自動車ソフトウェア制御のTTTech AutoにAptivが出資、先進運転支援システムを促進へ

自動車メーカーは、より多くの売上を生み出すために機能やソフトウェアサービスを満載した自動車を販売したがっているが、情報過多という課題を抱えている

これらの、ソフトウェアによって制御された自動車には、電動パワートレインから運転支援機能、インフォテインメントまで、あらゆるものを動かす無数のシステムオンチップ(SoC)が搭載されている。最も重要なのは、それらがすべて協調して動作しなければならないということだ。

カメラやレーダーなどの車両センサーがデータを取得し、それを変換してパワートレインに送り、急ブレーキなどの機能を可能にする。そのすべてがミリ秒単位のリアルタイムで行われ、同時にドライバーが車内でストリーミングしているSpotifyを妨げないようにしなければならない。

こうした重要な情報の流れを管理するために、ここ数年、スタートアップが次々と誕生している。ウィーンを拠点とする自動車安全ソフトウェアプロバイダー、TTTech Auto(TTテックオート)もそのうちの1社だ。同社の主力製品であるMotionWiseは、自動車のさまざまな制御システム間でデータの流れを可能にするソフトウェア安全プラットフォームだ。TTTech AutoのCEOで共同創業者のGeorg Kopetz(ゲオルグ・コーペッツ)氏によれば、互いに干渉することなく安全かつ確実に、そしてリアルタイムに機能するようにするものだという。

TTTech Autoはこのほど、大手自動車技術サプライヤーであるAptiv(アプティブ)の出資を獲得した。これはAptivが先進運転支援システム(ADAS)を促進する技術への関心を深めていることをうかがわせる。TTTech Autoは、自動車、航空宇宙、モバイル機器、オートメーション産業にわたる安全なネットワークコンピューティングプラットフォームを提供するTTTech Groupから生まれた会社で、米国時間2月3日にAptivがリードした2億8500万ドル(約328億円)のシリーズCラウンドを発表した。同ラウンドには既存投資家のAudi(アウディ)も参加した(シリーズCは今後2カ月以内の完了が見込まれている)。

Aptivは、高性能ハードウェア、クラウド接続、オープンかつスケーラブルでコンテナ化されたソフトウェアアーキテクチャを含む完全なスタックを自動車メーカーに提供し、ソフトウェアによって制御されたクルマへの移行を加速させることに取り組んでいる時期に、戦略的投資家としてTTTech Autoを支援する。

Aptivは1月、不可欠なインテリジェントシステムの開発、運用、管理を行うエッジ・ツー・クラウド技術を統合すべく、Wind River(ウインドリバー)を43億ドル(約4950億円)で買収した。TTTech Autoは売りに出ている会社ではない。コーペッツ氏は、業界の複数のプレイヤーと協力できるように独立して事業を継続したいと考えているが、MotionWiseがソフトウェア制御の分野で主要プレイヤーになるための道筋において、スマート車両アーキテクチャを提供するというAptivの戦略を補完できることは喜ばしいことだと話す。

Aptivの社長でCEOのKevin Clark(ケビン・クラーク)氏は、2月3日に行われた同社の2021年第4四半期および通年の決算説明会で「AptivとWind Riverの専門知識と補完的技術の組み合わせ、さらにアクティブセーフティソフトウェアアプリケーションを強化するTTTechの確定的フレームワークは、OEMがソフトウェア制御車両の開発と展開をコスト効率よく加速するのを支援するのにユニークな立場にあります」と述べた。

TTTechとAptivは、過去にAudiの自動運転向け中央運転支援コントローラーで協業しており、Aptivがハードウェア側のシステムサプライヤーとして協力し、TTTechはADAS全体の運用を確保するためのアーキテクチャ設計と安全ソフトウェアプラットフォームを支援した。

MotionWiseはこれまで主にADASやその他の自動運転機能に使われてきたが、レベル4およびレベル5の自律性に向けて、ソフトウェアをサポートすることを目標としている。レベル4とレベル5に関しては、SAE(自動車技術者協会)はそれぞれ限定された運転設計領域またはすべての条件下で自律システムがすべての運転を管理することと定義している

このことを考えると、Aptivには自律走行車のボンネットの下で機能するスケーラブルなシステムアーキテクチャに戦略的に投資する、より長期的な理由があるのかもしれない。Aptiv(旧Delphi)は2017年、自律走行車技術企業のnuTonomy(ニュートノミー)を買収し、その後、Motional(モーショナル)というHyundai(現代自動車)との合弁会社としてスピンオフした。Motionalは現在、Lyft(リフト)と提携して自動運転のHyundai Ioniqを使ったラスベガスでのロボットタクシー商業展開の2023年開始や、2022年サンタモニカでのUberとの自律配達の試験実施などに向けて準備を進めているところだ。

Aptivもコーペッツ氏も、MotionWiseが将来的にMotionalの車両に使用されるかどうかについては言及しなかった。もともと2017年に発売されたこの技術は、Hyundai車を含め、世界で200万台を超える乗用車にすでに搭載されている。MotionWiseは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Porsche(ポルシェ)、Audi(アウディ)、Kia(起亜自動車)、SAIC Motor Corporation(SAICモーターコーポレーション)の車両のソフトウェアスタックにも統合されていると、コーペッツ氏は話す。

TTTechは今回の資金をアジアに重点を置いた国際的なチームの育成に使う予定だ。同社はすでに、SAIC Motor Corporationとともに合弁会社(Technomous)を運営している。ソフトウェアと安全工学、戦略的製品管理、事業開発の分野で、アジア、欧州、北米で人材を採用する予定だとも述べた。

加えて、TTTechは買収・合併の可能性にも目を向けている。同社は、エコシステム内のさまざまなパートナーと協働できるよう、独立企業であり続けたいと考えているが、自動車メーカーの継続的な安全ニーズに対応し続けるために、補完的な製品、技術、サービスの獲得に関心を持っている。

「この分野では協力の余地が大きいと考えており、今回の資金調達は、独立路線で成長しつつ、共同融資や共同イノベーションを必要とし、単独では実現できない企業とも協力する機会を与えてくれます」とコーペッツ氏は述べた。

画像クレジット:TTTech Auto

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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