自動運転シャトルバスの仏EasyMileが72.5億円を調達

レベル5の完全な自動運転車が公道を走るのはまだ先のことかも知れないが、その一方で、限定された閉鎖的なキャンパス向けの、特定の用途の自動運転車やシャトルを製造している企業たちは、商用運行への道を歩んでおり、そのための資金を調達していると語っている。この度、乗客や貨物を運ぶシャトルバスを製造している、フランスのトゥールーズのスタートアップEasyMile(イージーマイル)が、シリーズBで5500万ユーロ(約72億5000万円)を調達した。

今回の資金調達は、今週初めにFCC(連邦通信委員会)の元議長Ajit Pai(アジート・パイ)氏を新たなパートナーに任命したSearchlight Capital Partnersが主導し、McWinとNextStage AMが参加している。また、これまでの出資者である鉄道業界大手のAlstom(アルストム)、Bpifrance(仏公共投資銀行)、自動車大手のContinental(コンチネンタル)も参加した。Searchlight Capital Partnersは、他にGet Your Guide(ゲット・ユア・ガイド)やUnivision(ユニビジョン)にも出資している。

EasyMileは自社を、自動運転シャトルの世界的リーダーであるといい、世界市場の60%で同社の車両が使用されていると主張している。同社の車両は、世界30カ国、300カ所以上で80万kmを走破したという。しかし、その一方でEasyMileは、その市場の小ささと新しさを示すように、同社は全世界で180台の車両しか配備していないのだと語る(興味深いことに、競合大手ののNavya(ナビヤ)もフランスに本社を置いている)。

EasyMileはこの資金を、閉ざされたキャンパス環境での商用展開を推進し、事業を拡大するために利用すると述べている。また、公共交通機関に自社の車両や技術を導入するという長期的な戦略にも引き続き投資していくが、より身近なユースケースに焦点を当ててきたことが、成長や新たな投資を呼び込むことにつながったと考えているとのことだ。

EasyMileの創業者でCEOであるGilbert Gagnaire(ジルベール・ガニエール)氏は声明の中でこう語る「私たちは、現実的なタイムフレームの中で提供できるものに集中し、今すぐにでも対応可能なニッチ市場のリーダーたちと提携してきました。「EasyMileの初期の投資家の方々全員に、今回のラウンドにも参加していただけたことは、当社の拡大計画に対する強い信頼の証です。そしてSearchlight、McWin 、NextStageをお迎えし、彼らの専門知識のおかげで当社の成長が加速することを大変うれしく思っています」。

EasyMileは評価額を公表しておらず、募集枠を超えたと同社が形容するラウンドで、これまでに調達した金額も公表していない。現在、同社に問い合わせ中だが、詳細が分かり次第、この記事を更新する。

EasyMileの車両には、人を運ぶシャトルバスのEZ10(イージー10)や、自動運転で荷物を運ぶ牽引式のトレーラーシステムTractEasy(トラクトイージー)などがあり、これまでに航空貨物の地上輸送のTLDで使われた他に、現在はPeugeot(プジョー)、Chrysler(クライスラー)、Fiat(フィアット)グループのStellantis(ステランティス)と共同で、EasyMileの技術を使った自動運転車の開発を進めていいる。

同社は挫折も経験している。2020年、EasyMileが事故を起こした後、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は同社が乗客を乗せてサービスを行うことを禁止した(乗客なしでの運行は禁止されていない)。この件に関する最新の状況については、同社に問い合わせている。

その点では、新しい投資家が規制上の問題にどのような影響を与えるのかが注目される。

Searchlight CapitalのパートナーであるRalf Ackermann(ラルフ・アッカーマン)氏は「EasyMileの成長にとって重要な節目であるタイミングで投資をできることを、大変うれしく思っています」と述べている。「彼らの持つ、堅牢で品質を重視したアプローチと業界をリードする技術を見て、この会社が商業的に拡大できる十分な立場にあると確信しました。その発展の道のりに参加できることが喜びです」。

自動運転分野での再編や、場合によっては縮小も見られる時期に行われたという点で、この資金調達は興味深いものだ。今週Lyft(リフト)がLevel 5(レベル5)部門をトヨタのWoven Planet(ウーブン・プラネット)に5億5千万ドル(約597億2000万円)で売却したばかりだ。EasyMileは、閉環境のシャトルを中心とした特定の市場に焦点を当て続けてきたことが、さらに多くの変化や障害が起こることが予想される未発達の市場ので、事業を進め、より多くの支持と注目を集めることができたとのだ考えている。

Benoit Perrin(ブノワ・ペラン)GMは声明の中で「今回の資本注入は、EasyMileの戦略の正しさを立証するもので、技術開発の最終仕上げとスケールアップ戦略を可能にしてくれるものです。私たちは技術を産業レベルにまで引き上げ、実際の商業サービスを提供します」と述べている。

関連記事:トヨタのウーブン・プラネットが配車サービスLyftの自動運転部門を約600億円で買収

カテゴリー:モビリティ
タグ:EasyMile資金調達自動運転フランス

画像クレジット:EasyMile

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。