自動運転技術開発のニーズに応えるためScale AIがマッピング分野に進出

自動運転にともなうさまざまな課題を解決することは非常に複雑な作業だが、それでも実現に向かうためには、まず何よりも、正確で十分にアノテーションされた質の高いデータを確保する必要がある。そこで登場したのがScale AI(スケール)という企業だ。AV業界では、特殊なLiDAR画像を含む膨大なデータのアノテーションが必要になると早くから考えていた。同社の共同創業者でCEOのAlex Wang(アレックス・ワン)氏は、2021年6月末にリリースされる新製品でマッピングの分野に進出すると「TC Sessions:Mobility 2021(TCセッション:モビリティ2021)」で語った。

トヨタをはじめとする運輸業界のパートナーとの協力関係について、ワン氏は「当社の役割は進化し続けています」と語った。「ご存知のように、私たちは顧客と協力して、データやアノテーションデータのラベリングに関する問題を解決していますが、すると次に、顧客はデータ管理に関する別の問題を抱えて私たちに助けを求めてくるようになりました。それを解決するために、私たちはNucleus(ニュークリアス)という製品を発売しました。そして現在、多くの顧客がマッピングについて、より強固なマップをどのように展開するかについて、頭を悩ませています。そこで私たちは、そのような問題の対処を支援するための製品を開発することにしました。おそらく今月末には発表できると思います」。

さらに促しても、この件に関してワン氏は具体的な話をしなかった。しかし、マッピングの課題についてや、センサーフュージョンや車両とインフラ間の通信コンポーネントなどの信号を含むAVシステムにマップを統合しようとしている企業にとって、既存のマップでは何が不足しているのかについては、さらに詳しく説明してくれた。

「全体的に私が大きな問題だと思うのは、この業界は歴史的にマッピングに非常に大きく依存してきたことです。非常に高品質で高精細なマップに大きく依存してきました。厄介なのは、これらの地図が間違っていることがあり、それにどう対処するかということです。【略】地図の信頼性や更新といった課題にどう対処するか。考えてみると、世界で圧倒的に優れた地図インフラであるGoogleマップでさえ、(人間の)ドライバーにとって十分な速さで更新されていないことがわかります」。

ワン氏によれば、この課題はScaleが創業以来、積極的に解決してきたデータフライホイールの課題と大きな違いはないという。自動運転走行では、データを迅速かつ正確に収集してアノテーションすることが何よりも重要である。その結果として、データの収集とアノテーションが改善されていき、システムが環境を把握する信頼性が高まっていく。

「絶えず変化する世界の状況にどうやって対処するか、その方法を見つけ出すことは、非常に大きな要素です」と、ワン氏はいう。Scaleが具体的に何を計画しているのかはまだわからないが、何を発表するにしても重要な要素として、地図とマッピングの精度に対する信頼を築くことが重要な要素になると考えてよさそうだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:自動運転地図Scale AI

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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