自動運転車がUberを脅かす

johnnycab


編集部記Kyle Samaniは、Crunch Networkのコントリビューターだ。Kyle SamaniはPristineのCEOを務めている。

Bill Gurley(Benchmark Capitalのジェネラル・パートナーでUberの役員を務める)が指摘するように、Uberはタクシー配車ビジネスを独占するプレイヤーになるだろう。何故か?Uberのビジネスモデルは、運転手の需要と供給の局地的なマーケットプレイスを取り込む形を成しているからだ。局地的なマーケットプレイスは、強いネットワーク効果を発揮し、「勝者がマーケットのほとんどの獲得」できる状態を作る。

局地的なネットワーク効果は、局地的な運転手と乗客の需要と共有の流動性に特化することで生まれる。Gurleyが投稿に掲載した下記の図に上手くまとまっている。

Screenshot 2015-09-15 11.42.06

訳:(上から)需要が増える→運転手が増える→サービスの対応範囲・浸透が広がる
→(右の分岐)ピックアップまでの時間短縮→需要が増えるへ
→(左の分岐)運転手のダウンタイムの減少→価格の低減→需要が増えるへ

このモデルはUberの急成長をもたらしたが、テクノロジーに先見の明を持つBenedict EvansBen Thompsonらは、次に頭に浮かぶ質問を投げてかけている。「自動運転車はUberにどのような影響を与えるだろうか?」

どのような影響というと、自動運転車はUberを追いやることになるだろう。

上記のサイクルの「More drivers(運転手が増える)」の部分を「自動運転車を増える」に置き換えてみると分かりやすいだろう。運転手はそもそも短時間しか運転することができない。運転手は人だからだ。食事をしたり、息をしたり、寝る必要がある。彼らは運転したい時にだけ運転し、運転したくない時は運転しないのだ。

自動運転車は、一時的なものではない。ほぼ永久に走行できるのだ。一度路上に出れば97%の時間、乗客に対応することができる。(残りの3%は、ガソリンの供給、点検、整備などの時間だ)。

自動運転者はUberが持つ運転手と乗客をつなぐ「マーケットの根源の要素」を壊すだろう。供給は軽く需要を超えることになる。車は24時間、年中無休で利用でき、限界費用も驚くほど低くなる。

自動運転車は、人が運転する車を利用するより格段に低価格になる。現在、運転手は稼いだ収益の80%を得ている(残りの20%はUberに渡る)。その80%の内の30%はガソリン代と車のメンテナンスにかかると仮定する。このコストは自動運転車にもかかる。つまり、人間の運転手が手にしているのは売上の50%という計算だ。20%はUberで30%は乗客に対応するための原価だ。

運転手はそもそも短時間しか運転することができない。

AmazonのJeff Bezosが言うように「あなたの利益が私たちのビジネスチャンスです」ということだ。さらに、A16ZのBenedict Evansが指摘するように、自動運転車は現在、乗客の交通手段として人が用いている車とは設計が異なり、機能も少ないため、低価格になるという。規模の経済により、Uberが乗車辺りに得る収益を変えない場合でも、自動運転車を人の運転する車より60%ほど安価に提供できても不思議ではない。

もう一度Uberの成長サイクルを見てみよう。Gurleyが指摘するように「運転手が増える」を「自動運転車が増える」に、「低価格」を「もっと低価格」にしてみると、「マーケット」が崩壊するのが分かる。強行手段を取る企業は需要がない場合でも運転手に定額の時給を支払うことで、このサイクルと同じことを達成できると言い張るかもしれない。しかし、運転手はそもそも短時間しか走行できないので、理にかなわない。運転手に常に賃金を支払ったところで、いつでも運転手が乗客に対応できるとは限らない。

一方、車を購入する場合なら、今すぐに使用しなくても、将来使わないとは限らない。さらに、都心から3km先に停めた自動運転車の限界費用は最終的に0ドルになる。

Uberの市場の独占を破ることが可能だとしたら、自動運転車に転換することがUber以外の会社にUberを壊す力をもたらすだろう。最初に適切な自動運転車を市場に投入する企業が業界を支配する。Uberや他のタクシー配車会社によって、ユーザーにこの手のサービスが普及した現在、一年早く事業を始めるだけで、市場の力学を劇的に変えることが可能だろう。

最初に適切な自動運転車を市場に投入する企業が業界を支配する。

Googleは、自動運転車によるタクシー配車サービスを提供するのに最も近い企業だ。GoogleはUberに出資しているため、Googleにとって有益なタクシー配車サービスの機密情報を入手することもできる。さらにGoogleは世界でも有数の地図情報のソリューション、最新鋭の自動運転ソリューション、そして彼らがゼロから取り組む自動運転に特化した自動車も保有している。Uberの市場占有が迫った現在、他にこのチャンスをビジネスに変えることのできそうな企業は他に思い当たらない。

また、Benedict Evansは自動運転テクノロジーはコモディティーになるとも指摘している。Googleは自動運転の研究開発に、長年手掛けるAndroidより多くの資金を投じている。Googleが自動運転車をコモディティーとする計画を立てている可能性もある。どこかの時点で、一つの企業が何百億ドルの資産をこのビジネスに投じる意味がなくなるだろう。銀行や公開市場が彼らの資産を評価した時、大変興味深い結果が得られるかもしれない。

P.S.
Googleは「Google Drive」と名付けるプロダクトを間違えたようだ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。