航空運賃を1ヶ月先まで予測 ― 値下がりに備えて航空運賃を固定できるFLYRが800万ドルを調達

Airplane in the sky and cloud at sunrise

トラベル系スタートアップのFLYRは本日、シリーズAで800万ドルを調達したと発表した。FLYRは業界のオープンデータと独自に集めた航空券の過去価格データに人工知能を適用することで、航空運賃を予測する。

今回の調達ラウンドでリード投資家を務めたのはPeter Thielが所有するファンドだ。また、SECへの提出書類によれば、Thiel Capital代表のPhin Uphamが今回のディールに関わっているようだ。本ラウンドを含めると、FLYRはこれまでに合計で1300万ドルを調達したことになる(前回のシードラウンドでは2社から400万ドルを調達している)。

「ファイアー(fire)」と音韻が似た名前をもつFLYRは、その旗艦プロダクトであるFareKeepで知られる企業だ。同プロダクトを利用すれば、1週間のあいだ航空券の価格を固定することができる。手数料は20ドル以上だ。FareKeepは航空運賃の保険と同じコンセプトをもっている。もしも固定した価格よりも航空運賃が値下がりするようであれば、ユーザーはその低くなった価格で予約を完了するか、もしくは固定した価格と実際の価格の差額を返金してもらうことができる。返金までにかかる日数は約1日程度だ。

FareKeepと同じような機能を提供する航空会社もあるが、TripAdvisorを含むいくつかの予約サイトではFLYRを利用した航空運賃の固定機能をユーザーに提供している。FLYRはクレジットカード会社との提携も視野に入れているようだ。

FLYRの競合はHopperやOptions Awayなどのサービスだ。Hopperは航空券を予約するのに最良のタイミングを教えてくれるサービスで、より直接的な競合となるOptions Awayは、FareKeepと同様に航空運賃を固定するサービスを提供している。

今回取材したCEOのJean TripierとCTOのAlexander Mansによれば、同社は今回調達した資金を利用して新プロダクトの開発を進めていくとのこと。海外出張をする従業員を多く抱える企業向けのサービスなどがその例だ。

「これまでのように1つの商業プロダクトを提供するのではなく、いくつかのソリューションを合わせたサービス・ポートフォリオを構築し、予約プロセスのさまざまな段階で利用できるソリューションを提供していきます」と同社はいう。Mansは加えて、「航空運賃とそれに対する需要を予測するだけでなく、今後私たちは消費者行動の予測にもフォーカスしていきます。それにより、私たちのクライアントが抱えるユーザーに、より良い体験を提供していきます」と語る。

FLYRは近々、航空券の「取り置き」とも呼べるサービスを公開する予定だ。このサービスを利用することで、ユーザーは航空券を分割払いで購入することができる。手数料などは一切かからない。現在、FLYRはアメリカとヨーロッパを結ぶ航空券を多くカバーしている。今回調達した資金はカバーする空路の拡大にも利用される予定。Tripierによれば、特にラテンアメリカの空路を強化していくようだ。

Peter Thielが所有するファンドのほか、本ラウンドには以下の投資家が参加した:JetBlue Technology Ventures、Streamlined Ventures、AXA Strategic Investors、Amadeus、Western Technology Investment、Plug and Play、Chasm Capital Management。

Streamlined Ventures創業者のUllas Naikは、「FLYRの強みは、1ヶ月先までの航空運賃を正確に予測できる能力です。その能力はさまざまなケースに応用することができるため、異なる業種のプレイヤーや顧客に価値を提供することが可能です。究極的には、このようなAI技術は市場全体を大きくしていきます。なぜなら、顧客はこれまで以上に自信をもって航空券を購入することができるからです」。

Naikによれば、FLYRは調達した資金を利用して新プロダクトの開発を進めていくが、それに加えて、世界中のパートナーサイトにある購入ボタンの「真横に」FLYRが提供する予測価格を表示していくようだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

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TechCrunch Japan

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