脚を失ったヒゲハゲタカが鳥類で初めて特殊な骨インプラントを直接埋め込む義肢を得た「バイオニックハゲタカ」に

脚を失ったヒゲハゲタカが鳥類で初めて特殊な骨インプラントを直接埋め込む手法で義肢を得た「バイオニックハゲタカ」に

Scientific Reports

大型の猛禽類、たとえばハゲタカなどは、怪我などで脚を使えなくなってしまうと、歩行だけでなく獲物の捕獲なども困難になってしまい、生きていくための栄養を摂取できず弱ってしまいます。これまでにも鳥類の脚を義肢で補った例はたくさんありますが、ソケット式の義肢は羽毛のある脚には装着が困難でした。

オーストリアのハリングゼーにあるフクロウと猛禽類の保護施設に保護された、”Mia”と名付けられたこの鳥は、空を飛ぶ鳥としては欧州で最大のヒゲハゲタカの雌です。脚に重傷を負い、切断せざるを得なかったMiaはいま、オッセオインテグレーションと呼ばれる、骨にパーツをインプラントする手法によって義肢を得た初めての鳥になりました。

6月11日に学術誌「Scientific Reports」に掲載されたレポートによると、ウィーン獣医科大学が形成外科、再建外科、美容外科の権威であるウィーン医学大学のOskar Aszmann氏のチームに助けを求め、手術でMiaの脚に取り付けられる特殊な骨インプラントを設計・製造したとのこと。

脚を失ったヒゲハゲタカが鳥類で初めて特殊な骨インプラントを直接埋め込む手法で義肢を得た「バイオニックハゲタカ」に

Scientific Reports

オッセオインテグレーション手法では、酸化チタン製のアンカーを骨に埋め込むことで、このアンカーと骨が光学顕微鏡レベルで結合するため、非常に強固な接続が可能になります。結合がしっかりすることで装着者は四肢を直感的に扱うことができ、おそらくはMiaも普通の義肢よりも歩行や摂食を自然に行えるようになるはずです。

Aszmann氏は「われわれは今回、初めてヒゲハゲタカの四肢を生体で再構築することに成功した」と述べ「(Miaは)わずか3週間で初めて歩こうとし、6週間後には義足に十分な負荷をかけられるようになった。今日、ヒゲハゲタカは再び着地し、両足を使って歩くことができるようになり、初めての “バイオニックバード “になった」と説明しました。

ちなみに、オッセオインテグレーションは歯科インプラントではよく使われる手法ですが、インプラントと骨組織の結合が強くなるのに早くて3~4週間ほどの時間がかかるとのこと。鳥でも同じ定着期間なのかはわかりませんが、Miaはもう3週間を過ぎたとのことで、もう安心しても良い頃なのかもしれません。

(Source:Scientific ReportsEngadget日本版より転載)

カテゴリー:ヘルステック
タグ:義肢(用語)

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TechCrunch Japan

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