアプリで看板を撮影し、翻訳を発注する。Flittoは画像の情報と訳文を保存しているため、以降施設を訪れた観光客はFlittoのアプリで看板を撮影すると、すぐに訳文を得ることができる。Flittoは観光客が撮影した文字をOCRで読み取って随時翻訳するのではなく、画像解析と位置情報に基づいて以前に翻訳した訳文を取得しているのだ。

クラウドソース型翻訳サービスは海外にも国内にも複数あり、さらにはGoogle翻訳などの機械翻訳も競合になりうるだろう。ただFlittoは翻訳会社ではなく、言語データの会社であるという。Flittoは翻訳時に得た翻訳言語データを収集し、自動翻訳や辞書を作成する会社に販売しているという。

SCATTERLAB:心理学と人工知能を用いた恋愛コンテンツ

scatterlab
ネットには様々な恋愛コンテンツがあるが、その多くは個人の経験や見解によるものが多い。SCATTERLABは、心理学の論文に基づいた科学的な恋愛アドバイスを「恋愛の科学」ウェブサイトとアプリを通じて提供している。

2016年6月にアプリをローンチし、現在までに25万ダウンロードを達成した。アプリでは、例えばLINEでの恋人同士の会話を分析して相性診断をするテストなども用意している。有料テストの売上は好調で、1ヶ月の売り上げは2~300万円になるという。「恋愛の科学」の日本語版ウェブサイトは今年8月にベータローンチした。2017年初旬にも日本版iOSとAndroidアプリをローンチする予定だ。

10PING:モバイルネイティブな広告ネットワーク

10ping

10PINGのユーザーは、広告主のコンテンツを広めることで収益を得ることができる。まずユーザーは広告主が広めたいコンテンツの一覧から得意なコンテンツを選び、口コミやコメントとともにFacebookやLINEといったSNSに投稿する。投稿を見た友人や他のユーザーがコンテンツをクリックし、5秒以上コンテンツを閲覧すると、広告主に200ウォン(約20円)が課金される。その内およそ半分がコンテンツを投稿したユーザーに支払われる仕組みだ。

10PINGではクリック型、アプリダウンロード型、連絡先取得型などの広告形式を提供している。投稿したコンテンツには法規制に準拠し、「この広告により収益が発生する」などの文言が明記されている。2015年7月にサービスをローンチしたばかりだが、2016年の年間売上は20億ウォン(約2億円)を見込んでいるという。

HUM ON:ハミングで楽曲制作

Appleが提供するGarageBandなど、音楽を作るためのアプリはいくつかあるが、扱うには音楽の知識や楽器の演奏技術が必要なものだ。COOLJAMMが開発するアプリ「HUM ON」は、独自の楽譜生成アルゴリズムで鼻歌やハミングを楽譜に変換することができる。また、バラード、R&B、ロックなどのジャンルを選ぶと、メロディーに最適な伴奏をつけることができる。

2016年5月にAndroidアプリをローンチし、現在までに9万ダウンロードを達成した。MAUは2万5000人ほどだそうだ。現在SNSで簡単に曲をシェアできる機能の開発を行っているという。2017年2月にはiOS版のローンチを予定している。

MOIN:海外送金を効率的に


海外で学ぶ子供のために送金する場合、両親は銀行に出向いて送金手続きをしなければならない。銀行を介した海外送金では、送金から入金まで1週間ほどかかる場合もあり、手数料も送金額の5%から10%と高額だ。モインはブロックチェーンに基づいたシステムで、1時間から24時間以内での送金を実現する。また、手数料も通常の50%から80%に抑えることが可能だ。

現在はウェブサービスのみだが、来月にはモバイルアプリをローンチする予定だという。今後は中国、東南アジアを始めアジア全域にサービスを広めたい考えだ。

Lollicam:動画セルフィーアプリ

SEERSLABはシリコンバレーのアクセラレータープログラムY Combinator、2016年夏季バッチの卒業生だ。彼らは動画のセルフィーアプリLollicamを提供している。Lollicamの特徴は動画を撮影しながらリアルタイムでアニメーション、スタンプ、特殊効果、BGMを加えることができる点だ。

Lollicamは、動画セルフィーをプロモーションの一環に取り入れたい企業との提携も進んでいる。例えば、ディズニーとは映画ズートピアやファインディング・ドリーのアニメーションフィルターを提供している。2015年の夏にアプリをローンチし、現在このアプリで毎日270万の動画クリップが作成されているそうだ。現在までの累計600万ダウンロードを達成し、年末までに1000万ダウンロードを目指すという。

POLARIANT:照度センサーで位置を検出するVR用モーションコントローラー

pol

POLARIANTはモバイルVR用のモーションコントローラーPolを開発している。POLARIANTが目指すのは、ケーブル接続の必要がなく、誰でも利用しやすいモバイルVRの利用環境を整えることだ。Oculusにもモーションコントローラーがあるがコントローラーだけでも比較的高額で、使用するのにPCの処理容量を多く使う。Polは偏光フィルムと照度センサーを搭載し、偏光LED照明を基準に3次元の位置を割り出している。測定結果はBluetooth経由でモバイルに送られるが、この時の処理のモバイルプロセッサーの占有率はわずか1%だという。Polのモーションコントローラーは2017年に発売予定で、価格は50ドルほどだそうだ。

ZIGZAG:東大門市場のファッションアイテムが購入できる

zigzag

Croquisが提供するZIGZAGは、若い女性向けにノーブランドのファッションアイテムを揃えるショッピングアプリだ。韓国の東大門市場はファッションアイテムの卸売と小売の両方を行う市場だが、ZIGZAGには東大門市場のショップが2000以上登録している。アプリには毎日1万点以上の新商品が登録され、月間の取引額は200億ウォン(約20億円)になるという。

東大門市場の競争は激しく、アプリでは最新のトレンドの商品を低価格で手に入れることができるという。今後は、日本でのパートナーを探し、日本市場に商品販売を行うことを視野に入れているそうだ。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。