著名人と話せるアプリ「755」がCM効果で250万ダウンロードに――最大のライバルは「Ameba」

年末年始は普段よりテレビを見る機会が増えたのだけれども、やたら見かけるIT関連のテレビCMがあった。サイバーエージェントグループの7gogoが手掛けるトークアプリ「755(ナナゴーゴー)」だ。同社の発表によると、アプリの累計ダウンロード数がこの2週間で約200万件も増加。1月3日時点でiOS、Androidアプリの累計で250万ダウンロードを突破したという。CMにはAKB48とE-girlsを起用。2014年12月26日からAKB48バージョンを、2015年1月1日からE-girlsバージョンを全国で放映。20代を中心にユーザー数を増やした。

755がスタートしたのは2014年2月。サイバーエージェントと堀江貴文氏がファウンダーを務めるSNSが共同で立ち上げた。755という名称の由来は堀江氏の囚人番号だ。著名人をはじめとしたユーザーの「トーク(チャットルーム)」を閲覧したり、その内容に対して「やじうまコメント(コメント)」をしたりできるほか、気になった投稿をリトーク(リツイートのように投稿を自分のトーク上にシェアする)したりできる。このトークは著名人(オフィシャルユーザー)でも一般ユーザーでも作成可能だ。テレビCMでは「AKB48やE-girlsと話せる」とうたっているが、厳密にはトークを開設したユーザーが、気になったやじうまコメントを拾い、それに対して返事をして会話が成り立つという仕組みだ。

ちなみに少し前まで「芸能人・有名人の返信率 92%以上!」とアプリの紹介などでうたっていたが、これは755を利用する著名人の92%がやじうまコメントに返信を行っているという意味であり、決して92%のユーザーが自分宛の返信をもらえるわけではない。AKB48メンバーなどのやじうまコメントを見れば、コメントが多すぎてそりゃ92%にレスできないだろうなとも思うのだけど、利用していないユーザーに対して誤解を与えかねない。これについては7gogo代表取締役社長の森正樹氏も「誤解を招く表現になっていたと思い、アプリの説明文などからは削除した。App Srore上のiOSのスクリーンショットに関しても削除に向けて対応作業中(筆者注:App Storeはスクリーンショットの差し替えにも承認が必要なため時間がかかる)」と語っている。

森氏いわく、サービス開始から数カ月はチューニングの時期だったという。細かな機能もさることながら、もともとのコンセプトであった「複数人の著名人の会話に対してユーザーがやじうまコメントを入れ、それを著名人が拾う」というスタイルでは、コメントをどこまで拾うかが難しく、話が盛り上がらなかったそうだ。そこで著名人同士ではなく、著名人1人がつぶやき、それに対してユーザーがコメントし、さらに著名人がそれにレスをするという今のスタイルに落ち着いたのだそうだ。

755では6月以降に本格的に著名人のオフィシャルアカウントを拡大。現在は800人以上の著名人が参加している。ちなみに著名人に対して金銭の支払いはしていないとのことで、「自分のファンが一極集中していることもあってコミュニティが形成されやすく、モチベーションが高い」(森氏)のだそう。将来的にはメルマガのように、著名人に対する興味関心が高い人に対する課金なども検討しているそうだが、「とりあえず(マネタイズは)気にせず行けるところまで行ってみようと考えている」(森氏)。いわゆるファンクラブの置き換え、オンラインサロンのようなビジネスが展開されるのかもしれない。ちなみに今回のプロモーション費用についても聞いたのだが、「Amebaが渋谷の広告をジャックした(2012年に1カ月で30億円の広告を展開した)程ではないが、それなりに大きい額」(森氏)としか回答を得られなかった。

最大のライバルは「Ameba」

ところでこの発表と前後して、あるサイバーエージェントの幹部と話す機会があったのだけれども、その際に「755のライバルは何なのか」という質問をした。

例えばユナイテッド子会社のフォッグが12月にリリースしたアイドル応援アプリ「CHEERZ」。これはアイドルが自ら写真とコメントを投稿するというサービス。ユーザーは「いいね!」にあたる「CHEER」をするのだが、このCHEERの数がサービスリリースから1カ月たった現在、なんと1280万回を超えているのだ。ユーザーがCHEERできる回数は、ソーシャルゲームの体力のように一定時間で回復するようになっている。そして回復を待てない場合はポイントを購入する必要があるのだが、このCHEER数を見ているとそれ相応の課金がなされているようにも見える。ほかにもDeNAの「SHOWROOM」など、著名人やアイドルとユーザーがコミュニケーションをとれるサービスがある。だがその幹部は社外のサービス名を挙げることなく、「本当のライバルはAmebaかもしれない」と語った。サイバーエージェントグループはこれまでもグループ内で競合関係になるようなサービスを作ることもあったが、PC、ガラケー時代Amebaのように、755をスマホ時代の新しいプラットフォームに育てたいのだという。

森氏にも同じ質問をしてみたのだけれど、「Amebaを批判するわけではないが、ブログは書く、コメントする、くらいしかできない。755はもう少しスマホに特化した機能があるし、Amebaではできなかったようなコミュニケーションを軸にしたスペースを作れる。そこは狙っていきたい」とだけ語った。また7gogo取締役の水野信之助氏は、755はAmebaがあったからこそできたサービスだと語る。「タレント事務所とのネットワーク、コメント監視などAmebaのノウハウが生きている」(水野氏)

大々的なキャンペーンでユーザーを獲得した(といってもどれだけアクティブになるかはこれから気になるところ)755だが今後の展開はどうなるのか。両氏によると、今後は引き続き著名人のアカウントを拡大しつつ、一般ユーザー向けの機能を強化していくという。「サービスのフェーズがあると思っている。今はまずは著名人アカウントで遊び方を理解してもらおうとしている」(水野氏)「一般ユーザーの手でコンテンツが生成される場所にしたい。使い方も含めてユーザーが考えてくれれば」(森氏)。

7gogo取締役の水野信之助氏(左)と代表取締役社長の森正樹氏(右)


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TechCrunch Japan

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