良い運転にご褒美、悪い運転にはリアルタイム通知を送るNetradyneの商業ドライバー向け安全性向上システム

Netradyne(ネトラダイン)は商業ドライバーの安全を向上させるためにカメラとエッジコンピューティングを使用するスタートアップである。今回シリーズCの資金調達で1億5000万ドル(約164億円)を達成した。CEOで共同設立者のAvneesh Agrawal(アヴニーシュ・アグラワル)氏によると、新鮮な資金が最新製品Driveri(ドライブライ)の強化につながる。

Agrawal(アグラワル)氏はTechCrunchに、良い運転には褒美を、悪い運転には運転手にリアルタイム通知を送るプロダクトに対する大きな自信を示し、現行の北米およびインドからヨーロッパへと、市場拡大に注力していると述べた。

2021年初めにネトラダインはそのハードウェアおよびソフトウェアを配送車にインストールするためAmazon(アマゾン)と提携を結んだ。このテクノロジー大手は、ドライバーの安全よりもスピードと効率を優先しながら、第三者企業を雇うことによって事故の法的責任を負わないようにしているとの非難を受けてきた。

他の会社には、それほどの道徳的に問題視される余裕がなかったのだろう。だからこそ、ネトラダインのサービスはフリート企業にとって妥当なのである。保険会社のAlera Group(アレラ・グループ)の報告書では、 2021年の商用車の保険料率は14.2%上昇することが予想されている。その大きな要因がスマートフォンに気を取られたドライバーによる死亡事故の増加だ。またその調査では、現代の自動車の修理費と医療費はインフレよりも速く上昇を続けている。費用削減を目指すフリート管理会社は、安全運転が約束される点に惹かれるのかもしれない。

「一部の統計によると、評決額が1000万ドル(約11億円)を超える「核兵器評決」は約500%増加しました」とアグラワル氏はTechCrunchに語る。「商業用フリート会社にとって、ドライバーと燃料に次ぐ最大の出費です。多くの商業保険会社が事業を撤退するか、リスクをフリート会社に押し付けています」。

アグラワル氏の話では、ネトラダインのサービスは需要が非常に大きく、契約者と年間経常収益は2020年に3倍増加した。基準値を明らかにしていないが、ネトラダインの今日の顧客数は1000人を上回るという。

ネトラダインはNational Interstate Insurance(ナショナル・インターステート・インシュランス)と、製品の助成金を払ってもらう合意を結んだが、本来のネトラダインの販売先はフリート会社だ。フリート会社の事故が減ることで、そのデータを保険会社に送り、請求額を交渉するのである。

ネトラダインはいかにそのカメラとソフトウェアにより運転が安全になるか平均を出していないが、アグラワル氏は製品を使用した企業2~3社の請求額が1年で最大80%減少したと述べた。

その仕組みは?

ネトラダインという名称は、サンスクリットで「ビジョン」を意味する「ネトラ」と、ギリシャ語で力の単位を意味する「ダイン」を組み合わせたものだ。アグラワル氏によると、純粋にビジョンを基にしたフルスタックシステムを構築したという。簡単な言葉にするとカメラだ。システムには2つのフォームファクターがある。D-210は小型から中型車両用に構築され、ドライバーと道路の両方を録画する内向きと外向きのカメラが特徴のデュアルダッシュカム。D-410は2サイドウィンドウビューを含めて360度撮影できる4つのHDカメラで、重量車に最適だ。

カメラは、急に割り込まれても正確に減速し前方の車と距離を空けられるドライバーから、メールを打つことに気を取られたドライバーまで何でも捉える。クラウドに接続したデバイスが車両に搭載され、デバイスのエッジでリアルタイムでコンピューティングを行う。ドライバーは「運転に集中していません」「減速してください」などのフィードバックや自動提案を受け取るのかもしれない。

「一番重要な点は、良い運転を追跡することです。それは当社がドライバーとの議論を変えたいと考えているからです」。アグラワル氏はいう。「ドライバーは罰せられることによく慣れており、ほとんどの場合、事が起きた後か顧客の苦情に基づきます。反対に、これは非常に積極的で前向きなのです」。

現在ドライバーへの報奨として、良い運転を続ける気になる、ちょっとしたドーパミン分泌を促す通知を行っている。ドライバーに授与されるドライバースターだ。これはポイント獲得を奨励し、仕事のための運転をゲーム化する試みで、ポイントはボーナスや他の報奨に換えられる。

「ドライバーはフリート企業の最大の資産です。これまでなら、フリート企業に最悪なドライバーが誰か尋ねたら、事故を起こし、顧客が文句を言ったドライバーを挙げたでしょう」。アグラワル氏はいう。「安全運転をするドライバーが誰か尋ねても、名前を言えない。しかし当社では事故を起こさなかったドライバーだけでなく、積極的に安全運転に取り組むドライバーも細かく特定しているため、フリート企業はそのようなドライバーに残留特別手当を設け、報奨金を与え、マネージャーやリーダー職に昇進さえることもできます」。

もちろん、ドライバーの行動にまつわるこのすべてのデータ収集にはもう1つ利点がある。アグラワル氏は彼の会社が1カ月分のデータでは7億ドル(約767億円)を集めたことについて、ドライバーのためのあらゆる潜在的なシナリオを特定するために分析している。そしてそれはすべてエッジで行われている。それにおける、またそれ自体の実験である。

「自動運転への投資は確かな可能性ですが、今の当社の関心事項ではありません」。アグラワル氏は述べる。

シリーズCラウンドはソフトバンク・ビジョン・ファンド2によりリードされた。既存の投資会社であるPoint72 VenturesとM12もラウンドに参加し、ネトラダインの資金調達総額を1億9700万ドル(約215億円)にまで増やした。アグラワル氏はTechCrunchに、年末までの目標収益を1億ドル(約109億円)とすると話した。

画像クレジット:Netradyne

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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